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Azure Virtual Machines(VM)とは?料金体系やシリーズ毎の特徴を解説

この記事のポイント

  • Azure VMは多様なOSやアプリケーションを実行可能な仮想マシンを提供
  • 11種類のVMシリーズから用途に応じて最適なリソースを選択可能
  • 従量課金制で、使用した分のみの料金が発生し、コスト効率が向上
  • Azure DevOpsとの統合により、開発からデプロイまでのプロセスを自動化
  • 高度なセキュリティ機能とコンプライアンス認定により、安全なクラウド環境を実現

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

クラウドコンピューティングの急速な進化に伴い、企業は物理的なインフラストラクチャの制約から解放され、スケーラビリティ、セキュリティ、コスト効率の向上を求めるようになりました。Microsoft AzureのVirtual Machines(VM)は、このような課題に対して柔軟で強力なソリューションを提供します。

本記事では、Azure VMがもたらす計算リソースのスケーラビリティ、セキュリティの強化、従量課金制によるコスト効率の良さについて詳しく説明します。また、VMの種類や料金体系、セキュリティ面での特徴にも触れ、実際の利用シナリオや導入事例を通じてAzure Virtual Machinesの持つメリットを明らかにします。

また、企業がクラウドへ移行する際の意思決定に役立つ情報を提供し、Azure VMがビジネスの成長と革新をどのように支援できるかを探ります。ぜひ最後までお読みください。

Azureの基本知識や料金体系、利用方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
➡️Microsoft Azureとは?できることや各種サービスを徹底解説

Azure Virtual Machinesとは

Azure Virtual Machines (VM) は、LinuxやWindowsなど、様々なオペレーティングシステムを実行するための仮想マシンを数秒で作成できるサービス です。

このサービスを利用することで、SQL Server、Oracle、SAPからオープンソースソフトウェア、ハイパフォーマンスのコンピューティングまで、幅広いアプリケーションを実行できます。

Azure Virtual Machines
Azure Virtual Machinesページ

仮想マシンとは

仮想マシンは、ノートPC、スマートフォン、サーバーなどの他の物理的なコンピューターが、仮想コンピューターになっているものを指します。
CPU、メモリ、ファイルを保存するためのディスクが備わっていて、必要に応じてインターネットに接続することもできます。

ハードウェアとは物理的で目に見えるものですが、VM は多くの場合、コードとしてのみ存在する、物理的なサーバー内の仮想コンピューターまたはソフトウェアによるコンピューターであると考えられています。

仮想マシン

主な仮想マシンの用途

  1. アプリを構築してクラウドにデプロイする。
  2. ベータ リリースなど、新しいオペレーティング システム (OS) を試す。
  3. 新しい環境を起動することで、開発者がよりシンプルかつ迅速に開発とテストのシナリオを実行できるようにする。
  4. 既存の OS をバックアップする。
  5. ウイルスに感染したデータにアクセスしたり、古い OS をインストールして古いアプリケーションを実行したりする。
  6. 本来の対象ではない OS 上でソフトウェアやアプリを実行する。
ハイブリットクラウド(物理サーバーとの組み合わせ)について

ハイブリッドクラウドとは、企業が自社のIT環境を構築する際に、オンプレミス(自社で物理サーバーを管理)、プライベートクラウド、パブリッククラウドを組み合わせて利用する方法を指します。

ハイブリッドクラウド環境では、仮想マシン(VM)が重要な役割を果たします。VMを活用することで、企業は以下のようなメリットを得ることができます。

  • 柔軟性の向上
    VMを使用することで、アプリケーションやデータを異なるクラウド環境間で簡単に移動できます。これにより、ビジネスニーズに応じて最適な環境を選択し、リソースを柔軟に配分できます。

  • スケーラビリティの確保
    パブリッククラウド上のVMを利用することで、必要に応じて計算リソースを素早く拡張または縮小できます。これにより、トラフィックの変動や突発的な需要に対応しやすくなります。

  • コスト効率の改善
    VMを活用することで、オンプレミスの物理サーバーを購入・維持するコストを削減できます。また、パブリッククラウドの従量課金制を利用することで、使用した分だけの料金を支払うことができ、無駄なコストを抑えられます。

【ハイブリッドクラウド環境におけるよくあるVMの運用例】

  • 開発とテスト
    新しいアプリケーションの開発とテスト環境をパブリッククラウド上のVMで構築し、実運用環境をプライベートクラウドやオンプレミスで運用することで、開発の柔軟性とセキュリティを両立させます。

