この記事のポイント
- AIによる個別最適化学習で学習効率が向上
- 教員の業務負担軽減とデータ分析による指導改善
- 非認知能力の評価や心理状態の可視化にAIを活用
- グローバル教育プログラムでAIがコミュニケーションを支援
- 様々な教科でAI搭載の学習アプリやツールが普及
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
教育現場でのAI(人工知能)活用は、オンライン授業の普及や教育ニーズの多様化に対応する新たなトレンドとして注目されています。
この記事では、教育業界におけるAI導入の事例6選を詳細にご紹介し、いかにAIが学習を個別最適化し、教員の業務負担を軽減し、教育のアクセシビリティを拡大しているのかに焦点を当てます。
AIを通じて教育がどのように変わり得るのか、その可能性と未来について学んでいきましょう。
目次
1.一橋大学のGlobal Virtual Teamsプログラム
2.学研のオンライン学習サービス「Gakken ON AIR」
5.教育専門知識とビッグデータを活用した「tomoLinks®」(コニカミノルタ)
6.「AI搭載英語学習システム」を学校推薦型選抜の出願資格として導入(立命館アジア太平洋大学)
7. 日本最大級の専門学校グループがAI搭載の対話式ICT教材を導入(学校法人国際総合学園)
8.遠隔講義システムを使った体験型AI講座(東海大学・株式会社APC)
9.生成AIを搭載した幼児向け会話型新サービス「AIしまじろう」
11.市内の全公立小中学校にAIドリルを導入(北海道江別市)
12.非認知能力・特性・心理状態の可視化AIツールを公立小中学校向けに販売
13.Dall-E3で学級キャラクター作り(東京都練馬区立石神井台小学校)
14.生成AI×総合的な学習の時間|中3「未来防災小説を書く」(新潟市立小新中学校)
16.教育ダッシュボードをPower BIで構築(渋谷区教育委員会)
5.算数&数学にターゲットをしぼったEラーニング学習ツール「Qubena」
6.Duolingo 学習者一人ひとりに寄り添ったレッスンを提供
教育現場におけるAIの活用事例とは
世界が急速にデジタル化を進める中、教育業界においてもAI(人工知能)の導入が積極的に進められています。
特に新型コロナ感染症の拡大が大きな契機となり、オンラインでの教育需要が高まり、同時に教育の質を維持、向上させるための新たな方法が求められています。
AIはこのような状況下で、個別学習の最適化、教材のパーソナライズ、学習進捗の自動追跡といった形で教育現場に新たなトレンドを起こしています。
日本の教育現場における現状の課題
日本の教育現場における現状の課題
1.1 オンライン授業のインフラ不足
2020年のパンデミック以降、オンライン授業が一般化しましたが、その準備が整っていない地域や学校も少なくありません。
安定したインターネット接続、適切なデバイスの配布、使いやすい教育プラットフォームの欠如が、国内での教育の質に格差を生じさせています。
さらに、家庭での学習環境の差も大きな問題となっており、すべての学生が公平にアクセスできる環境の整備が急務です。
1.2 教育ニーズの多様化
現代の日本において、教育ニーズは以前にも増して多様化しています。少子化の進行に伴い、一人の子供にかける教育費が増加する傾向にあり、その結果、教育の質や内容に対する期待も高まっています。
この背景のもと、国際バカロレア(IB)プログラムやインターナショナルスクールといった国際教育の機会に対する需要が高まっています。
加えて、私立高校の学費無償化政策が地域によって導入されることで、家庭の教育費負担が軽減され、その分を学習塾や予備校などの補助教育へとシフトする動きが見られます。
これは、競争が激化する受験戦線において、より専門的な指導を求める声が高まっていることを示しています。
1.3 教員の業務負担
教育業界では現在、教員不足という問題にも直面しています。
文部科学省のデータによれば、公立の小中学校で教員不足が発生しているのは、約20校に1校の割合で、これは教育行政における深刻な構造問題を浮き彫りにしています。
(参考)小中学校1350校で「教師不足」 文科省が初の実態調査
授業準備から保護者対応、また部活動といった多岐にわたる業務を一手に担うことは、教育現場における実質的な時間外労働を増加させ、教員のストレスや教育の質への影響が度々問題となっています。
特に、新しい技術や教育方法、例えばAIやデジタル教育ツールの導入に伴う研修も、教員の時間と労力をさらに圧迫させる可能性があります。
