この記事のポイント
- AI-OCRは高精度で非構造化データも処理可能な文字認識技術
- SaaSツール利用と独自開発それぞれのメリットを比較説明
- 富士通やBeiersdorf社などの具体的な導入事例を紹介
- 読み取り精度の限界やセキュリティ面での注意点を解説
- 精度、対応ファイル形式、コストなど、よくある質問に回答
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
テクノロジーの進化が日々業務効率を変革している今、特にドキュメント処理において革新的な役割を果たすAI-OCRサービスに注目が集まっています。
高い精度と学習能力で非構造化データを処理できるAI-OCRは、デジタルデータの変換から膨大な情報の分析までを効率化。企業はセキュリティ確保やコスト削減を図りつつ、高度なデータ活用を目指すことができます。
この記事では、そのAI-OCRの概要と、企業が直面する数々の課題を解決するその魅力について、導入事例を交えながら詳しく解説していきます。
AI-OCR導入のメリット、注意点、よくある質問にも答えていくので、導入を検討中の企業様や情報収集中の方はぜひご一読ください。
目次
AI OCRとは?
AI-OCR(AI Optical Character Recognition)とは、人工知能(AI)を利用して画像や手書き文字、印刷されたテキストをデジタルデータに変換する技術です。
従来のOCR技術と比較して、AI-OCRは以下の特徴を持っています。
AIOCRの特徴
特徴 | 説明 |
---|---|
高精度の文字認識 | 複雑なフォントや手書き文字も正確に読み取り可能 |
非構造化データの処理 | 複雑なレイアウトや曖昧な文字も認識可能 |
学習能力 | ディープラーニングや機械学習により、使用するほど精度が向上 |
用途に応じた特化 | 印字や手書き文字など、目的に合わせて選択可能 |
AI-OCRの導入により、企業は大量の文書を迅速かつ正確にデジタル化し、データ入力作業の効率を飛躍的に向上させることができます。
AI-OCR導入方法の選択手順
AIOCRの導入場面でまず選ぶ必要する際に決めるべきこととして、 SaaSなどのツールを選択するのか、自社用に開発するかを決める必要があります。そのために最も必要なことは「導入目的」を明確にすることです。
なぜAIOCRを入れるかを決め、要件に沿って自社に適した導入方法を決めていきます。下記に、選択のためのワークフローを記載しています。
以下の考慮事項と自社の要件を照らし合わせてみてください。
AI総合研究所は、AI導入の総合支援窓口です。ご気軽にご相談ください。
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認識精度
AI OCRサービスが提供する最も重要な要素は、認識精度です。異なるフォント、手書き文字、複雑なレイアウトの文書、スキャンの品質によらず、どれだけ正確に文字を読み取れるかが評価の基準となります。
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対応言語・文字種
AI OCRはグローバルな利用が想定されるため、どの言語や文字種に対応しているかが大きな評価基準となります。特定の言語や文字種に強いサービスもあれば、多言語対応に優れたものもあります
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処理速度とパフォーマンス
大量の文書や画像を一度に処理する際、AI OCRの処理速度が重要です。特にビジネス用途では、リアルタイムでの処理や高速なバッチ処理が求められることが多いです。
AI-OCRを独自開発をするメリット
SaaSではなく独自開発を選択する企業視点でのメリット
AI-OCRの独自開発は、企業に特化した柔軟性、セキュリティ、コスト効率を提供し、特に業務が複雑で高度な要件が求められる場合に強力な選択肢となります。
1. カスタマイズの柔軟性
AI-OCRを独自開発することで、企業の特定のドキュメント形式や業務プロセスに完全に適応したシステムを構築できます。SaaS型のOCRソリューションでは、標準機能が提供される一方、企業固有の書類形式や読み取り精度の調整が難しいことがあります。
独自開発では、独自のフォーマットや精度の要件に対応でき、企業に最適化されたOCRシステムを構築することで、業務の効率化を最大化できます。
2. セキュリティとデータ管理
AI-OCRでは大量の機密データを処理するため、セキュリティの観点が非常に重要です。
SaaSではデータを外部サーバーに依存するリスクがありますが、独自開発の場合、自社のセキュリティポリシーに基づいた環境を選択できます。
3. 長期的なコスト効率
SaaS型のAI-OCRは初期費用が少ない一方で、サブスクリプション料金が長期的に発生します。
独自開発では初期コストがかかりますが、一度システムが整備されるとランニングコストを抑えることができ、長期的なコスト効率が向上します。
特に大量の書類処理が必要な企業にとっては、独自開発によるコストコントロールが大きな利点となります。
4. 他システムとの統合の自由度
独自開発したAI-OCRでは、企業の既存システム(ERP、CRM、データベース等)と自由に統合することができ、データの連携や業務フローの効率化を実現します。
SaaSでは統合が制限されることがあり、独自開発なら業務全体にわたってシームレスな連携が可能です。
