Azure Storage Explorerとは？その特徴や設定方法、利用シナリオを解説

クラウドストレージの利用が拡大する中、効率的なデータ管理ツールの重要性が高まっています。
Azure Storage Explorerは、この需要に応えるMicrosoftの強力なソリューションです。

本記事では、Azure Storage Explorerの基本概念から高度な利用方法まで、包括的に解説します。BLOBストレージ、ファイル共有、キュー、テーブルなど、Azure Storageの主要サービスに対応する機能を詳しく紹介するとともに、直感的なGUIによる操作性や多様な認証方法、ロールベースのアクセス制御（RBAC）によるセキュリティ強化の仕組みを説明します。

また、Azure Storageリソースの一元管理、オンプレミスとクラウド間のデータ移行、開発・テスト環境でのストレージ操作など、具体的な利用シナリオについても触れ、より効率的なクラウドストレージ管理の実現方法を提案します。

さらに、導入手順も詳しく解説し、読者がすぐにAzure Storage Explorerを活用できるよう支援します。

Azure Storage Explorerとは

Azure Storage Explorerは、Microsoft Azureが提供するツールで、クラウド上のストレージ（データの保存場所）を簡単に管理できるアプリです。 Windows、macOS、Linuxで使え、ローカル環境からAzure Storageのデータを効率的に操作できます。

このツールを使用するメリットは、開発者やIT管理者がAzureのストレージを簡単に使えるようになることです。画面を見ながら操作できるので、プログラミングやコマンドの知識がなくても、複雑な作業ができます。また、ローカルとクラウドをスムーズにつなげて、ストレージ管理を楽にしてくれます。

Azure Storage Explorerアイコン

Azureのストレージを管理できる便利なツールであるAzure Storage Explorerについて以下ご紹介します。

Azure Storage Explorerの主な機能

まず、Azure Storage Explorerの主要な機能についてご説明します。

Azure Storageリソースの作成、表示、編集、削除

Azureのストレージアカウントの作成や管理が簡単にできます。

たとえば、

• ストレージアカウントの作成・削除: Azure上でデータを保存するための場所（ストレージアカウント）を簡単に作ったり消したりできます。
• コンテナやフォルダ、ファイルの管理: データを整理するためのフォルダやファイルを作成、削除、移動など、簡単に操作できます。
• アクセスキーの管理: ストレージにアクセスするための鍵を管理できます。
• SASトークンの生成: 他の人に一時的にアクセス権を与えるための署名（SAS）を簡単に作成できます。
• プロパティやメトリクスの確認: ストレージの情報やパフォーマンス（システムやサービスがどれだけ速く、効率的に動作するか）を確認することができます。

Azureストレージアカウントについて知りたい方はこちらもご覧ください。

【関連記事】
➡️Azureストレージアカウントとは？料金や作成方法をわかりやすく解説！

BLOB、ファイル共有、キュー、テーブルの管理

Azure Storage Explorerは、Azure Storageの主要なサービスである以下の4つに対応しています。

1. BLOBストレージ
   コンテナの作成、ファイルのアップロード・ダウンロード、バージョン管理が可能。

2. ファイル共有
   ディレクトリの作成やファイル共有の管理が簡単に行えます。

3. キューストレージ
   メッセージの追加、参照、削除が可能です。

4. テーブルストレージ
   エンティティ（レコード）の追加、編集、クエリの実行などができます。

Azure Storageについてはこちらも参考にしてください。

【関連記事】
➡️Azure Storageとは？使い方や料金、Blobとの違いについて解説

ローカルエミュレーターや他のクラウドストレージとの連携

Azure Storage Explorerを使えば、オフライン環境や異なるクラウドストレージでもストレージ管理ができます。

1. ローカル開発・テスト

   • Azuriteを使って、Azure Storageの機能をオフラインでエミュレート。
   • インターネット接続がなくても、Azure Storageのような環境でアプリケーションをテストできます。

2. 他のAzureサービスとの連携

   • Azure Cosmos DBやAzure Data Lake Storageなど、他のAzureデータサービスとも連携可能です。複雑なデータ管理を簡単に行うことができます。

3. AWS S3など他のクラウドとの連携

   • 一部の機能では、AWS S3などの他のクラウドストレージプロバイダーとも連携し、複数のクラウドをまたいだストレージ管理ができます。

Azure Storage Explorerの特徴

ここで、Azure Storage Explorerの特徴についてご紹介します。

直感的なGUIによる操作性

Azure Storage Explorerの最大の特徴は、その使いやすいグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)です。このGUIは、エクスプローラー形式で、パソコンのファイル操作と同じ感覚でクラウドストレージを管理できるように設計されています。

• 直感的な操作:

  • ドラッグ＆ドロップで簡単にファイルのアップロードやダウンロードが可能。
  • 右クリックメニューから様々な操作ができ、ユーザーにとって非常にわかりやすいものとなっています。