このような多面的な問題に対応するため、教育政策や教員養成プログラムの見直しが求められています。教員一人ひとりの負担を軽減し、教育の質を高めるための実効性のある対策が急務です。
教育現場でAIを導入するメリット
教育業界でAIを導入するメリット
パーソナライズ教育の実施
AIの最大の利点の一つは、学生一人ひとりの学習スタイルや能力に合わせて教育をカスタマイズできることです。
AIを活用することで、学生の過去の学習データを分析し、個々の強みや弱点に基づいた教材を提供することが可能になります。
これにより、学生は自身のペースで学習を進めることができ、理解度が高まるだけでなく、学習へのモチベーションも向上します。
また、AIによるリアルタイムのフィードバックが学生の理解を深め、教育成果を最大化する手助けとなります。
教員の業務効率化
AIの導入は、教員の業務負担を軽減し、効率を大幅に向上させることができます。
例えば、試験や課題の自動採点システムによって、教員は評価作業に費やす時間を削減でき、より創造的かつ重要な教育活動に集中することが可能です。また、出席管理や学習進捗の追跡などの日常的な管理業務も自動化できます。
つまりAI導入により、教員は学生一人ひとりの指導により多くの時間を割くことができ、教育の質の向上に直結します。
教育のアクセシビリティ拡大
AI技術を活用することで、地理的な障壁や物理的な制約を超えて、より多くの学生に高品質な教育を提供することができます。これにより、遠隔地に住む学生や障害を持つ学生も、同様に教育の機会を享受できるようになります。また、多言語対応AI教育プラットフォームを通じて、異なる言語話者に対しても教育サービスを提供することが可能です。
教育業界AI導入事例16選
1.一橋大学のGlobal Virtual Teamsプログラム
一橋ICSの画像
一橋大学大学院経営管理研究科が展開する「Global Virtual Teams(GVT)」というプログラムでは、世界中の異なる国からの学生がバーチャル環境でチームを組み、プロジェクトを進行させることで、実際の国際的なビジネス環境で求められるスキルを身につけることができます。
GVTプログラムでは、AI技術を活用して、ビデオ会議中の非言語的コミュニケーション(表情、ジェスチャー、声の抑揚など)を分析します。これにより、チームのダイナミクスや個々の参加者の行動パターンを詳細に理解し、コミュニケーションの効果を最大化することが目指されています。
このようなプログラムは、教育の国際化だけでなく、デジタル化を推進する上で重要な事例とされています。また、このようなプログラムが一般化することで、教育機関はより多様な学生にアクセスし、より包括的な学習環境を提供することができるようになるでしょう。
(参考)
2.学研のオンライン学習サービス「Gakken ON AIR」
GDLSの画像
株式会社学研ホールディングスのグループ会社、株式会社学研メソッドは、OpenAIのChatGPTを活用した学研オリジナル学習システム(GDLS)を提供しています。
このシステムは、オンライン学習サービス「Gakken ON AIR」にてメタバース空間で実施されます。
GDLSは、生徒の学習履歴や理解度に基づいて個別の学習アドバイスを提供し、教育AI「Knewton」の分析によるデータと講師の知見を融合したアプローチを取り入れています。
このサービスは、各生徒の学習体験を最適化する、教育の新しい形を示す事例となっています。こちらのプログラムは将来的に他の事業にも拡大される見込みで、パーソナライズされた教育が学生だけではなく、今後は全世代に広く使用されていくことが期待されます。
(参考)
3.自由研究おたすけAIの提供(ベネッセ)
自由研究おたすけAI
ベネッセがリリースした「自由研究おたすけAI」は、Open AIの生成AI「ChatGPT」を活用し、子どもたちの自由研究テーマ選びをサポートするサービスです。
このAIは、生徒が入力した内容に基づき適切なアドバイスを提供し、迅速なサービス開始を実現しました。
サービスはリリース後、利用者の80%以上から高評価を得ており、システム不具合の報告もなく、ポジティブなフィードバックが寄せられました。
特に、ChatGPTにキャラクターを持たせたことで、子供たちとの対話がより自然で魅力的なものになりました。保護者から好意的な評価を受けたようです。
ベネッセは今後もこのAI技術を活用し、さらなるサービス改善と新たな教育サポートツールの開発を進めていく計画で、子どもたちのニーズに応じた革新的な製品を提供することで、学習サポートの質を高め、教育の可能性を広げていく方針です。
