この記事のポイント
- リアルタイムの音声・ビデオ通話、チャット、SMS、メール機能をアプリケーションに統合可能
- Microsoft Teamsとのシームレスな連携で、外部ユーザーとのコミュニケーションを効率化
- Azure Portalでの簡単な設定と、各言語用SDKによる柔軟な実装をサポート
- グローバルなインフラを活用した高いスケーラビリティと99.9%のSLAによる信頼性を提供
- 顧客通知、アカウント管理、トランザクション通知、カスタマーサポートなど幅広い活用シーンに対応
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
アプリケーションに高度な通信機能を簡単に統合したいとお考えではありませんか?
本記事では、Azure Communication Servicesの機能、設定方法、メリットを詳しく解説します。
リアルタイムの音声・ビデオ通話からSMS、メールまで、多様な通信機能の実装方法や、Microsoft Teamsとの連携による業務効率化、さらに具体的な活用シーンもご紹介。
Azure環境でのコミュニケーション最適化に役立つ情報が満載です。
目次
Azure Communication Servicesとは
Azure Communication Servicesの主な機能
Azure Communication Servicesの利用手順
Azure Communication Servicesの料金体系
Azure Communication Servicesの利用シーン
Azure Communication Servicesのメリット
Azure Communication Servicesとは
Azure Communication Services(ACS)は、Microsoft Azureが提供する包括的な通信プラットフォームです。このサービスを使うことで、開発者は音声・ビデオ通話やチャットなどのリアルタイム通信機能をアプリに簡単に組み込むことができます。
Azure Communication Servicesイメージ図
様々な通信機能をアプリケーションに統合できる便利なAzure Communication Servicesについて以下、解説していきます。
Azure Communication Servicesの主な機能
では、最初にAzure Communication Services(ACS)が提供する4つの通信機能をご説明します。
リアルタイムの音声およびビデオ通話
- リアルタイムで高品質な音声・ビデオ通話を提供
- 1対1の通話・グループ通話に対応
- 画面共有機能が利用可能
チャット
テキストベースのコミュニケーションであるチャットも利用できます。
- 1対1またはグループでのチャット
- リアルタイムでの既読確認機能
SMSメッセージング
- 送信・受信機能を備えたシンプルなメッセージング
- バルク送信をサポートして、多数のユーザーに一斉にメッセージを送信可能
- メッセージの配信レポートを通じて送信状況を確認できます
電子メール送受信
電子メールの機能も利用可能です。
詳細はこちらの記事も参考にしてみてください。
【関連記事】
➡️Azure Communication Servicesでメールを送信する方法をわかりやすく解説
Microsoft Teamsとの相互運用性
ACSはMicrosoft Teamsともシームレスに連携しており、大変便利です。具体的内容は次のとおりです。
- 外部ユーザーも、アプリを通じてTeamsミーティングに参加可能
- Teams通話の発信・受信
- Teamsチャット機能のACSと連携
Azure Communication Servicesの利用手順
さて、ここからはAzure Communication Servicesの利用手順をご紹介していきます。
以下のような流れになります。
1.リソース作成:
通信機能(音声通話、SMS、チャットなど)を使うためのリソースを作成します。
このリソースが、通信機能を提供する基盤となります。
2.SDKのインストール:
使いたい言語(例: JavaScript, C#)に対応したSDKをインストールします。
こうして、プログラムからAzure Communication Servicesを使って通話やチャットなどが可能になります。
3.通信機能の実装:
APIやSDKを使って、音声通話、ビデオ通話、チャット、SMS、メールなどの通信機能を自社のアプリケーションに統合します。
4.テスト・運用:
最後に、実際に動作をテストして、本番環境で運用します。
本記事では、主に上記1について一つ一つの手順を解説していきます。
リソースの作成
- Azureポータルにアクセスし、Azureアカウントでサインインします。
* Azureポータル画面*
※前提準備として、Azureアカウントの作成を行ってください。
【関連記事】
➡️Azure Portalとは?操作方法やメリットをわかりやすく解説!
