この記事のポイント
- ChatGPTを活用したアプリ開発の手順を丁寧に解説
- 適切な環境構築のポイントを紹介
- リアルタイム性やAPI使用制限などの注意点についても解説
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
ChatGPTを活用したアプリ開発に興味をお持ちの開発者の方々必見です。本記事では、設計からテストまでの各開発フェーズにおけるChatGPTの活用方法を丁寧に解説します。
また、ChatGPTを取り入れることで可能となる様々なアプリの種類や、開発時の利点と注意点についても詳しく紹介。
APIの使用制限など、ChatGPT特有の留意点にも触れつつ、効率的かつ効果的なアプリ開発を実現するための適切な環境構築のポイントを解説します。
AI技術を駆使した革新的なアプリ開発に挑戦する方々に、必要な知識とインスピレーションを提供するガイドラインとなっています。ぜひ最後までお読みください。
最新モデル、OpenAI o1(o1-preview)について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください⬇️
OpenAI o1(ChatGPT o1)とは?その特徴や使い方、料金体系を徹底解説!
目次
ChatGPTでアプリ開発する方法
アプリ開発は複雑なプロセスであり、計画から開発、テスト、デプロイメントまで、多くの段階を経ます。
これは、ChatGPTを使用したアプリ開発も例外ではありません。
以下では、ChatGPTを取り入れたアプリ開発の具体的なステップについて、プロンプトの例を交えながら説明します。
1.設計
アプリ開発の最初のフェーズは設計です。ここでは、ChatGPTがUIやUXの設計にどのように影響を与え、またサポートを提供するかを決定します。
まずは、ユーザーからの入力をどのように処理して反映させるか、アプリケーションのフローがどうあるべきかを考え、ChatGPTを用いたインタラクションの設計を検討します。
【設計段階のプロンプト例】
ユーザーインタフェース設計のアイデア提案
スマートフォン向けの健康管理アプリのUI/UX設計において、ユーザーが日々の運動や食事記録を簡単に入力し、進捗を追跡できるインタフェースのアイデアを提供してください。
ユーザーインタラクションフローの提案
チャットボットを介してユーザーのメンタルヘルスをサポートするアプリのユーザーフローを設計してください。ユーザーが感じている気持ちを入力し、それに基づいたアドバイスを受け取るプロセスを説明してください。
「ユーザーインタフェース設計のアイデア提案」のプロンプトを実際に使用してみると、以下のような応答が返ってきました。
設計段階の応答その1
設計段階の応答その2
2.環境構築
ChatGPTを統合するためには、OpenAIから提供されるAPIにアクセスするためのAPIキーを取得し、適切なバックエンド言語とフレームワークをセットアップします。
APIキーの取得方法については、以下の記事を参考にしてください。
-
OpenAI
➡️ChatGPT(OpenAI)のAPIキー発行・取得手順を解説! -
Azure OpenAI Service
➡️Azure OpenAI APIキーの取得方法と利用手順をわかりやすく解説!
加えて、ローカル開発サーバーまたはクラウドベースの開発環境を構築し、必要なライブラリやツールをインストールします。
【環境構築に使えるプロンプトの例】
APIキーの取得と設定方法の説明
OpenAIのAPIキーを取得し、Pythonを使用してAPIにリクエストを送信する基本的なコードサンプルを提供してください。
開発環境セットアップの指示
Reactをフロントエンドに、Node.jsをバックエンドに使用した開発環境の構築方法を詳細に説明してください。ChatGPTのAPIとの統合に必要なパッケージやライブラリも含めてください。
「APIキーの取得と設定方法の説明」のプロンプトを実際に使用して、最終的に生成されたサンプルコードは以下の通りです。
まずは、必要なライブラリをインストールします。
pip install openai
その後は下記のコードを使用します。
import openai
# 環境変数からAPIキーを設定する場合
# APIキーを直接コードに記述する場合は、openai.api_key = 'your_api_key_here'としてください。
openai.api_key = os.getenv("OPENAI_API_KEY")
response = openai.Completion.create(
engine="text-davinci-003", # 使用するエンジンを指定
prompt="これはテストです。", # モデルに与えるプロンプト
temperature=0.7, # 生成するテキストの創造性を制御するパラメータ
max_tokens=100, # 生成するトークンの最大数
top_p=1,
frequency_penalty=0,
presence_penalty=0
)
print(response.choices[0].text.strip())
3.アプリの実装
実装フェーズでは、設計された要件をコードに変換し、ChatGPTを組み込みます。
ここでは、APIリクエストを行い、受け取ったレスポンスをアプリケーション内で適切に処理して表示するロジックを構築します。
また、ChatGPTのレスポンスを改善するためのプログラミングのベストプラクティスや、「ユーザーからのデータ入力の正確性を確認するためのバリデーション」など、信頼できるアプリを作成する上での重要な要素にも配慮が必要です。
【実装段階で使えるプロンプトの例】
APIリクエストのコーディング
ユーザーからの質問を受け取り、それに対するChatGPTのレスポンスをフェッチし、結果を表示するJavaScriptの関数を書いてください。
応答最適化のためのプロンプト設計