(参考)
4.AIを学校現場で活用(長崎北高校)
長崎県立長崎北高校では、ChatGPTを用いて生徒自らAIの適切な使用方法を討論する授業が行われています。
生徒たちは2人1組でチャットGPTのメリットとデメリットを実際に使ってみた経験を基に考察し、その結果を発表しました。
- ChatGPTが詳細な解説付きで回答する点を評価しつつも、AIに任せ過ぎるリスクを指摘
- AIを助けとして使いながら自分で考える力を養うべき
- AIが対応できない変則的な問題を示し、情報を鵜呑みにせずに参考として活用することの重要性
- 学習外でもAIを使いこなす練習が必要
といった意見が生徒らから挙げられました。
最終的に、生徒たちはチャットGPTと英語で討論を行い、AIの便利さを最大化するためのルールの必要性について学びました。
このように、ChatGPTの教育現場での適切な使用にはガイドラインの設定が重要であり、生徒自身がその有効な使い方を学ぶ過程も重要です。
(参考)
5.教育専門知識とビッグデータを活用した「tomoLinks®」(コニカミノルタ)
対話型生成AI機能の仕組み
コニカミノルタジャパンは、教育専門知識とビッグデータを活用した「tomoLinks®」という新しい対話型生成AI機能を開発しました。
このシステムは、大阪市立小中学校の一部で2024年9月から先行利用が開始される予定です。
tomoLinks®は、自治体や学校が保有する教育データを基に、学生の成績の変化や得意・不得意な単元を分析し、それに基づいて個別最適な対話を行い学習を支援します。
この取り組みは、大阪市教育委員会との連携協定に基づくもので、教育データの利活用による相互協力を目的としています。主な連携事項には、AIを活用した学習の可能性に関する調査研究などが含まれます。
このシステムは学習支援、先生×AIアシスト、授業診断の三つのサービスで構成されており、教員の負担を軽減し、子どもたち一人ひとりに合わせた教育の実現が期待されます。
(参考)コニカミノルタジャパン株式会社
6.「AI搭載英語学習システム」を学校推薦型選抜の出願資格として導入(立命館アジア太平洋大学)
APUの画像
立命館アジア太平洋大学(APU)は、2025年度の学校推薦型選抜で、MagniLearn社のAIを活用した英語学習システム「GET Test & Learning System」を導入することを発表しました。このシステムでは、AIが受講者の英語の4技能を判定し、個々のレベルに合わせたカリキュラムを提供することで、学生の弱点を効果的に克服します。
また、新たに導入される「GRAB Program」は、学校推薦型選抜の出願資格の一環として、受験生が英語力を向上させるために利用します。このプログラムを通じて、受験生は入学後の学業や課外活動に積極的に参加することが期待されています。
(参考)日経新聞
7. 日本最大級の専門学校グループがAI搭載の対話式ICT教材を導入(学校法人国際総合学園)
AIを活用したアダプティブICT教材「すらら」
株式会社すららネットは、AIを活用したアダプティブなICT教材「すらら」を提供しています。この教材は、日本最大級の専門学校グループである国際総合学園が運営するNSGカレッジリーグとFSGカレッジリーグに2024年8月から導入されます。学生の基礎学力強化と学習習慣の定着を目指し、各学生の理解度に合わせた個別最適化された学習を可能にすることで、検定合格率や専門知識の理解度向上が期待されています。
この教材の導入により、資格取得後の実務で必要とされるスキルの習得もサポートされ、学生が社会で活躍する人材として育つことが期待されています。
(参考)株式会社すららネット
8.遠隔講義システムを使った体験型AI講座(東海大学・株式会社APC)
東海大学の画像
株式会社APCは東海大学と連携し、遠隔講義システムを活用した体験型AI講座の実証授業を実施しました。
この授業は、APCが開発したAI教育パッケージ「AIミネルバNovice」を使用して、東海大学の人文学科と海洋文明学科の学生にAIの基礎と画像認識技術を教えることを目的としています。授業では、AIの概要、データの重要性、深層学習などについて学び、実際に画像認識AIの作成プロセスを体験しました。
この講座は、高度情報社会に対応するためのスキル習得を目指しており、AIを使いこなす能力を学生に提供します。
この講座は、AIについての正しい知識と使い方を学ぶことで、未来の社会でAIと共に生きる力を育てることを目指しています。
(参考)PRTIMES
