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エッジAIとは?その概要や活用事例、クラウドAIとの違いを徹底解説!

この記事のポイント

  • エッジAIはデータ生成源に近い位置で処理を行い、リアルタイム性と通信コスト削減を実現する技術
  • クラウドAIと比較して、低遅延、プライバシー保護、インターネット接続不要などの利点がある
  • スマートフォン、自動運転、スマートファクトリー、ヘルスケアなど幅広い分野で活用されている
  • 処理能力の制限や管理の複雑さなどの課題があるが、技術革新により解決が進んでいる
  • IoTデバイスの増加と産業のデジタル化に伴い、エッジAIの重要性と市場規模は今後さらに拡大すると予測されている

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

AI技術が急速に進化するなか、エッジAIは新たな可能性を開拓するキーテクノロジーとして注目されています。
クラウドやデータセンターに頼らず、デバイスやセンサーなどのデータ生成源で直接AI処理を行うことで、通信遅延の問題を解決し、リアルタイムでの迅速な対応が可能になります。

本記事では、エッジAIの基本概念から利点、デメリット、具体的な活用事例に至るまでを解説し、その将来展望を探ります。計算リソースの制限などの課題はありつつも、技術発展によって解決されつつあり、様々な業界での重要な役割が予想されています。

エッジAIの登場は、AIとIoTの融合による新たな可能性を示唆しています。本記事を通じて、エッジAIの現状と将来像を理解し、そのポテンシャルを探っていきましょう。

エッジAIとは

エッジAIイメージ

エッジAIとは、データ生成源に近い位置、つまりエッジ(端末やセンサーなど)でAI処理を実行する技術です。

今まではデータはクラウドデータセンターに送信され処理されてきましたが、エッジAIによりデータはその発生源で直接処理されます。
このアプローチにより、データ送信の遅延を避け、高速な処理が可能になり、またインターネット接続が安定しない場所でもAIの利点を享受できます。

エッジAIの動作原理は、小型で省エネながらも高効率のセンサーやIoTデバイスにAIアルゴリズムを組み込むことにあります。

これにより、デバイス自身が現場で即時にデータを分析し判断を行えるようになるため、対応速度が格段に向上します。


エッジAIとクラウドAIの違い

エッジAIとクラウドAI

エッジAIクラウドAIは、ともに人工知能技術を使用しますが、その処理がどこで行われるかという点で大きな違いがあります。

クラウドAIはデータセンターやクラウド上でデータを処理するのに対し、エッジAIはデータの生成源に近いエッジデバイスで直接処理を行います。
クラウドAIの大きな利点はその計算パワーです。データセンターは、複雑なAIモデルを効率的に実行するための高性能ハードウェアを備えています。これにより大量のデータを処理し、進んだ分析を行うことができます。

しかし、このアプローチの代償として、データをクラウドにアップロードする時間が必要であったり、転送速度の遅延や通信コストの増大などのデメリットがあり、リアルタイム処理には適していない場合があります。

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一方で、エッジAIはリアルタイム性を重視します。データが生成される場所に近いところで処理が行われるため、レスポンスタイムが大幅に短縮され、即時性が求められるアプリケーションに最適です。

また、データをクラウドに送信する必要がないため、帯域幅を節約し、通信コストを低減することができます。さらに、データをローカルで処理することで、プライバシーとセキュリティの向上が実現されます。

しかし、エッジデバイスには計算リソースの制限があるため、クラウドAIほど複雑なモデルや大規模なデータセットは扱えません。
このため、その適用シナリオは必要とされる応答の速度、セキュリティの要件、通信環境などによって決まります。

クラウドAIとエッジAIの連携

多くのケースでは、エッジAIとクラウドAIは互いに補完し合い、連携して動作することで最大の価値を提供します。
エッジAIが初期のデータ処理とリアルタイム応答を担い、一方でクラウドAIは収集されたデータの分析を行います。

この連携によって生じる相乗効果は、システムをより効率的でスマートなものに変えることができます。

例えば、機器の状態監視では、エッジAIがリアルタイムで異常を検知し、クラウドAIが長期的な予測保守に役立つデータ分析を行うといった具合です。


エッジAIと生成AI(ローカルLLM)

エッジAIと生成AIの融合は、新たな可能性を示します。
生成AIのローカルでのデータ処理は、プライバシーを守りつつ高速な応答を可能にし、生成AIによってそのデータから新たな価値を引き出します。

これを可能にする技術がローカルLLMです。ローカルLLMは、クラウドではなく**ユーザーの端末上で直接動作する大規模言語モデルです。

このローカルLLMは当初は大きなGPU(高いコンピューター性能)を持たなければなりませんでしたが、NVIDIAの「*Chat With RTX」、NTTからは「tsuzumi」、Microsoftからは「phi-2」など急速に軽量かつマルチモーダルなLLMが登場しています。


エッジAIの主なメリット

エッジAI技術は、従来のAIシステムに比べ多くの利点を提供します。ここでは、エッジAIの代表的なメリットを見ていきましょう。

リアルタイム処理

エッジAIは遅延を最小化するため、データ生成源のすぐ近くで処理を行います。

これにより、ほぼリアルタイムでデータ処理と意思決定が行えるため、迅速なレスポンスが求められる状況に非常に有効です。

通信コストの削減

全てのデータをクラウドに転送する必要がなくなるため、帯域利用料が削減されます。

これは、特に大量のデータが生成されるIoTデバイスの場合に顕著です。

プライバシーとセキュリティの向上

個人情報や機密データをローカルで処理し、厳選した情報のみを転送することが可能なため、セキュリティとデータ保護が向上します。

接続性が不要、または不安定な環境での利便性

インターネット接続が不安定または存在しない遠隔地や災害地域でも、エッジAIを用いれば効果的にデータ処理が行えます。

これらのメリットを通じて、エッジAIはさまざまな産業やアプリケーションに対して高い価値を提供し、効率的でセキュアなデジタル環境の構築に大きく貢献すると見られています。