おすすめのAI OCRサービス
特定のニーズに応えるために設計された特化型のAI OCRサービスに特化。
会社名 | 商品名 | 順位 | サイトリンク | ポイント | 詳細情報 | ||||||||||
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初期費用 | ターゲット | 月額 | オプション価格 | お試し | 外部機器連携 | オプション価格詳細 | 追加オプション | 画像1 | 画像2 | 画像3 | |||||
GoogleOCR | 1 | 公式サイト | Cloud Vision API・Document AIからAIOCRエンジンにアクセス可能🙆♂️いずれを使用する場合も、API を介してそのままデプロイ・追加トレーニングすることもできる、事前トレーニング済みの最高水準の機械学習モデルにアクセス可能です。 画像には Cloud Vision を使用することをおすすめします。 | 無料 | Googleの世界トップクラスのGoogle Cloud AIによるOCRを使いたい方。画像やドキュメントからテキストやデータを抽出し、非構造化コンテンツをビジネスにすぐに使える構造化データに変換し、価値ある分析情報を引き出したい方。 | 従量課金 | 従量課金 | ||||||||
Microsoft | Azure Computer Vision | 2 | 公式サイト | 高精度な日本語OCRを提供し、2024年時点で人間と同等以上の精度を誇るAzure Computer Vision。使いやすさと柔軟性があり、AzureポータルやVision Studioで簡単に利用可能です。 | 無料 | Azureのサービスを利用している方。Azureサービスとの連携が容易で、生成AIと組み合わせて精度向上を図りたい方。 | 従量課金 | 従量課金 | |||||||
LINE WORKS株式会社 | LINE WORKS OCR | 3 | 公式サイト | 世界的な関するコンペ6分野において世界No.1を獲得しており、非常に高精度な文字認識が可能。事前設定が不要な特化型AI-OCRも提供されており、さまざまな書類に対応できます。 | 無料 | 特に開発基盤が社内にない方におすすめです。ブラウザ上で操作できるUI+APIをセットで提供しており、誰でもどこでもPC上で使用できるAIOCRサービスがあります。もちろんAPIのみの利用も可能です。 | 3,300~/月 | あり | |||||||
株式会社インフォディオ | スマートOCR | 4 | 公式サイト | 国税庁、JTB、みずほ銀行など、上場企業を含む多数の導入実績があり、人気の高いAIOCRです。クラウド型とオンプレミス型の両方に対応しており、企業のニーズに合わせて選択できます。 | 無料 | 特に紙からデジタルへの移行を検討している中小企業の経理部門や、紙の文書をデジタル化したい方。請求書、注文書、レシート、健康診断書などの紙文書を扱う部門の担当者にもおすすめ。 | 100,000〜/月 | あり | |||||||
日立システムズ | DX Suite | 5 | 公式サイト | 日立独自の技術と他社の認識技術を併用し、定型・非定型帳票に最適なAI-OCRエンジンを選択することで、高い文字認識精度を実現しています。特に大量の帳票処理や高度なセキュリティが求められる企業や自治体にとって、効果的なデジタル化ツールです。 | 無料 | 特にデータ入力作業の効率化や業務プロセスの改善を目指す企業や部門の方 | 30,000~/月 | あり |
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1位
Azure Computer Vision
高精度な日本語OCRを提供し、2024年時点で人間と同等以上の精度を誇るAzure Computer Vision。使いやすさと柔軟性があり、AzureポータルやVision Studioで簡単に利用可能です。
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2位
GoogleOCR
Cloud Vision API・Document AIからAIOCRエンジンにアクセス可能🙆♂️いずれを使用する場合も、API を介してそのままデプロイ・追加トレーニングすることもできる、事前トレーニング済みの最高水準の機械学習モデルにアクセス可能です。 画像には Cloud Vision を使用することをおすすめします。
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スマートOCR
国税庁、JTB、みずほ銀行など、上場企業を含む多数の導入実績があり、人気の高いAIOCRです。クラウド型とオンプレミス型の両方に対応しており、企業のニーズに合わせて選択できます。
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日立独自の技術と他社の認識技術を併用し、定型・非定型帳票に最適なAI-OCRエンジンを選択することで、高い文字認識精度を実現しています。特に大量の帳票処理や高度なセキュリティが求められる企業や自治体にとって、効果的なデジタル化ツールです。
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LINE WORKS OCR