9.生成AIを搭載した幼児向け会話型新サービス「AIしまじろう」
AI「しまじろう」商品概要
株式会社ベネッセとソフトバンクロボティクスは、生成AIを搭載した幼児向け会話型新サービス「AIしまじろう」を共同で開発しました。
このサービスは、「こどもちゃれんじ」の教育ノウハウを活かし、子どもたちの言語能力とコミュニケーションスキルを育成することを目的としています。
AIしまじろうは、スマートフォンアプリと専用のしまじろうぬいぐるみを組み合わせて利用し、子どもたちが自由に会話を楽しむ**ことができます。さらに、プレイ中の子どもの感情や興味を分析し、保護者にフィードバックを提供します。
モニター期間中のフィードバックを基に、将来のサービス改善に役立てる予定です。この取り組みは、変化の激しい未来社会で子どもたちが必要とするコミュニケーション力や問題解決力などの資質を育てることを目指しています。
(参考)ソフトバンクロボティクス株式会社
10.幼児教育/全脳教育型AIシステム「コペルン」
全脳教育型AIシステム「コペルン」
株式会社コペルは、全脳教育型AIシステム「コペルン」を幼稚園や保育園向けに販売を開始しました。このシステムは、5,000種類を超えるデジタル教材と最先端のAIチャットテクノロジーを組み合わせており、子どもたちの学びと好奇心を最大限に引き出すことを目指しています。
「コペルン」は、大型タッチディスプレイを使用した教育動画や知育ゲームを提供する「コペルンクラス」と、子どもたちの話し相手や保護者の育児相談に応じるAIキャラクター「ペルくん」を含む「コペルンホーム」の二部構成で提供されます。
コペルの代表取締役である大坪信之氏は、「コペルンは31年にわたる幼児道徳教育の研究と実践に基づいて開発され、子どもたちに好奇心を刺激し、道徳的な規範を植え付ける効果を持つと確信しています」とコメントしています。
(参考)株式会社コペル
11.市内の全公立小中学校にAIドリルを導入(北海道江別市)
AIドリルの使用画面
北海道江別市では令和6年度より、児童生徒の理解度に合わせて最適な問題を出題するAIドリルを、市内の全公立小中学校に導入することを発表しました。
株式会社ジャストシステムのAIドリルを活用し、児童生徒の個別学習をより一層支援するとともに、児童生徒一人ひとりに合った学びの実現が導入の目的となっています。
家庭での自主学習、学校での朝の学習、授業における演習、長期休業中の課題等での活用を想定され、小学生の5教科・中学生の9教科ともにカバーする形となっています。
12.非認知能力・特性・心理状態の可視化AIツールを公立小中学校向けに販売
L-Gateの画像
Institution for a Global Society株式会社(IGS)は、非認知能力の可視化ツール「Ai GROW Lite」を開発し、これを株式会社内田洋行が提供する学習eポータル「L-Gate」と連携して提供することを発表しました。
このツールでは主体性や協調性、思考力などの非認知能力を6つの核心能力に基づいて評価します。これらは学生が学校生活で直面する様々なシナリオにおいて、自己評価と相互評価の形式で測定され、AIによる評価の偏りの補正が行われます。
また、性格特性や心理的安全性といった深層の心理状態は、Implicit Association Test(IAT)という脳科学に基づいた手法を使用して測定されます。これにより、学生自身もしくは教育者が意識しづらい無意識のバイアスや潜在的な姿勢を理解することができます。
13.Dall-E3で学級キャラクター作り(東京都練馬区立石神井台小学校)
学級キャラクター作り
石神井台小学校では、ICTと生成AIの活用を進める一環として、学級キャラクター作りの授業を導入しました。
このプロジェクトでは、生成AIを活用して、生徒たちが自分たちのクラスを代表するキャラクターをデザインします。生徒たちはタブレットを使用してアイデアを出し、そのアイデアをChatGPTを通じて整理し、具体的なキャラクターデザインに発展させ、生徒たちは創造力を発揮し、技術の使い方を学びながらコラボレーションの重要性を理解します。
学級キャラクター作りは、生徒が主体的に参加し、思考力や表現力を養う貴重な機会となります。生成AIの活用は、ただ技術を使うだけでなく、生徒の学びに深みを加え、教育的な成果を最大化する方法として導入されています。
(参考)みんなの教育技術
14.生成AI×総合的な学習の時間|中3「未来防災小説を書く」(新潟市立小新中学校)
未来防災小説を作成する様子