  • 災害復旧
    オンプレミス環境のデータとアプリケーションのバックアップをプライベートクラウドやパブリッククラウドのVMに保持することで、災害時の迅速な復旧を実現します。

  • データ分析とAI
    ビッグデータ分析やAIモデルのトレーニングには大量の計算リソースが必要です。これらの処理をパブリッククラウドのVMで実行することで、必要に応じてリソースを拡張し、高度な計算処理を効率的に行うことができます。


Azureが提供する仮想マシン(VM)の種類

Azureでは、11種類の仮想マシンが用意されています。サポートされている最大ページ BLOB サイズは8TB(8,191 GiB)です

データディスクまたはオペレーティングシステム ディスクとして VM にアタッチされている場合の最大ページ BLOB サイズは、4TiB (4,095 GiB)です。

それぞれの特徴と料金について解説していきます。

シリーズ 特徴 開始価格 ワークロード例
A シリーズ 開発とテストに適したエントリーレベル ¥1,756.97/月 開発/テスト用サーバー、小規模データベース
Bs シリーズ 経済的なバースト対応 ¥571.02/月 開発/テスト用サーバー、低トラフィックWebサーバー
D シリーズ 汎用コンピューティング ¥6,259.19/月 エンタープライズアプリケーション、データベース
E シリーズ メモリ内アプリケーション向け ¥8,784.83/月 SAP HANA、大規模データベース
F シリーズ コンピューティングに最適化 ¥5,380.71/月 バッチ処理、分析、ゲーム
G シリーズ メモリとストレージに最適化 ¥48,206.71/月 大規模SQLデータベース、SAP
H シリーズ ハイパフォーマンスコンピューティング ¥87,408.96/月 気象シミュレーション、財務分析
Ls シリーズ ストレージに最適化 ¥68,521.60/月 NoSQLデータベース、データウェアハウス
M シリーズ メモリ最適化 ¥168,668.55/月 SAP HANA、大規模メモリ内ワークロード
Mv2 シリーズ メモリ最適化された最大のVM ¥2,449,866.70/月 SAP HANA、超並列コンピューティング
N シリーズ GPUが有効なVM ¥98,829.23/月 ディープラーニング、グラフィックレンダリング

各シリーズの特徴

  • A シリーズ
    開発やテストに最適なエントリーレベルのVMです。経済的で、Azureの使用を始めるにあたって最も低コストなオプションを提供します。2024年8月31日には一部のVMが廃止予定です。

  • Bs シリーズ
    経済的でバースト対応のVMです。低から中程度のCPU使用率で運用しつつ、必要に応じて高いCPU使用率をサポートできます。開発、テスト、小規模なデータベースなどに適しています。

  • D シリーズ
    汎用コンピューティングに適したVMで、ほとんどの運用ワークロードの要件を満たします。vCPU、メモリ、一時ストレージのバランスが取れた構成を提供します。

  • E シリーズ
    メモリ集中型のエンタープライズアプリケーションや大規模なリレーショナルデータベースサーバー、メモリ内分析ワークロードなどに最適化されています。

  • F シリーズ
    コンピューティング集中型のワークロード向けに最適化されたVMです。CPU対メモリ比が高く、バッチ処理、Webサーバー、分析、ゲームなどに適しています。

  • G シリーズ
    非常に高いコンピューティングパフォーマンス、メモリ、ローカルSSDストレージを提供することで、負荷の高いアプリケーションに適しています。

  • H シリーズ
    ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)アプリケーション向けに最適化されています。気象シミュレーションや財務分析など、高度な計算処理を必要とするワークロードに適しています。

  • Ls シリーズ
    ストレージ最適化VMで、高いI/Oパフォーマンスを必要とするアプリケーションに適しています。NoSQLデータベースやデータウェアハウスアプリケーションなどに最適です。

  • M シリーズ
    非常に大規模なメモリ内ワークロード向けにメモリを最適化したVMです。SAP HANAなどの高負荷メモリ内アプリケーションに適しています。

  • Mv2 シリーズ
    Mシリーズの中で最も大きなメモリ容量を提供するVMで、非常に大規模なメモリ内データベースをサポートします。

  • N シリーズ
    GPUを搭載したVMで、ディープラーニング、グラフィックレンダリング、ビデオ編集など、GPUを活用するワークロードに適しています。


これらのシリーズを適切に選択することで、ワークロードの性質に応じたリソースを選択しましょう。

Azure Spot Virtual Machines

Azure Spot Virtual Machinesと他のAzure Virtual Machinesの主な違いは、コスト構造と利用可能性、使用シナリオにあります。

