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チャットボットの市場規模とは?国内・国外のシェア率から見る将来性

この記事のポイント

  • チャットボット市場はAI技術の進歩で急成長
  • 全世界で利用が拡大し、日本でも導入が進む
  • 顧客サービス効率化やコスト削減などのメリットがある
  • 大分銀行や医療法人社団の活用事例を紹介
  • 導入成功のポイントは目的明確化、有人対応併用、効果測定など

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

チャットボット市場は、デジタル化の加速とAI技術の進歩によって、近年非常に大きな成長を見せており、企業の顧客サービスや業務効率化の重要な役割を担っています。
国外は勿論、日本国内でも多くの企業がチャットボットの導入を進めており、労働力不足の解消や24時間対応の顧客サービス提供、データ収集と分析強化など、さまざまなメリットが認識されています。

この記事では、その市場規模の拡大背景や現状、そして今後の成長への見通しを世界と日本のデータを交えつつ詳しく解説し、企業による効果的なチャットボット活用事例や導入成功のポイントについても考察していきます。

チャットボットを活用することの重要性が高まる中、その可能性や今後の展望をぜひ理解し、自社の成長に活かしてみてください。

チャットボットとは

チャットボットとは、ユーザーが入力した質問やコメントに対して自動で応答を行うプログラムのことです。
顧客対応の効率化、24時間対応の顧客サービス、そしてデータ収集と分析の面で多くの企業にとって有用なツールとなっていますが、すべてのチャットボットがAIを使用しているわけではありません。

チャットボットの種類とAIの関連性には次のような違いがあります。

チャットボットの種類
チャットボットの種類

AIチャットボット

AIチャットボットは、自然言語処理(NLP)、機械学習(ML)、深層学習(DL)などの技術を使用して、より複雑で自然な会話を実現します。
これらのチャットボットは、ユーザーの意図を理解し、学習を通じてその応答を改善する能力を持っています。

AIチャットボットは、会話の文脈を把握し、より人間に近い対話を行うことができるため、顧客体験を向上させるのに特に有効です。

ルールベース・シナリオ型のチャットボット

一方でこれらのチャットボットは、主に事前に設定されたスクリプトやルールに基づいて動作します。
例えば、特定のキーワードに反応して定型文を返すなどの単純なタスクを行います。

これらは「ルールベースのチャットボット」とも呼ばれ、特定の条件に基づいてプログラムされた応答を行うため、必ずしもAIには該当しません。

【関連記事】
➡️チャットボットのシナリオ型とは?作成方法や活用例を徹底解説


チャットボット市場の現状

チャットボットの市場規模は年々増加しており、今後も増加の見通しがあります。
特に新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、顧客の質問や関連情報に対応するために、多くの組織でチャットボットの導入が増加しました。

多くの組織がリモートワークを導入する中、企業はカスタマーサービス従業員の対応が限られるため、「顧客からの問い合わせの負担を軽減する手段」として、チャットボットに大きく依存するようになっています。

【国内】チャットボットの市場規模

ビジネスチャットツール市場規模推移・予測
ビジネスチャットツール市場規模推移・予測 (出典株式会社矢野経済研究所)

株式会社矢野経済研究所によると、2022年度の国内ビジネスチャットツール市場規模推移・予測(事業者売上高ベース)は、前年度比129.7%の330億5,500万円でした。

ビジネスチャットツール市場規模は、2024年度で395億2,000万円、2026年度には437億5,000万円、そして2027年度には454億5,000万円に達するものと予測されています。


【世界】チャットボットの市場規模

世界のチャットボット市場規模
世界のチャットボット市場規模(出典Mordor Intelligience)


こちらは、市場調査およびコンサルティングサービスを提供するMordor Intelligenceの市場調査レポートによる抜粋です。

この調査によると、チャットボット市場規模は2024年に70億1,000万米ドルと推定され、2029年までに208億1,000万米ドルに達すると予測されており、予測期間(2024年から2029年)中に24.32%のCAGRで成長します。

地域別チャットボット市場の成長率
地域別チャットボット市場の成長率 (出典Mordor Intelligience)


特にアジア太平洋地域では工業化の進展に伴い、チャットボットの需要が急速に増加しています。

特に、中国、インド、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、タイなどの新興国では、小売業やeコマースビジネスが拡大しており、それにより小売業者やeコマース事業者によるチャットボットの導入が急速に進んでいます。


チャットボット市場が急成長する理由

デジタル技術の進化に伴い、急速な成長を遂げているチャットボット市場ですが、その背景にはどのような要因が影響しているのでしょうか。

ここでは、その理由について5つ詳しく解説していきます。

1: 人口動態と労働力不足

人口動態と労働力不足
人口動態と労働力不足 (出典総務省


まず第一に、日本の人口減少および高齢化による労働力不足の深刻化が挙げられます。

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれています。

この問題を緩和する手段の一つとして、多くの企業がチャットボットを活用しています。
チャットボットは24時間365日対応可能であり、人間の代わりに顧客サービスや簡単な業務処理を行うことができるため、人手不足を補う有効な手段となっています。