新潟市立小新中学校では、総合的な学習の時間に「防災・福祉をテーマに、ロボット・AIを通して新しい時代を創造する」という探究活動を展開しています。生徒たちは学年ごとに異なるテーマで学び、特に3年生は防災や福祉に役立つロボットの開発を想定し、その集大成として未来防災小説を執筆し、デジタルブックとして公開します。
このプロジェクトでは、ChatGPTを活用し、生徒が書いた小説の誤字脱字の校正や内容の講評を行い、その品質を向上させています。
保科校長は、生成AIを教育現場に取り入れることで、生徒たちが正しい使用方法を学び、将来的なトラブルを避ける狙いがあると述べています。このように小新中学校では、AI技術を使いこなす力を生徒たちに身につけさせることを目指しています。
(参考)みんなの教育技術
15.AI活用×オンライン家庭教師「Thinkster」
Thinksterの画像
こちらはオンライン家庭教師サービスにも、AIが活用されています。AIがそれぞれに対し効果的な学習計画を立て、家庭教師はそれを基に授業を行うことで、学習成果を加速させています。このシステムはActive Replay Technology(ART)と呼ばれ、現在特許も出願中です。
最終的には家庭教師が学習計画の方向性を決定しますが、「AI×人間」の協働により、学習を最適化する良い事例だと言えます。
16.教育ダッシュボードをPower BIで構築(渋谷区教育委員会)
渋谷区教育ダッシュボード構成図
渋谷区教育委員会は教育データを可視化し、全学校で活用するプロジェクトを実施しています。教員が子どもを理解し、それに基づいた指導と支援を行うことで、子どもたちの学校生活の満足度を高めることを目的としており、MicrosoftのPower BIを活用して内製化可能なダッシュボードを開発しました。
また、Microsoft Azureの基盤上で構成されたAIのクラスタリング分析により、子どもたちの傾向を分類する機能も備えています。
このダッシュボードを使用することで、教員や管理職は、子どもたちの興味や関心、悩みを察知し、チームとして迅速に対応できるようになりました。
(参考)Microsoft
AIを活用した教育サービス6選
1.侍テラコヤ『AI先生』
侍エンジニアの画像
株式会社SAMURAIが運営する、プログラミング学習者の疑問を解決するQ&A掲示板『AI先生』では、GPT-4oを搭載し、学習者が直面する複雑な問題や高度な概念に対して、より具体的で理解しやすい回答を提供しています。
このアップグレードにより、
- 画像付きで質問
- 回答速度が大幅に向上
- 複雑なプログラミング概念に対応
といった、メリットがあり、学習者の満足度と学習効率の向上が期待されています。
AI先生には技術的な悩みだけではなく、プログラミング学習の悩み、キャリアや転職に関する悩みも相談可能ということです。
今後はこのように、AIが伴走して私たちをサポートする事が日常になるといって間違い無いありません。
2.AI学習教材「atama+(アタマプラス)
AI学習教材「atama+(アタマプラス)の画像
AI学習教材atama+(アタマプラス)は、全国の塾・予備校に広がっている、AIを活用したラーニングシステムです。小中高生向けに、一人ひとり100%カスタマイズした学びを実現しており、高い学習効果を測っています。
- 駿台
- Z会
- 明光義塾
早稲田スクール
をはじめ、全国4,000以上の塾教室で採用されており、「AI×人間の先生」での学習サポートが拡がりを見せています。
従来の教育では不可能に近かった各生徒の「得意」「苦手」「伸び」「つまずき」をAIが分析することで一人ひとりに寄り添う教育が可能になったのはAI時代の1番の恩恵の一つですね。
3.AI英語教材 abceed(エービーシード)
abceedの画像
「abceed(エービーシード)」は、株式会社Globeeが提供するAI英語学習アプリで「学習量×学習効率を最大化する」というミッションに基づき作られています。
僕は1ヶ月でTOEICを740点→910点まで上げるのに成功したんですが、やったことは英語AIの「ABCEED」だけです。
— usutaku@AI情報解説 (@usutaku_channel) June 4, 2023
・模擬テストで自分の実力を点数化
・英文ニュースや映画等の教材も豊富
・記憶の定着に最適なタイミングでAIが間違えた問題や苦手分野を提案… pic.twitter.com/9djBgJkk1Z
2024年1月には、登録ユーザー数400万人を突破し、800タイトル以上の人気英語教材の中から、一人ひとりの英語力を上げるのに最適な単語や問題をAIがレコメンドすることで、従来では不可能なレベルに学習効率を高めることが可能です。