2. 「リソースの作成」をクリック
リソースの作成ボタン
3. 「検索ボックス」に"communication servise"と入力し検索、「作成」をクリック
検索画面
4. ①「基本情報」タブで基本情報を入力し、②「レビューと作成」をクリック
基本情報入力画面
5. 「レビューと作成」タブで「作成」をクリック
作成ボタン
6. デプロイ完了後に「リソースに移動」をクリック
リソースに移動ボタン
7. 「ここをクリックしてキーを管理する」をクリック
リソース画面
8. エンドポイントおよびキーの情報があるので、こちらをAzure Communication Servicesを使用するアプリに使用してください。
情報画面
その後の手順について
その後の手順(上記2~4)を行い各通信機能を使用するには、こちらをご覧ください。
それぞれのサービスの手順詳細については以下になります。
Azure Communication Servicesの料金体系
では次に、Azure Communication Servicesの料金体系をご説明します。
ACSの料金体系は、利用するサービスによって異なります。
-
音声・ビデオ通話: 参加者数、通話時間、使用するネットワーク(PSTNまたはIP)によって料金が発生。
-
メッセージング: メッセージの送信数やデータ量によって料金が決定。
-
その他のサービス: 電話番号リース、通話録音、ジョブルーターなどに追加料金が発生。
Microsoft Teamsとの連携においては、ACSを使ってTeamsユーザーと音声・ビデオ通話やチャットを行う際、Teamsのユーザー側には追加の費用が発生しません。
ACSの価格詳細については、こちらをご覧ください。
Azure Communication Servicesの利用シーン
では、Azure Communication Servicesはどのような場面で用いられるのでしょうか。以下具体的な活用シーンをあげてみました。
顧客通知(新商品情報、セール告知など)
ACSを使って、顧客に新商品やセール情報をタイムリーに通知する以下のようなシステムを構築できます。
SMS通知: 急ぎの情報(セールやキャンペーン)をリアルタイムで顧客に伝えることができます。
例:
「24時間限定セール!全商品20%オフ」
メール配信: 商品カタログや詳細なキャンペーン情報をメールで送ることができます。
例:
新商品カタログやキャンペーンの詳細情報を送付
アカウント管理(ユーザー登録、パスワードリセットなど)
以下のように利用することで、安全なアカウント管理を実現できます。
SMS認証: 二要素認証やパスワードリセット時にSMSでコードを送信し、ユーザーの本人確認を行うことができます。
例:
「認証コード:123456 このコードは5分間有効です」
メール確認: アカウント登録時に確認メールを送信して、ユーザーのメールアドレスを検証できます。
例:
「アカウント登録を完了するには、以下のリンクをクリックしてください」
トランザクション通知(注文確認、発送通知など)
ビジネスプロセスの各ステップで、顧客にリアルタイムの通知を送ることが可能です。
SMS通知: 顧客に即時の通知を送る際に役立ちます。
例:
「ご注文の商品が発送されました。追跡番号:1234567890」
メール通知: より詳細な情報を顧客に提供するために使用することができます。
例:
注文内容、請求書、追跡情報など
カスタマーサポート(問い合わせ対応、フォローアップなど)
リアルタイムのコミュニケーション機能を活用して、カスタマーサポートを強化できます。
ビデオ通話: 顧客に直接製品の使い方を説明したり、技術的な問題を解決できます。
例:
製品の使い方をビデオで説明
チャット: 顧客からの簡単な問い合わせに迅速に対応できます。
例:
簡単な問い合わせにテキストチャットで対応
こうしたシナリオを通じて、ACSはさまざまなビジネスプロセスを支援し、顧客との効果的なコミュニケーションを実現してくれるでしょう。
Azure Communication Servicesのメリット
ここで、Azure Communication Servicesを使うことで得られるメリットを、開発の容易さ、基盤の信頼性、他サービスとの連携の観点からご説明します。