2: 働き方改革

働き方改革の画像
働き方改革の画像


2016年に発表された、「働き方改革」は、安倍政権の主導で「一億総活躍社会」の実現を目的とした取り組みです。
働き方改革が推進される背景として、以下の3点が注目されています。

  1. 長時間労働の是正
  2. 正規・非正規の格差解消
  3. 労働人口不足(高齢者の就労促進)


労働時間の削減や生産性の向上が求められているなかで、チャットボットはこれを支援するツールとして注目されています。
繰り返し発生する問い合わせや日常的な事務作業を自動化することで、従業員がより創造的な業務に集中できる環境を提供します。


3: AIと自動化の進展


AI技術の進化により、近年のチャットボットは単純なFAQ応答だけでなく、より高度な会話能力を持ち、複雑なタスクもこなせるようになっています

企業はこの技術を活用することで顧客対応を迅速かつ効率的に行えるようになり、コスト削減や業務効率の向上が期待できます。
つまり、AIの発展により、チャットボットの応用範囲も広がり、多様な業界での導入が進んでいます


4: LINEやFacebookのプラットフォーム展開

日本では特にLINEが広く使われており、LINEプラットフォーム上でのチャットボットの利用が盛んです。

Facebook Messengerなどの海外プラットフォームも同様に、ビジネスと顧客をつなぐ重要なツールとして位置付けられています。

Hootsuiteが発表した2022年1月のメッセージングアプリ利用統計によると、WhatsAppの月間アクティブユーザー数は20億人、WeChatは12億6,300万人、Facebook Messengerは9億9,800万人となっています。

テキストベースのアプリ利用者が増加し続ける中、これらのアプリとチャットボットを統合することで、顧客が好むアプリでアプローチすることが可能になります。
これにより、投資収益率の向上とユーザー体験の向上が期待できます。同時に、会話履歴が保存されることで、将来的にパーソナライズされたチャットサービスの提供が可能になります。

OpenAIやGeminiをはじめとする豊富なAPIや開発ツールの利用により、企業は簡単に自社のチャットボットを開発・導入でき、顧客とのエンゲージメントを高めることができるようになっており、これが市場の拡大に寄与しています。


5: 外出自粛とデジタル化の加速

新型コロナウイルスの流行による外出自粛や社会的距離の維持が必要とされる中、デジタル化が急速に進みました。
チャットボットは非接触でのコミュニケーションを可能にし、オンラインでの顧客対応や健康相談、販売支援など幅広い用途で利用されるようになりました。

この流れは、チャットボットの需要を増加させ、市場の成長を加速させています。


チャットボットの利用がもたらすメリット

ここでは、チャットボットの利用がもたらす主要な3つのメリットについて解説します。

コスト削減と業務効率化、顧客満足度の向上、データ収集と分析の強化という観点から、チャットボット導入の利点を詳しく見ていきましょう。

1.コスト削減と効率化

チャットボットを導入することで、顧客サービスやFAQ対応などの一部業務を自動化できます。
これにより、人件費の削減や従業員の業務負担を軽減することができるため、全体の運営コストを下げることが可能です。

また、ルーチンワークを自動化することで、従業員がより価値の高い業務に集中できるようになります。

2.顧客満足度の向上

チャットボットは24時間365日対応が可能であり、ユーザーからの問い合わせに対して即時に応答することができます。
これにより、顧客の待ち時間が減少し、顧客体験が向上します。

また、複数の言語に対応したチャットボットを利用することで、言語の壁を越えたサービス提供も可能になります。

3.データ収集と分析の強化

チャットボットは顧客との対話を通じて大量のデータを収集することができます。
このデータは、顧客の行動や好み、フィードバックを理解するための貴重な情報源となり、製品やサービスの改善に役立ちます。

収集したデータを分析することで、マーケティング戦略や顧客サービスのさらなる最適化が可能になります。


チャットボットの導入・活用事例

ここでは、チャットボットを導入した企業や団体の具体的な事例を見ていきます。大分銀行の24時間365日の問い合わせ対応、医療法人社団壮明会山﨑内科医院のコロナワクチン接種予約ボット、アース製薬株式会社の無料虫ケア相談サービスなど、様々な業界でチャットボットが活用されている実例を紹介します。

株式会社大分銀行

大分銀行の例
大分銀行の例 (出典)PKSHA


会社名
株式会社大分銀行


導入後の効果

  • 顧客からの問い合わせに24時間365日即時回答が可能
  • 顧客の利便性向上
  • 業務の効率化
  • 行員の生産性を高め、より一層お客さまに良質な金融サービスを提供可能に
  • 取りあえず電話する文化を変革