ここでのポイントは、Spot VMが未使用のAzureコンピューティング容量 を活用することにより、大幅に割引された価格で提供される点です。

Azure Spot Virtual Machines
zure Spot Virtual Machines

SpotVMの特徴は以下の通りです。

  • コスト効率
    Spot VMは、未使用のAzureコンピューティングリソースを利用してVMを実行するため、通常のVMに比べて大幅にコストが削減されます。
    割引率は最大で通常価格の90%までです。

  • 柔軟性と可変性
    Spot VMの価格は需要と供給に基づいて変動します。Azureは、使用可能なコンピューティング容量に基づいて価格を設定し、これが最大価格を超える場合、または容量が必要になった場合、VMは予告なく停止(削除)されます。

  • 使用シナリオ
    Spot VMは、中断が許容されるワークロードに適しています。
    これにはバッチ処理、開発およびテスト環境、大規模な計算が必要な科学的研究、AIトレーニングなどが含まれます。

Azure Virtual Machineの料金計算

Azure VM インスタンスは分単位で課金されます。 インスタンスが実行状態になってから課金がスタートし、最低 1 分が課金されます。その後、1 分未満の利用分は切り捨てられます。
例えば、インスタンスを 10 分 59 秒利用した場合、10 分のみ課金されます。

Azureの料金計算ツールで、簡単に見積もりを算出できます。

︎【関連記事】
➡️Azureの料金計算ツールの利用方法!基本機能や円表示の手順を解説

仮想マシンの料金ツールによる見積もり
仮想マシンの料金ツールによる見積もり


Azure Virtual Machineの使い方

Azure仮想マシン(VM)を利用するためのステップは、以下の手順に従います。

これにより、クラウド上で仮想マシンを簡単にセットアップし、使用開始することができます。

ステップ1: Azureサブスクリプションの準備

Azureにアクセスするためには、Microsoft Azureサブスクリプションが必要です。既にサブスクリプションを持っていない場合は、Azureの公式ウェブサイトでサインアップしてください。

︎【関連記事】
➡️Azureの無料アカウントとは?作成方法やできることを徹底解説!

ステップ2: Azureポータルにログイン

  • Azureポータルにアクセスし、Microsoftアカウントでログインします。

Azureポータルで仮想マシンを探す画面
Azureポータルで仮想マシンを探す画面

︎【関連記事】
➡️Azure Portalとは?操作方法やメリットをわかりやすく解説!

ステップ3: 仮想マシンの作成

  1. Azureポータルのダッシュボードで、「仮想マシン」を検索し、選択します。

  2. 「+ 作成」ボタンをクリックし、「仮想マシン」を選択します。
    仮想マシン作成画面
    仮想マシン作成画面

  3. 基本的な設定を入力します。これには、仮想マシンの名前、リージョン(データセンターの地理的位置)、使用するイメージ(OS)、サイズ(CPUとメモリのスペック)などが含まれます。

  4. 管理タブでは、管理者アカウントとパスワードを設定し、必要に応じて他のオプション(例えば、SSH公開鍵)を構成します。

  5. ネットワーキング、ディスク、および監視に関する設定を確認し、必要に応じてカスタマイズします。

  6. 「確認および作成」をクリックし、入力した設定を確認します。

  7. すべてが正しいことを確認したら、「作成」をクリックして、仮想マシンのデプロイを開始します。

ステップ4: 仮想マシンへの接続

VMが作成されたら、Azureポータルから仮想マシンにアクセスし、「接続」オプションを使用してVMに接続します。Windows VMの場合はRDP(リモートデスクトッププロトコル)、Linux VMの場合はSSH(セキュアシェル)を使用します。

ステップ5: 仮想マシンの利用開始

接続後、仮想マシン上で必要なアプリケーションのインストールや設定を行い、使用を開始します。

ステップ6: リソースの管理と監視

Azureポータルの監視ツールを利用して、仮想マシンのパフォーマンスとリソース消費を監視します。必要に応じて、VMのサイズを調整してリソースを最適化します。

リソースの管理画面
リソースの管理画面

これらのステップに従うことで、Azure上で仮想マシンを簡単に設定し、ビジネスやプロジェクトのニーズに合わせて利用を開始することができます。


Azure DevOpsとの統合について

Azure DevOpsと開発者ツールをAzure Virtual Machines(VM)と統合して利用することで、開発からデプロイメントまでのプロセスを自動化し、効率化することができます。