• 効率的なファイル管理:

  • 検索機能やフィルタリング機能を使って、大量のファイルやフォルダの中から目的のものを素早く見つけられます。

アカウントキーやSASを使った接続

Azure Storage Explorerには、いくつかの認証方法があり、状況に応じて使い分けることができます。それぞれの認証方法について以下にまとめました。

1. Microsoft Entra 認証（旧Azure Active Directory認証）

   • Azureアカウントでサインインして、特定のユーザーやグループにアクセス権を付与したり取り消したりできます。また、多要素認証（MFA）を使ってセキュリティを強化できます。
   • セキュリティが高く、簡単に設定できるので、できるだけこの方法を使うのがおすすめです。

2. 共有アクセス署名（SAS）

   • 一時的に、特定の操作やデータにアクセスできるリンクを作成して、他の人に共有できます。期限や操作を制限できるので安全です。
   • 短期間だけ誰かにデータを共有したいときに便利です。セキュリティも保たれます。

3. ストレージアカウントキー

   • ストレージアカウント全体へのアクセス権を持つキーです。すべてにアクセスできるため、使うときは注意が必要です。
   • 通常は使わない方が良く、Azure RBACやSASの方が安全です。

4. BLOBコンテナーの匿名アクセス

   • 誰でもデータを見られるようにする設定です。ただし、機密データを含む場合は使わない方が良いです。
   • 公開データの管理に便利ですが、機密情報には注意しましょう。

参考: Microsoft

ロールベースのアクセス制御（RBAC）による権限管理

Azure Storage Explorerは、Azureのロールベースのアクセス制御（RBAC）と連携しており、ユーザーごとに細かい権限を設定できます。誰がどのデータにアクセスできるかを簡単にコントロールできるのが特徴です。

例えば、

開発者には特定のデータだけを読み書きできる権限を与え、
管理者には全てのデータにアクセスできるフル権限を与える

ことで、
役割に応じた権限設定、セキュリティ強化、効率的なチーム作業が可能となります。

Azure RBACについてはこの記事もおすすめです。

【関連記事】
➡️Azure RBACとは？設定手順やカスタムロールをわかりやすく解説！

Azure Storage Explorerの利用シナリオ

では、Azure Storage Explorerは実際にどのような場面で活用されるのでしょうか。具体的な利用場面について以下ご紹介します。

Azure Storageリソースの一元管理

Azure Storage Explorerを使うと、複数のストレージアカウントやサブスクリプションにまたがるリソースを、一つの画面でまとめて管理できます。異なる環境やリージョンのストレージを効率的に操作するのに非常に便利です。

たとえば、

１：開発環境、テスト環境、本番環境の管理

開発チームが、開発用のストレージアカウントと本番用のストレージアカウントを分けて運用している場合。

開発チームのメンバーはAzure Storage Explorerで両方のアカウントを同時に開き、開発中のデータをテストしつつ、本番データへの影響を確認することができます。

２：異なるリージョン（地域）やサブスクリプションの管理

ある企業がアメリカ、ヨーロッパ、アジアにデータセンターを持っており、
各リージョンでAzureのストレージアカウントを管理している。

Azure Storage Explorerを使えば、全てのリージョンのデータを一つの画面で確認し、データの移動や管理が簡単に行えます。

オンプレミスとクラウド間のデータ移行

Azure Storage Explorerを使うと、オンプレミス（自社のサーバーなど）とAzureのクラウドストレージ間でデータを簡単に移行できます。
大きな特徴は、ドラッグ＆ドロップや高速データ転送を使って、たくさんのファイルやフォルダを手軽にアップロード・ダウンロードできることです。また、増分コピーという機能を使って、変更があったファイルだけを効率よく同期することもできます。

たとえば、

１：大量のファイルのアップロード

あなたの会社が大量のデータを自社サーバーから
Azureのクラウドに移行したいとします。

Azure Storage Explorerを使えば、これらのファイルやフォルダを単純にドラッグ＆ドロップするだけで、クラウドにアップロードできます。

２：高速なデータ転送

大量のビデオファイルをAzureにアップロードしたい場合

Azure Storage Explorerは、**AzCopy**という高速データ転送ツールとも連携しています。AzCopyを使えば通常よりもずっと速く転送が完了します。

３：増分コピー機能での効率的な同期

毎日バックアップを取っているファイルがある場合。

増分コピー機能を使うと、すでにクラウドにアップロードされているファイルのうち、変更があった部分だけを更新できます。そのため、前日から変更があった部分だけをクラウドにアップロードすれば、データの同期が早く、無駄がありません。

開発・テスト環境でのストレージ操作

Azure Storage Explorerは、開発者にとって非常に便利なツールです。特に、アプリケーションの開発やテストに役立ちます。
たとえば、

• オフラインでのテスト:
  Azure Storage Explorerは、Azuriteエミュレーターと連携することで、インターネットに接続していなくても、Azureのストレージ機能をローカルでテストできます。