世界的な関するコンペ6分野において世界No.1を獲得しており、非常に高精度な文字認識が可能。事前設定が不要な特化型AI-OCRも提供されており、さまざまな書類に対応できます。
- 初期費用
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- 特に開発基盤が社内にない方におすすめです。ブラウザ上で操作できるUI+APIをセットで提供しており、誰でもどこでもPC上で使用できるAIOCRサービスがあります。もちろんAPIのみの利用も可能です。
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AI-OCRとOCRの違い
AIOCRとOCRの違い
OCRとAI OCRは、どちらも画像内の文字を認識してテキストデータに変換する技術ですが、AIの活用の有無によって大きな違いがあります。
OCRは単純で規則的な文字認識に適していますが、カスタマイズや複雑なデータには弱いです。
AI OCRはAIを使って精度や柔軟性が高く、さまざまなフォントやレイアウトに対応できるため、より高度な文字認識が必要な場合に適しています。
AI画像認識とのちがい
AIOCRとの違い
AI画像認識とは画像から物体やシーンの意味を理解する、顔を識別する、または画像全体のコンテクスト(意味)を解析します。
これらは、画像に基づいた質問応答(Visual Question Answering)、自動キャプション生成などのタスクで使われます。
- AI OCRを使用する場合
画像内のテキスト(例: 看板、商品ラベル、書類の文字など)が質問に関連している場合、AIOCRを使ってその文字を認識し、回答に活用することがあります。
例:この看板には何と書いてありますか?
このメニューで一番高い商品は何ですか?。
- AI OCRを使用しない場合
文字ではなく、画像に含まれる物体やシーンの認識が重要な場合、AIOCRは使用されません。たとえば、動物や物体を識別したり、物体の色や位置に関する質問に答える場合、一般的な画像認識技術のみが使われます。
例:「この画像には何種類の動物がいますか?」
「この人は何色の服を着ていますか?」
AI OCRの導入事例
富士通、Azure導入で文書認識革新の画像
- 富士通株式会社はMicrosoft Azure Form Recognizerを導入し、クラウドスキャニングソリューションの性能と精度を向上させました。
このAI-OCR技術の導入により、文字認識率は99.9パーセントに達しています・社内でわずか数カ月という短期間で実装した点も注目です。
Beiserdorf社の画像
- ドイツのスキンケアメーカーであるバイヤスドルフ社は、Azure Cognitive Searchを活用して、AIによる知識探索システムを実現しました。これにより、900人以上の研究者が迅速に必要な情報を見つけられるようになり、業務効率が大幅に向上しました。
詳細はすべてこちらからご覧になることができます。
AI OCRの利用上の注意点
AI OCRは革新的な技術ですが、その導入と利用には慎重な考慮が必要です。
高度な機能を最大限に活用しつつ、潜在的なリスクを最小限に抑えるためには、以下の主要な注意点を十分に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
1. 読み取り精度の限界
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AI OCRは高度な精度を持っていますが、手書き文字や低解像度の画像、ノイズの多いドキュメントでは誤認識が発生する可能性があります。
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特に複雑なレイアウトや非標準的なフォントを使用した書類では、正確な結果が得られないことがあります。
2. セキュリティとプライバシー
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AI OCRを使用する際は、機密データや個人情報が含まれる書類を処理することが多いため、セキュリティやプライバシーに十分配慮する必要があります。
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クラウドベースのOCRサービスを使用する場合、データが外部サーバーに送信されるため、場合によってはオンプレミス環境での利用を検討をおすすめします。
3. コストとリソースの管理
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AI OCRは高精度で大量のデータ処理が可能ですが、その使用頻度に応じてコストが増大することがあります。
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特にクラウドサービスでは、処理するドキュメントの量や頻度に応じた課金体系が一般的です。利用開始前にコスト見積もりを行い、最適なプランを選択することが重要です。
これらの点を考慮することで、AI OCRを安全かつ効果的に活用することができます。
AI OCRに関するよくある質問
よくある質問
AI OCRの利用を検討する際によくある質問とその回答を5つご紹介します。
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AI OCRの精度はどの程度ですか?