エッジAIの活用事例

エッジAIの可能性は、実際に様々な業界での具体的な活用事例を見れば明らかになります。以下にいくつかの活用例を挙げてみましょう。

スマートフォン

Google AI を搭載したカスタム設計の Google Tensor G3 チップが支えるGoogle Pixel 8シリーズはエッジAIが搭載されています。生成AI(Gemini)も利用可能です。

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Google Pixel
Google Pixel

自動運転

自動運転達成にエッジAIは必須であるともいわれています。
車載エッジAIシステムは、カメラやセンサーが生成する画像データをリアルタイムで処理し、他の車両、歩行者、自転車、動物などの物体を即座に検出することで、衝突の回避や適切な制御を行います。

Hailoは、エッジAI技術を先導する企業の一つとして、自動運転を含むさまざまなアプリケーションにイノベーションをもたらしています。

https://youtu.be/jBlEXu5UOsY

スマートファクトリー

工場の機械はセンサーを用いて状態を監視し、予測保守を行うことで機械の異常を事前に検知します。
それに加えたAIによる機械の自動制御によって、製造プロセスの最適化を実現します。

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ヘルスケア

ウェアラブルデバイスが患者のバイタルサインをモニタリングし、心拍数、血圧、睡眠パターンなどのユーザーの生体情報をリアルタイムで収集します。

それらの身体データをエッジAIで処理し、健康状態の変化を即座に検出して医療提供者に報告します。

都市インフラストラクチャーの監視

セキュリティカメラや交通管理システムがエッジAIを活用することで、異常事態をリアルタイムに検知し即座に対応を行います。

これらの例からもわかるように、エッジAIは高速なデータ処理と迅速なアクションが要求されるシーンでの活躍が期待されており、この技術によって多くの業界が効率化とイノベーションを実現できるようになっています。


エッジAIのデメリットと課題

エッジAIは多くのメリットを提供しますが、まだいくつかのデメリットと直面している課題も存在します。ここでは、エッジAIを導入する際に考慮すべきポイントを明確にしましょう。

  1. 限られた処理能力
    エッジデバイスはサイズやエネルギー消費が制限されているため、クラウドベースのAIシステムのような強力な計算能力を持つことはできません。
    したがって、より高度な計算を必要とするAI処理を扱うアプリケーションには適していない場合があります。

  2. 開発と管理の複雑さ
    エッジ環境では、多数のデバイスが異なる環境で動作することから、システムを維持するための管理と更新がより複雑になることがあります。

  3. スケーラビリティの制限
    エッジAIシステムは、特定のデバイスに依存するため、より大規模なスケールへの展開が困難になることがあります。

  4. データの断片化
    データが多岐にわたるデバイスで生成され処理されるため、全体的なビューや一貫性のあるデータ管理が難しい場合があります。


これらの課題は、エッジAIの導入を検討する際に十分に考慮しなければなりません。
また、解決策としての新しいテクノロジーが開発されつつあるため、今後これらの問題点も緩和される可能性があります。


エッジAIの将来展望

エッジAIの将来展望イメージ

エッジAIの将来は、技術革新により明るいものとなっています。IoTデバイスの急増と産業のデジタル化推進がエッジAIの重要性を高めており、市場動向を見るとエッジAIソリューションへの投資は増加傾向にあります。
エッジコンピューティング市場は、2020年代半ばまでに数十億ドル規模に達すると予測されており、この成長に伴いエッジAIの需要も拡大していくでしょう。

技術発展の面では、省エネルギーかつ高性能なチップセットや、AIモデルの効率化・最適化手法が進むことで、エッジデバイスの能力は向上しています。

また、5Gの普及により、高速で安定したネットワーク環境がエッジAIの性能をさらに引き上げる要因となると考えられます。

未来のトレンドとしては、エッジAIは「AIの処理能力を社会の隅々にまで広げる役割を果たすこと」が予想されます。
この進展により、スマートシティ、スマートホーム、パーソナライズされた健康管理、環境監視といった多くの場面で革新的な変化を期待できるでしょう。

エッジAIの可能性は広大であり、人類が直面する課題を解決し、より良い生活を創造するための鍵となると考えられています。


まとめ

この記事を通じて、エッジAIの基本概念から、そのメリット、デメリット、そして活用事例に至るまでを解説しました。
エッジAIは迅速なレスポンス、帯域幅の節約、プライバシー保護という点で非常に価値が高い一方で、開発の複雑さや限られた処理能力などの課題も抱えています。

しかし、これらの課題は技術の進歩とともに克服されつつあり、エッジAIは今後さらに多くの業界で重要な役割を担っていくことでしょう。

エッジAIの将来展望は明るく、スマートデバイスや自動化されたシステムがさらに普及する中で、このイノベーティブな技術は絶えず進化し続けるでしょう。
最終的には、エッジAIはビジネスの効率化、新しいサービスの提供、社会課題の解決に不可欠な存在となり、今後の取り組みが非常に期待されます。

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Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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