Azure Virtual Machines(VM)が開発プロセス、特に自動デプロイに必要な理由は、以下のポイントに集約されます:

1. 環境の一貫性と再現性

  • 一貫性: VMを使用することで、開発、テスト、本番環境を完全に一致させることができます。これにより、環境間での挙動の違いによるバグのリスクを減らすことができます。
  • 再現性: VMイメージを使用して、必要な時にいつでも同じ環境を素早くセットアップできます。これは、新しい開発者がプロジェクトに参加したときや、新しいテスト環境を迅速に構築する必要がある場合に特に有用です。

2. 柔軟性とカスタマイズ性

  • VMは、様々なOSやソフトウェアのバージョン、CPUやメモリの構成など、開発者のニーズに合わせて高い柔軟性とカスタマイズ性を提供します。これにより、特定の要件を持つアプリケーションの開発やテストが容易になります。

3. スケーラビリティとリソース管理

  • VMを利用することで、プロジェクトのニーズに応じてリソースを動的にスケーリングできます。ピーク時にはリソースを増やし、需要が少ない時にはスケールダウンしてコストを節約できます。

4. セキュリティと分離

  • VMを使用すると、異なる開発プロジェクトやアプリケーションを物理的に分離し、セキュリティを強化できます。これにより、一つのプロジェクトでの問題が他のプロジェクトに影響を与えるリスクを軽減できます。

5. 自動デプロイとCI/CDの統合

  • Azure DevOpsなどのCI/CDツールと組み合わせることで、ソースコードの変更があるたびに自動でビルドとテストを行い、成功したビルドをVMにデプロイするプロセスを自動化できます。これにより、開発サイクルを加速し、リリースの品質を向上させることができます。

VMは、これらの利点を通じて、開発プロセスをサポートし、効率化と自動化を実現する重要な役割を果たします。開発者はVMを利用することで、アプリケーションの開発、テスト、デプロイメントをより迅速かつ安全に行うことができるようになります。

︎【関連記事】
➡️Azure DevOpsとは?その概要や使い方、料金体系をわかりやすく解説


Azure Virtual Machineのセキュリティ

仮想マシンを使う上でセキュリティやコンプライアンスは非常に重要です。
Microsoftは、5年間で200億ドルをサイバーセキュリティへの投資に充て、77か国で8,500を超えるセキュリティおよび脅威インテリジェンスの専門家を採用しています。

これにより、Azureは、業界最大のコンプライアンス認定ポートフォリオの1つを提供しています。

︎【関連記事】
➡️Azureのセキュリティ対策を徹底解説!主要機能や製品、導入事例も


Azure VMの導入事例

世界をリードする美容ブランド「L'Oréal」の事例
L'Oréal、の事例
L'Oréal、の事例 参考:Microsoft

L'Oréalの事例では、Microsoft Azure上でのSAPビジネスアプリケーションの移行において、Azure Virtual Machinesが中心的な役割を果たしました。

これは、企業がビジネスのパフォーマンス向上、コスト削減、持続可能性への取り組みを強化する上で重要な要素です。

Azure Virtual Machinesによる成果

  • 性能の大幅な向上
    L'Oréalは、Azure Virtual Machines上でSAPワークロードを実行しました。これにより、かつて3時間かかっていた処理が5〜10分で完了するなど、トランザクション速度が10倍から25倍に速まりました。

  • コスト効率の向上
    Azureに移行することで、オンプレミス環境に比べてコストを削減しました。CAPEXからOPEXモデルへの転換により、少なくとも19%の節約が実現しました。

  • 柔軟性とスケーラビリティ
    Azure Virtual Machinesを利用することで、L'Oréalは内部のニーズや市場の急激な変化に迅速に対応できるようになりました。必要に応じて環境を数分でスケールアップし、ピーク時以外はスケールダウンできます。

技術的な事例

  • Azure ExpressRoute
    Azureへの高セキュリティな接続を提供し、企業ネットワークとAzure Virtual Machines間の安定した通信を実現しました。

  • Azure NetApp Files
    L'Oréalの巨大なデータベースのパフォーマンスを向上させるために使用されました。

➡️ 導入事例特集はこちら


まとめ

本記事ではAzure Virtual Machinesについて徹底的に解説しました。クラウドにおける仮想マシンは運用コスト削減、クラウド移行の大きな役割を担います。
適切に利用してクラウドが生かされた環境構築をしていきましょう!

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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