AI OCRの精度は非常に高く、印刷されたテキストに対しては95%以上の正確さを持つことが多いです。ただし、手書き文字や不鮮明な画像、複雑なレイアウトの場合、精度が低下することがあります。使用するAI OCRエンジンのトレーニングデータやアルゴリズムにも依存するため、特定のニーズに合ったツールを選ぶことが重要です。
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AI OCRはどのような形式のファイルに対応していますか?
AI OCRは一般的にJPEG、PNG、BMP、TIFF、PDFなど、さまざまな画像フォーマットに対応しています。特にPDFファイルは、スキャンされた書類や画像を含むものでも処理可能です。サービスやツールによっては、特殊なファイル形式やマルチページPDFへの対応に違いがあるため、対応フォーマットの確認が必要です。
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AI OCRをオンプレミスで利用できますか?
はい、AI OCRはクラウドベースのサービスだけでなく、オンプレミスでも利用可能です。例えば、AzureやGoogleなどの主要クラウドプロバイダーでは、オンプレミス向けにDockerコンテナを提供しており、自社環境でセキュリティを確保しながらOCRを実行できます。これにより、機密情報や法的要件が厳しい場合でも安全に運用できます。
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AI OCRの導入にどのくらいのコストがかかりますか?
AI OCRのコストは使用するツールやサービス、処理するドキュメントの量によって異なります。多くのクラウドサービスでは従量課金制が採用されており、一定の無料枠を超えると処理量に応じて課金されます。例えば、数千ページ単位での処理が必要な場合、無料枠以上の費用が発生する可能性があります。導入前に見積もりを行い、長期的なコストを把握することが重要です。
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AI OCRで処理したデータのセキュリティはどうなっていますか?
回答:
多くのAI OCRサービスでは、データが暗号化されて処理され、セキュリティは強固に保たれています。例えば、クラウドベースのサービスでは、データの転送や保存時に暗号化を行い、コンプライアンス(GDPRやHIPAAなど)に準拠することが一般的です。セキュリティ要件が高い場合は、オンプレミス環境での運用や、クラウドプロバイダーのセキュリティ対策を確認することが推奨されます。
まとめ
本記事では、AI-OCRサービスの概要、特徴、導入方法について詳しく解説しました。AI-OCRは高精度で非構造化データも処理可能な文字認識技術であり、企業の業務効率化に大きく貢献します。
SaaSツールの利用と独自開発それぞれのメリットを比較し、導入時の選択肢を提示しました。
また、富士通やBeiersdorf社などの具体的な導入事例を紹介し、AI-OCRの実践的な活用方法を示しました。一方で、読み取り精度の限界やセキュリティ面での注意点など、導入時に考慮すべき点も解説しています。
AI-OCRは今後さらに発展し、ビジネスプロセスの自動化や効率化に大きな役割を果たすと予想されます。適切な導入と運用により、企業は生産性向上とコスト削減を実現し、競争力を高めることができるでしょう。