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Azure Queue Storageとは?その概要やメリット、使い方を解説!

この記事のポイント

  • Azure Queue Storageの基本概念と、非同期通信によるアプリケーション効率化の仕組みを解説
  • Azureポータルを使用したQueue Storageの具体的な設定手順をスクリーンショット付きで説明
  • ストレージタイプ別の料金体系と、操作・データ転送のコスト詳細を提示
  • Webアプリケーション、バッチ処理など、具体的な利用シナリオと実装方法を紹介
  • Azure Service Bus Queueとの機能比較や、適切なサービス選択の基準を提供

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

クラウド上でメッセージを一時保存し、アプリケーション間で情報を非同期にやり取りすることを可能にするサービス「Azure Queue Storage」について、その基本的な機能や仕組み、利用シナリオなどをわかりやすくご説明します。
Microsoft Azureが提供するこのサービスは、非同期通信を手軽に実現でき、アプリケーションのスケーラビリティやパフォーマンスの向上に貢献します。

本記事では、Azure Queue Storageがどのようにしてアプリケーション開発者を支援し、どんなメリットがあるのか、また料金体系についても詳細に解説します。Azure Service Bus Queueとの違いを含め、Azure Queue Storageの魅力にせまる内容となっています。

Azureの基本知識や料金体系、利用方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
➡️Microsoft Azureとは?できることや各種サービスを徹底解説

Azure Queue Storage (キューストレージ)とは

Azure Queue Storage

Azure Queue Storage(キューストレージ)は、クラウド上でメッセージを一時保存し、アプリケーション間で情報を非同期にやり取りするためのサービス です。Microsoft Azureが提供しており、開発者がアプリケーションの部品同士をスムーズに連携させるためのツールとして利用されます。

メッセージングキューの形式でアプリケーション間の非同期通信を実現するために使用されます。


Azure Queue Storageの概念

Azure Queue Storageを理解するためには、まずキューの基礎知識から始める必要があります。
キューとは、メッセージを一時的に格納する待ち行列で、FIFO(First-In, First-Out)の原則に従って運用されます。これは最初に送信されたメッセージが最初に受信されることを意味します。

Azure Queue Storageは、このキュー構造を使用して、アプリケーションのさまざまな部分が非同期に情報をやり取りするのをサポートします。
具体的には、Webサーバーが大量のユーザーリクエストをすばやく受け取り、後で処理する ためにバックエンドのワーカーに渡します。

これにより顧客は待たされることなくアプリケーションを利用することができます。

直接データベースに書き込む処理の問題点

なぜ直接データベースに書き込まないのか、そのポイントを説明します。

  • 処理の遅延: ユーザーからのリクエストが多く、それぞれのリクエストがデータベースへの書き込みを伴う場合、データベースへのアクセスが集中し、処理が遅延する可能性があります。これはユーザーにとって待ち時間が長くなるというストレスに繋がります。

  • スケーラビリティの問題: リクエストの量が増えた場合に、すべてのリクエストを同時に処理するのが難しくなります。これにより、システムのスケーラビリティが制限されます。

##Azure Queueを利用するメリット

非同期処理

ユーザーからのアクセスをキューに追加するだけで良く、データベースへの書き込みは別のプロセスが非同期に行います。これにより、ユーザーは処理が完了するのを待たずに、次の操作を続けることができます。

処理の効率化

キューを使用することで、処理を効率的に分散できます。バックエンドのサービスがキューからメッセージを取得し、データベースへの書き込みなどの処理を行います。これにより、リクエストごとにデータベースにアクセスするよりも、システム全体の負荷を軽減できます。

スケーラビリティの向上

キューを使用することで、処理能力に応じてリソースを柔軟に調整することができます。リクエストの量が増加しても、キューにメッセージを追加するだけで対応でき、後続の処理はリソースが許す範囲で行うことができます。

ユーザー体験の向上

ユーザーは処理が完了するまで待たされることなく、快適にアプリケーションを利用できます。メール送信の例のように、ユーザーはバックグラウンドで行われる処理について気にする必要がなく、利用体験が向上します。

Azure Queueを利用することで、非同期処理の実装が容易になり、ユーザー体験の向上、システムの効率化、スケーラビリティの問題の解決など、多くのメリットが得られます。

これにより、アプリケーションは高いトラフィックを処理できるようになり、ユーザーからのアクセスに迅速に対応できるようになります。


Azure Queue Storageの使い方

  1. Azureポータルにログイン
    Azure ポータル にアクセスし、アカウントでログインします。

【Azureポータルの操作方法はこちら】
➡️Azure Portalとは?操作方法やメリットをわかりやすく解説!