ユーザーが提出したレビューに基づいて製品の改善点を提案するために、ChatGPTに送るプロンプトの例を作成してください。
「APIリクエストのコーディング」のプロンプトを実際に使用して、最終的に生成されたJavaScriptの関数は以下の通りです。
async function fetchChatGPTResponse(question) {
const openaiApiKey = 'YOUR_OPENAI_API_KEY_HERE'; // ここにAPIキーを設定
const url = 'https://api.openai.com/v1/completions';
const data = {
model: 'text-davinci-003', // 使用するモデルを指定
prompt: question, // ユーザーからの質問
temperature: 0.7,
max_tokens: 150,
top_p: 1.0,
frequency_penalty: 0.0,
presence_penalty: 0.0,
};
const response = await fetch(url, {
method: 'POST',
headers: {
'Content-Type': 'application/json',
'Authorization': `Bearer ${openaiApiKey}`
},
body: JSON.stringify(data)
});
if (!response.ok) {
throw new Error(`HTTP error! status: ${response.status}`);
}
const jsonResponse = await response.json();
console.log(jsonResponse.choices[0].text.trim());
}
// 使い方の例
fetchChatGPTResponse("これはテストです。").catch(console.error);
4.作成したアプリのテスト
実装後は、アプリケーションの実行とテストを行います。
ChatGPTを統合したアプリケーションをデバッグモードで実行し、ユーザーの様々な入力に対してChatGPTがどのように反応するかを確認します。
意図した通りに動作しない場合は、コードの修正を行いながら、複数のシナリオにおけるテストを実施していきます。品質保証として、単体テストや統合テストも重要です。
【テスト段階で使えるプロンプトの例】
デバッグプロセス
特定のユーザー入力に対して意図しない応答が返ってきた場合、問題を特定して修正するためのステップを説明してください。
テストシナリオの例示
チャット機能を含むアプリで、様々なユーザー入力(質問、感情の表現、日常の記録など)に対してChatGPTが適切に応答するかを確認するためのテストケースを提案してください。
「テストシナリオの例示」のプロンプトを実際に使用してみると、以下のような応答が返ってきました。
実行段階の応答その1
実行段階の応答その2
作成したアプリのコードレビューにおいても、いくつかのポイントを押さえる事で効果的に行うことが可能です。
ChatGPTを活用したデバッグ作業・コードレビューのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
➡️ChatGPTはコードレビューに最適!メリットや活用方法を徹底解説
ChatGPTで開発できるアプリの種類
アプリケーション開発にChatGPTを取り入れることで、多種多様なシナリオで利用価値を高めることができます。
以下では、ChatGPTを使用して開発可能なアプリの例をいくつか紹介します。
Webアプリ
Webアプリケーションの分野では、ChatGPTをカスタマーサポート用のチャットボットとして利用することが考えられます。
例えば、ECサイトや情報サイトなどで、「ユーザーからの質問にリアルタイムで回答するチャットボット」を開発できます。
ユーザーが商品やサービスについて質問すると、ChatGPTが適切な回答を提示します。また、注文手続きや返品プロセスなどの案内も行えるため、カスタマーサポートの効率化と品質向上が期待できます。
さらに、オンライン学習プラットフォームにおいて、ChatGPTを学習アシスタントとして活用すること有効でしょう。
学生が授業内容について質問すると、ChatGPTが関連する情報を提供したり、演習問題の解き方を説明したりすることで、学習効果を高められます。
【関連記事】
➡️ChatGPTを活用したチャットボットの作り方をわかりやすく解説!
スマホアプリ
スマートフォンアプリの領域では、ChatGPTを言語学習アプリやパーソナルアシスタントアプリに組み込むことが可能です。
言語学習アプリでは、「ChatGPTを会話練習の相手役」として利用することで、ユーザーが実践的なコミュニケーション能力を身につけられます。
例えば、ユーザーが外国語で話しかけると、ChatGPTがその言語で適切に返答します。発音や文法のアドバイスも提供できるため、効果的な学習が期待できるでしょう。
【関連記事】
➡️ChatGPTを英会話・英語学習に活用する方法!使い方やプロンプト例を紹介
また、パーソナルアシスタントアプリにChatGPTを統合することで、ユーザーの日常生活をサポートするアプリを開発できます。
ユーザーが予定を伝えると、ChatGPTがカレンダーに登録し、リマインダーを設定します。また、話しかけただけで天気や交通情報を教えてくれるなど、便利な機能を提供できます。
【関連記事】
➡️ChatGPTの音声入力・音声会話機能が便利!設定方法や使い方を解説
PCツール
デスクトップアプリケーションの分野でも、ChatGPTの活用により新たな可能性が広がります。
例えば、ChatGPTをベースにしたライティング支援ツールを開発することで、ユーザーの文章作成をサポートできます。