• テストデータの作成・デバッグ:
  テスト用のデータを簡単に作成したり、ストレージ操作をデバッグすることができます。

• パフォーマンステスト:
  アプリケーションが大量のデータをどのくらいの速度で処理できるかをテストできます。

• 安全なデータ移行:
  本番環境のデータを開発環境にコピーする際、Azure Storage Explorerを使えば、データを匿名化したり、必要な部分だけをサンプリングして移行できます。

Azure Storage Explorerの導入方法

さて、ここからはAzure Storage Explorerの導入方法についてご説明します。

前提条件の確認

まずはインストール前に、対応するOSを確認しましょう。以下は、2024年9月時点での対応バージョンです。

1. Windows

   • 対応バージョン:
     • Windows 11
     • Windows 10
   • その他の要件:
     • 64ビットアプリケーションをサポートする必要があります（Storage Explorer 1.30.0以降）。
     • .NET 8 ランタイムがインストールされている必要があります（Storage Explorer 1.34.0以降）。

2. macOS

   • 対応バージョン:
     • macOS 10.15 Catalina 以降

3. Linux (Ubuntu)

   • インストール方法:
     • Snap StoreでStorage Explorerを入手可能。新しいバージョンが公開されると自動で更新されます。

詳細は、こちらもご確認ください。

公式サイトからのダウンロードとインストール

以下の手順で、Azure Storage Explorerのダウンロードとインストールを行います。

1. 公式サイトにアクセス
   Azure Storage Explorerの公式ダウンロードページにアクセスします。リンクはこちら

   
   ダウンロードページ

2. インストーラーのダウンロード
   「今すぐダウンロード」をクリックします。使用しているオペレーティングシステム（Windows、macOS、Linuxなど）に対応したバージョンを選択し、インストーラーをダウンロードします。
   ここでは、Windowsでダウンロードします。

   
   OSの選択画面

3. インストーラーの実行
   ダウンロードしたインストーラーを実行します。画面の指示に従ってインストールを進めます。

   
   インストーラー画面

4. インストールの完了
   インストールが完了すると、Azure Storage Explorerが自動的に起動します。

   
   完了画面

   インストールが完了すると、Azure Storage Explorerが自動的に起動します。

Azureアカウントとの連携設定

1. Azure Storage Explorerを起動
   インストールが完了し、Azure Storage Explorerが起動したら、初期画面が表示されます。ここから、Azureストレージのリソースにアクセスしたり、設定を行ったりすることができます。

初期画面

• 画面の各セクション:

  ①. サイドバー: ツールの主要な機能にアクセスするためのショートカットが表示されます。

  • アカウントの管理（人のアイコン）
  • 設定（歯車のアイコン）
    など

  ②. ナビゲーションペイン:
  Azure Storage Explorerを操作する上での「目次」として機能し、ここから必要なリソースにアクセスしたり、新しい接続を追加したりすることができます。（クイックアクセス、エミュレーターとアタッチ状態、ストレージアカウント）

  ③. メイン画面

  ④. 右側のリソースセクション:
  Azure Storage Explorerの利用に関するドキュメントやマニュアル、トラブルシューティングガイドにアクセスできます。

2. Azureアカウントでサインイン
   ①画面左側にある「アカウントの管理」アイコン（人のアイコン）をクリックします。②「Azureにサインイン」を選択します。

サインイン画面

3. Microsoftアカウントでサインイン
   Microsoftアカウントを選びサインインします。

Microsoftアカウント画面

4. サブスクリプションの選択
   サインインすると、そのアカウントに紐付けられたAzureサブスクリプション（契約）が表示されます。
   アクセスしたいサブスクリプションを選択して、**「Apply(適用)」**をクリックします。
   
   画像：microsoft

「適用」ボタンの代わりに、エクスプローラーを開くというボタンが表示されていることがあります。この場合は、「エクスプローラーを開く」ボタンをクリックして、サブスクリプションにアクセスできるようにします。

エクスプローラーを開くボタン

5. ストレージリソースにアクセス
   サブスクリプションが選択されると、Azure Storage Explorerの左側のナビゲーションペインに、リソースが自動的に表示されます。

ナビゲーションペイン画面

これで、Azureに保存されているデータに対して、アップロード、ダウンロード、削除などの操作が可能になります。

参考：Microsoft

まとめ

本記事では、Azure Storage Explorerの概要と主要な機能、特徴、利用シナリオ、導入方法についてお伝えしました。

Azure Storage Explorerは、Azure Storageリソースを効率的に管理するための強力なツールです。Azure Storageを利用するすべての開発者やIT管理者にとって、Azure Storage Explorerは生産性を大幅に向上させる不可欠なツールと言えるでしょう。

クラウドストレージの管理を効率化し、Azure環境での開発やデータ管理を加速させる強力な味方として、ぜひ活用を検討してみてください。