2. ストレージアカウントの作成
ダッシュボードの「リソースの作成」を選択し、「ストレージ」カテゴリから「ストレージアカウント」を選びます。必要な情報(サブスクリプション、リソースグループ、ストレージアカウント名、ロケーションなど)を入力し、「確認および作成」を選択してアカウントを作成します。

ストレージアカウントの作成
ストレージアカウントの作成

  1. キューサービスの利用
    ストレージアカウントが作成されたら、そのアカウントの概要ページから「キューサービス」セクションを見つけ、「キュー」を選択します。

キューサービスの利用ページ
キューサービスの利用ページ

  1. キューの作成
    「+ キュー」ボタンをクリックし、キューに名前を付けます。名前は小文字のみで、3〜63文字の範囲内である必要があります。
    キューの作成
    キューの作成

  2. 作成の完了
    名前を入力したら、「OK」をクリックしてキューを作成完了です。画像のようにメッセージを追加することができるようになります。
    キューよりメッセージの追加
    キューよりメッセージの追加


Azure Queue Storageの料金体系

Azure Queue Storageは、高性能ながらコストに効果的なソリューションを提供します。
利用したリソースとストレージ容量のみに基づいて料金が発生するため、無駄なコストを抑えながらメッセージングを利用することができます。

また、キューを通じてワーカー処理が非同期で行われるため、リアルタイムの処理が必要ないタスクはバックグラウンドで効率的に処理することが可能です。

これにより、エンドユーザーに対する応答性を維持しながら、バックエンドシステムのパフォーマンスを最大化することが可能となります。

ストレージ容量と料金

ストレージタイプ LRS GRS RA-GRS
ストレージ (GB/月) ¥6.7692/GB ¥9.0256/GB ¥11.2819/GB
  • LRS: ローカル冗長ストレージ
  • GRS: 地理冗長ストレージ
  • RA-GRS: 読み取りアクセス地理冗長ストレージ

操作とデータ転送料金

操作タイプ LRS GRS RA-GRS
クラス 1 のキュー操作 (10,000 あたり) ¥0.0542 ¥0.0542 ¥0.0542
クラス 2 のキュー操作 (10,000 あたり) ¥0.0542 ¥0.0542 ¥0.0542
Geo レプリケーション データ転送 (GB あたり) 該当なし 無料 無料
  • クラス1のキュー操作
    CreateQueue, ListQueues, PutMessage, SetQueueMetadata, UpdateMessage, ClearMessages, DeleteMessage, DeleteQueue, GetMessageWrite, GetMessagesWriteなど。

  • クラス2のキュー操作
    GetMessage, GetMessages, GetQueueMetadata, GetQueueServiceProperties, GetQueueAcl, PeekMessage, PeekMessages, GetMessageRead, GetMessagesReadなど。


最新の情報はMicrosoft公式よりご確認ください。

【関連記事】
➡️Azureの料金体系を解説!サービスごとの料金例や確認方法も紹介


Azure Queue Storageの利用シナリオ

Azure Queue Storageは、幅広い利用シナリオにおいて価値を提供します。その柔軟性により、さまざまな種類のアプリケーションと業務プロセスが非同期メッセージを利用することができます。