医療法人社団壮明会山﨑内科医院

コロナワクチン接種予約ボット
コロナワクチン接種予約ボット(出典Cognify


医療法人社団壮明会山﨑内科医院ではコロナワクチン接種予約ボットを導入しました。コロナワクチン接種時に必要な事前問診や複雑な接種条件をAIチャットボットと会話しながら、効率的に案内及び予約を行うことを可能にしています。


団体名】医療法人社団壮明会山﨑内科医院

導入概要

  1. コロナワクチン接種条件判断機能
  2. 問診取得機能
  3. カレンダー連携
  4. 予約状況確認機能
  5. リマインダー機能


導入後の効果
今までの予約システムでは対応出来なかった、初回接種のワクチンの種類確認や住まいの地域確認などを24時間365日非接触・非対面で実施。
コロナ禍においても、安全・安心な新たな接種予約を実現。


### アース製薬株式会社

無料の虫ケア相談サービス
無料の虫ケア相談サービス ((出典)PRTIMES)


アース製薬株式会社は4月22日から、アース製薬公式LINEにて、誰もが簡単に害虫の生態や虫ケア対策を気軽に相談できるChatGPT搭載のAIチャットボットによる無料の虫ケア相談サービスを開始しました。

会社名】アース製薬株式会社

サービス概要】LINEにゴキブリ、蚊、ダニをはじめ、問い合わせが急増※している「トコジラミ」など、様々な虫の生態や対策を気軽に相談できる、選択式のチャットボットの『虫ケア相談室』と、ChatGPT搭載のAIチャットボットで「地球セイヤくん」と虫をテーマに楽しく会話ができる『地球セイヤくんと虫トーク』の機能を搭載

サービスの特徴】ChatGPTにアース製薬が蓄積してきた虫関連のデータを学習させている。害虫を選択すると、お悩み別対策方法を案内したり、その害虫に適用のある製品を案内する仕様です。また「虫を詳しく知りたい」を選択して気になる虫をタップすると、その虫の生態や豆知識、おすすめ記事などをチェックすることが可能


チャットボット導入成功のための考慮ポイント

チャットボット導入成功のための考慮ポイント
チャットボット導入成功のための考慮ポイント

チャットボットをただの自動応答ツールではなく、顧客体験を向上させるための有力な手段とするためには以下の3点を抑えておくことが重要です。
以下で、それぞれについて解説していきます。

1.導入目的の明確化

チャットボットを導入する目的を明確に設定することが重要です。
顧客サポートを自動化するためなのか、販売促進のためなのか、あるいは内部の業務効率化のためなのかによって、チャットボットの設計や機能が異なります

目的に応じて最適な設計を行うことで、導入後の効果を最大限に高めることができます。

2.有人対応との併用

チャットボットは多くのルーチンタスクや標準的な問い合わせに対応できますが、すべての顧客ニーズに応えることは困難です。
複雑な問題や繊細な対応が必要な場合は、人間の介入が必要となります。

そのため、チャットボットと有人対応を適切に組み合わせることが、効果的な顧客サービスの提供には不可欠です。

例えば、チャットボットが処理できない問い合わせや不満に対しては、スムーズに人間のオペレーターにエスカレートするシステムを設けることが効果的です。
これにより、高い顧客満足度を維持することができます。

【関連記事】
➡️チャットボットと有人チャットの違いとは?メリット・デメリットを解説

3.効果測定と運用

チャットボットの導入効果を定期的に測定し、その結果をもとに継続的な改善を行うことが重要です。
効果測定には、応答時間の短縮、解決率の向上、ユーザー満足度の改善など、具体的な指標を設定します。

これらのデータを収集・分析することで、チャットボットのパフォーマンスを客観的に評価し、必要に応じて調整を行うことができます。

また、チャットボットの運用においては、技術的な保守やアップデートだけでなく、ユーザーからのフィードバックを取り入れた内容の更新も行うことが望ましいでしょう。

【関連記事】
➡️チャットボットの評価指標や、効果測定の手順をわかりやすく解説!


まとめ

この記事では、チャットボット市場規模の現状とその急成長している理由、チャットボットの利用がもたらす利点、そしてチャットボット導入のための考慮点について詳細に解説しました。
現在の市場動向は、チャットボット技術が今後も継続的に成長し、多くの業界で重要な役割を果たし続けることを示しています。

適切な計画と運用によって、チャットボットは企業にとって大きな価値を提供し、顧客体験の向上を実現します。
将来的には、さらに高度なAIとの統合や、新たなアプリケーション領域への進出によって、チャットボット市場はさらに拡大していくことが期待されます。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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