4.AI英会話アプリ「ELSA Speak」
「会話式の練習」で90%以上とるコツを伝授。「会話式の練習」の評価対象は「流暢さ」「発音」「イントネーション」の3つ。中でも「流暢さ」がカギ。ナレーターと同じぐらいの速度で話すとスコアが一気に上がる。逆に発音とイントネーションは多少雑になってもOK。結構早いので何度も練習してみて。 pic.twitter.com/2LxZ1ZgDoz
— ELSA Speak|AI英会話アプリ (@ELSASpeak_Japan) June 5, 2024
AI英会話アプリ「ELSA Speak」とはGoogleが出資した最先端のAI英会話アプリで、AI英会話・AI発音矯正が可能です。アプリが自分発音を採点し、改善案を提案してくれるのでいつでも、どこでも、何度でも1人で練習でき、成長がとても実感ということで人気が出ています。
5.算数&数学にターゲットをしぼったEラーニング学習ツール「Qubena」
「Qubena」は株式会社COMPASSが提供する学習eポータル+AI型教材で、AIが生徒一人ひとりの習熟度に合わせて最適な問題を出題します。
教科書・教材・ソフトウェア、校務支援システムなどサービスの枠を越えた連携による学習者を中心としたデータ利活用の環境を実現しており、東大阪市教育委員会(大阪府)・豊田市教育委員会(愛知県)・足立区教育委員会(東京都)をはじめ、多くの公立小中学校に導入されています。
AIの活用がこのように広がり、子供たちの学び方や授業のあり方がより柔軟になっていくことに期待が高まりますね。
6.Duolingo 学習者一人ひとりに寄り添ったレッスンを提供
Duolingoメソッドの画像
DuolingoのAIモデルは学習者の進捗を記録し、問題の難易度や順番を調整するため、簡単な問題とやや難しい問題がバランスよく出題されます。
適切な難易度設定により、既存の知識を最大限に活用し、新しいスキルの習得を促進することが研究で示されています。これにより、学習者のモチベーションが向上し、学習効率も上がります。
さらに、Duolingoはアルゴリズムを用いて学習者に最適な練習問題を提供し、特に強化が必要なスキルの習得をサポートしています。
(参考)Duolingo
7.Khaomigo(カーンアカデミー)
Khaomigo(カーンアカデミー)の画像
Khan Academyが提供するKhanmigoは、GPT-4と活用したAI家庭教師兼教育アシスタントです。
Khanmigoは、Khan Academy上で常時利用可能なチャットボットとして機能します。
生徒には数学、読解、作文、コンピュータサイエンスなどの科目で個別のサポートを提供し、コーチングやテスト準備を支援します
教師側は効果的な授業計画や課題を作成できます。保護者にはチャット活動の監視などの標準的な親コントロール機能を提供するだけでなく、子どもが学んでいる科目についての説明も行い、親子での学習がスムーズになるような支援も充実しています。
(参考)Khanmigo
8.STEM教育に特化したAI搭載プラットフォーム「StepWise」
StepWiseの画像
StepWiseは、米国のQuerium社が開発したAI搭載の教育プラットフォームで、学生のSTEM科目に特化しています。AIベースの分析を用いることで、学習進捗を正確に評価し、個々の学習ニーズに基づいた個別指導を提供しています。
このプラットフォームは、双方向通信型講義、パーソナライズ小テスト、リアルタイムのフィードバックなど、学び続けやすい環境が整っています。
(参考)Querium
9.AIが簿記の先生に!「簿記質問AI」
簿記質問AIの画像
ネットスクール株式会社は**LINEアプリ上でAIが簿記の学習に関する質問に答えるサービス「簿記質問AI」**を提供しています。
従来のWeb質問対応サポートでは実現不可能であったリアルタイムの回答が可能になっており、受講生の学習効率向上が期待されます。
まとめ
この記事では教育業界におけるAIの導入事例を通じてAIがどのように、教育の質を向上させるかを紹介しました。
現在は、生徒の個別指導から大学入試選抜、グローバルプログラムでの利用等、様々な形でAIが活用されています。教育業界の将来においてAIの役割がますます重要になるのは間違いありません。AIを活用し、その可能性を最大限に引き出すために、適切なガイドラインと共にこれらの技術を理解し、利用することが大切です。この記事が皆様のAI活用への理解の一助となれば幸いです。