ユーザーがテーマを入力すると、ChatGPTがアウトラインを提案したり、文章のサンプルを生成したりします。また、完成した文章を添削し、改善点を指摘することもできるため、ライティングスキルの向上につながるでしょう。
また、プログラミング支援ツールにChatGPTを組み込むことで、コードの自動生成や解説機能を実装できます。開発者がコーディング中に質問すると、ChatGPTが適切なコードサンプルや説明を提示します。
【関連記事】
➡️ChatGPTをプログラミングに活用するコツを解説!対応言語や使用例も
上記は一例ですが、ChatGPTはアプリ開発のサポートとしての活用のみならず、開発するアプリケーションにおける強力なAI基盤としても利用できます
ChatGPTを活用してアプリ開発をする際の注意点
ChatGPTを活用したアプリ開発は多くの可能性を秘めていますが、技術的な制約や限界も存在します。
実用に当たっては、これらの限界に対処するために特定の対応が必要になる場合があります。
技術的な制約と限界
ChatGPTを活用したアプリ開発には、いくつかの技術的な制約と限界があります。
- リアルタイム性の制約
ChatGPTは強力な言語生成能力を持っていますが、リアルタイムでの応答には限界があります。特に、大量のユーザーリクエストが同時に発生する場合、レスポンスタイムが長くなる可能性があります。
この問題に対処するには、応答のキャッシュや、ユーザーリクエストを効果的に管理するためのキューイングシステムの実装が必要です。
- コンテキスト理解の限界
ChatGPTは強力な自然言語理解能力を持っているものの、ユーザーの意図やコンテキストを常に完璧に理解するわけではありません。
誤解や不適切な応答が生じる可能性があるため、ユーザーインターフェースにおいてフォールバック機能を用意するなど、エラー処理を適切に行う必要があります。
また、ユーザーの入力内容をモニタリングし、ChatGPTの応答の品質を継続的に評価・改善していくことも重要です。
APIの使用制限と最適化
OpenAIのAPIには使用回数や呼び出し頻度に制限があるため、高トラフィックのアプリケーションでは問題になることがあります。
APIの制限を考慮し、以下の点に注意が必要です。
- 効率的なAPIリクエストの設計
- レートリミットの適切な処理
- 利用状況のモニタリング
- 不要なリクエストを最小限に抑えることによるAPIの使用コストの最適化
セキュリティとプライバシーの確保
ChatGPTを介して処理されるデータには、機密性の高い情報が含まれる場合があります。
ユーザーのプライバシーを保護し、データの機密性を維持するために、適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。
- データの暗号化
- 安全な通信プロトコルの使用
- ユーザー認証とアクセス制御の実装
- OpenAIのAI利用規約の理解と準拠
特に、社内向けチャットボットなどの「高度なセキュリティ要件が求められるアプリの開発」には、Azure OpenAI Servicesを初めとするAzureサービスがおすすめです。
将来的にはAI技術の進展に伴い、これらの制約が低減されることが期待されます。しかしながら、現時点ではこれらの限界を認識し、適切な工夫を凝らしてアプリ開発を行う必要があります。
ChatGPTを活用したアプリ開発の事例
ChatGPTを活用したアプリ開発の実際の事例として、世田谷区の取り組みが注目されます。
世田谷区は、生成AI活用プロジェクトの第一弾としてチャットボットのサービスを稼働し始めました。このチャットボットは、Microsoft Azureのクラウド環境のみで、非エンジニア職の区職員がローコードツールを使って開発されました。
区職員はMicrosoft Teams上でChatGPTと対話できるようになり、問い合わせ対応や資料作成などの作業を効率化できました。
その結果、通常業務では1日平均約34分、アイデアや企画の素案作成については1回の処理につき平均約77分の削減効果があったとのことです。
この事例は、ChatGPTを活用することで業務効率化や生産性向上が実現できることを示しています。また、非エンジニア職員でもローコードツールを使ってChatGPTを活用したアプリ開発ができることを証明しました。
今後、他の自治体や企業でもChatGPTを活用した業務改善や新たなサービス開発が進むことが期待されます。
世田谷区が開発したチャットボットの概念図 (参考:PR TIMES)
上記で紹介した事例以外にも、医療、金融、クリエイティブ産業など、様々な分野でChatGPTの活用が広がっています。
詳しくは以下の記事で50の活用事例を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
➡️ChatGPTの活用事例50選!企業や自治体、教育現場での例を徹底解説!
まとめ
この記事では、ChatGPTを使用したアプリ開発について解説しました。ChatGPTを活用することで、アプリケーションはユーザーとより深く対話し、よりパーソナライズされた経験を提供することができます。
設計から実装、テストまでの各フェーズにおけるChatGPTの活用方法や、開発できるアプリの種類、利点と注意点についても詳しく紹介しました。
ChatGPTを取り入れることで、ユーザーとのインタラクションの向上、開発効率の改善、コスト削減などが期待できる一方、リアルタイム性の制約やセキュリティの懸念など、注意すべき点もあります。
世田谷区の事例は、ChatGPTがもたらす業務効率化や生産性向上の可能性を示すものであり、今後の発展が期待されます。未来のアプリ開発では、ChatGPTのようなAI技術がさらに進化し、新たな価値を創造することが予想されるでしょう。
この記事が、読者の皆様がChatGPTを活用したアプリ開発に興味を持ち、次の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。