ここでは、Azure Queue Storageが特に重宝される主な利用シナリオについて見ていきます。

Webアプリケーションとバックグラウンド処理

多くのWebアプリケーションは、リアルタイムでのユーザーの要求に応答する必要がありますが、すべての処理を即座に行うことは非効率的です。

Azure Queue Storageを使用すると、「ユーザーからのリクエストを一時的にキューに保存し、後でバックグラウンドで処理すること」ができます。

例えば、eコマースサイトでは、注文処理、在庫管理、配送ステータスの更新などの処理を非同期に行うことが可能です。
ユーザーは応答をすぐに受け取れるため、サイトの応答性が保たれ、バックエンドシステムはトラフィックのピーク時でも過負荷にならず、効率的に処理を行うことができます。

また、大規模なデータ処理を必要とするアプリケーションでは、バッチ処理を実行するためにキューが広く使用されています。
例えば、ビッグデータの分析や機械学習モデルのトレーニングで、大量のデータセットを小さなタスクに分割し、それらを個別にキューに詰めて非同期に処理します。

これにより、システムリソースを効果的に活用し、処理能力を最大限に引き出すことができます。

メッセージの内容
アプリケーション間で交換されるメッセージの内容は多岐にわたります。例えば以下のようなものが含まれます:

命令: あるアプリケーションが別のアプリケーションに特定のアクションを実行するよう指示する。
データ: データベースの更新情報、取引記録、ユーザー情報など、アプリケーション間で共有する必要があるデータ。
状態の更新: システムの状態やプロセスの状態が変更されたことを他のアプリケーションに通知する。
イベント通知: 特定のイベントが発生したことをアプリケーション間で通知する。


Azure Queue Storageは、これらのシナリオでの利用に留まらず、シンプルなメッセージングニーズから複雑なバックエンドバッチ処理まで、多種多様なアプリケーションケースに適用されています。

それぞれのビジネスユースケースに応じて、適切なスケールとパフォーマンスニーズに合わせてAzure Queue Storageを設定し、利用することが推奨されます。


Azure Queue StorageとAzure Service Bus Queueとの違い

Azure Service Bus Queueは、Azure Queue Storageとよく比較されます。両者はメッセージングキューの形式を採用していますが、提供する機能と利用されるケースには大きな違いがあります。

Service Bus Queueは、高度なメッセージング機能を必要とするエンタープライズクラスのアプリケーション向けに設計されています。

例えば、次のような機能が含まれます。

  • トピックとサブスクリプション
    メッセージを複数の受信者にファンアウトするために使用されます。
  • デッドレターキュー
    処理に失敗したメッセージを保持して後で分析できるようにします。
  • セッションとメッセージのコルレーション
    関連するメッセージのグループを連携させて処理するために使用されます。
  • トランザクション処理
    メッセージング操作を原子的に扱い、操作の完全性を保証します。

一方で、Azure Queue Storageは、シンプルさとコスト効率を優先した設計となっているため、Service Bus Queueの提供する高度な機能の多くを備えていません。しかし、それにより、小規模なアプリケーションや単純なタスクのデカップリングが必要な場合に最適な選択肢となります。

また、簡単なセットアップとREST APIによるアクセスは、開発者にとってのアクセシビリティを促進しています。

このように、Azure Queue StorageとService Bus Queueは、それぞれ異なるニーズに応えるために設計されているため、プロジェクトの具体的な要件を鑑みて適切なサービスを選択することが重要です。


まとめ

本記事では、Microsoft Azureが提供するクラウド上のメッセージングサービス「Azure Queue Storage」について、その基本的な機能や仕組み、利用シナリオ、料金体系などを詳しく解説しました。

Azure Queue Storageは、アプリケーション間で情報を非同期にやり取りすることを可能にし、バックグラウンド処理の効率化やユーザー体験の向上に貢献します。Webアプリケーションやバッチ処理など、様々な利用シナリオで活用されています。

料金体系は使用したリソースとストレージ容量に基づいており、コストを抑えながら利用できる特徴があります。また、Azure Service Bus Queueと比較すると、よりシンプルでコスト効率の高い非同期メッセージングソリューションとされています。

Azure Queue Storageは、スケーラビリティ、可用性、コスト効率、そしてシンプルなAPIインターフェイスの利点を提供することで、非同期メッセージングのニーズに幅広く対応しています。アプリケーション開発者にとって、必要不可欠なサービスの一つと言えるでしょう。

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Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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