アプリケーションへのリアルタイム通信機能の容易な統合
開発者は以下のような点により、高度なリアルタイム通信機能を手軽に実装することができます。
-
SDK(ソフトウェア開発キット)の提供:
iOS、Android、Web向けに使えるソフトウェア開発キットが提供されているため、こうしたプラットフォームに簡単に通信機能を統合できます。 -
API:
RESTful APIを使って、開発者はアプリケーションとAzure Communication Servicesを柔軟に統合することができます。 -
クロスプラットフォーム対応:
異なるデバイス(スマートフォンやPCなど)やOSでも、一貫した操作体験が提供され、どの環境でも同じように機能します。
スケーラビリティと信頼性の高いコミュニケーション基盤
ACSは、Azureのグローバルなインフラストラクチャを活用しているので、以下のような高いスケーラビリティと信頼性を実現してくれます。
- グローバルな展開:
世界中のデータセンターを利用して通信機能を提供。 - 自動スケーリング:
同時接続数が増加した場合、必要に応じてリソースを自動的に拡張。 - 高可用性:
99.9%のサービスレベル契約(SLA)で信頼性の高い通信を維持。
Microsoft Teamsとのシームレスな連携
Microsoft Teams については、ACSを活用して次のような機能を利用することもできます。
- 外部参加者をTeams会議に招待:
ACSユーザーがTeams会議に参加可能。 - TeamsとACS間の通信:
TeamsユーザーとACSユーザー間のリアルタイム通信が可能。 - Teamsチャットとの統合:
ACS経由でTeamsのチャット機能を利用し、業務を効率化。
他のAzureサービス(Cognitive Servicesなど)との組み合わせによる付加価値の創出
例えば以下のAzureサービスと簡単に統合することで、より高度な機能を利用することもできます。
- AIサービス: 音声認識や感情分析などのAI機能を統合可能。
- Azure Functions: サーバーレスアーキテクチャによる柔軟な処理を提供。
- Azure Monitor: 通信品質やパフォーマンスの監視をサポート。
例えば、AIを活用したカスタマーサポートではこんなことも可能です。
• ACSで顧客通話を確立:
Azure Communication Services (ACS) を使用。
• 音声をテキストに変換:
AIサービスの Speech to Text サービスを使用。
• テキストの分析を行い、感情やキーワードを解析:
Text Analytics (AIサービス) を使用して、感情分析やキーワード抽出を行う。
• 分析結果に基づいて、オペレーターに応対のアドバイスを提供:
分析結果に基づいてカスタムアプリケーションを構築し、オペレーターにリアルタイムでフィードバックを提供。
こうした機能を活用すれば、ビジネスが効率化され、顧客満足度の向上も実現できるでしょう。
それぞれのサービスについては、こちらの【関連記事】もお読みください。
【関連記事】➡️
- Azure AI services(旧Azure Cognitive Services)とは?その概要や料金を徹底解説
- Azure Functionsとは?その機能や使い方、料金体系を徹底解説!
- Azure Monitorとは?導入目的やメリット、料金体系を解説
まとめ
本記事では、Azure Communication Services(ACS)の概要、主な機能、料金体系、利用シーン、およびそのメリットについて解説しました。ACSは、リアルタイムの音声・ビデオ通話、チャット、SMS、電子メールなどの包括的な通信機能を提供し、これらをアプリケーションに簡単に統合できるプラットフォームです。
顧客サポートやトランザクション通知、マーケティングキャンペーンなど、さまざまなシーンでの活用が可能で他のAzureサービスとも簡単に連携できるため、より高度なAI機能を組み込んだソリューションを実現できます。
ぜひ、ACSを活用して、ユーザーエクスペリエンスを向上させ、効率的なビジネスプロセス構築に役立ててください。
この記事が、皆様のお役に立てたら幸いです。