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GraphRAGとは?仕組みや実装方法、活用事例をわかりやすく解説

この記事のポイント

  • この記事は、クラウドとAIの統合による情報検索技術「GraphRAG」について説明しています。
  • GraphRAGは、従来のRAG技術を拡張して、ナレッジグラフのグラフ構造を利用することで、検索と回答の精度を向上させる技術です。

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

クラウドサービスやAI技術の進化は著しく、特にナレッジグラフと大規模言語モデルの統合は次世代の情報検索に革命をもたらしつつあります。

従来のRAG(Retrieval-Augmented Generation)を拡張し、関連情報間のグラフ構造を活用することで、検索と生成の精度を向上させるこの技術は、コンテキストに即した質問応答や文書生成への応用が期待されます。

本記事では、そんな先進的取り組みの一つである「GraphRAG」について解説します。
さらに、Microsoft Researchが提唱するGraphRAGの概要やその導入手順、RAGとの比較および構築方法までを公開情報に基づいて詳しくご紹介します。

GraphRAGとは

GraphRAGの主要コンポーネントイメージ
GraphRAGの主要コンポーネントイメージ

GraphRAGは、従来のRetrieval-Augmented Generation (RAG)を拡張し、グラフ構造を活用して情報検索と生成の精度を向上させる先進的なアプローチです。このシステムは、単なる文書検索だけでなく、情報間の関連性や階層構造を考慮することで、より文脈に即した正確な応答を実現します。

画像をGraphRAGのコンポーネントのイメージ画像です。
GraphRAGは大きく3つの構成で成り立ちます。

  1. 知識ベース

    • 文書データ: システムの基盤となる生の情報源です。テキスト文書、技術文書、マニュアルなど、様々な形式の文書が含まれます。
    • ナレッジグラフ: 文書から抽出された情報を、関連性や階層構造を持つグラフとして表現します。エンティティ間の関係性を明示的に示すことで、より深い文脈理解を可能にします。

  2. GraphRAG処理

    • 埋め込みベクトル生成: 文書やユーザークエリをベクトル空間に変換し、意味的な類似性を計算可能な形式に変換します。
    • グラフ構造解析: ナレッジグラフを活用して、関連情報間のつながりを分析し、より広い文脈を考慮した情報検索を行います。
    • 文脈情報の統合: 検索された情報とグラフ構造から得られた文脈情報を統合し、包括的な応答生成の基礎を形成します。

  3. 言語モデル

    • 応答生成処理: 統合された情報を基に、ユーザーの質問に対する適切な応答を生成します。文脈を考慮した自然な応答を作成します。

このナレッジグラフの部分がGraphRAGと言われる部分にあたり、情報の検索精度向上します。

ナレッジグラフイメージ
ナレッジグラフイメージ


GraphRAGとRAGの違い

では、GraphRAGとRAGはどのように違うのでしょうか。

【関連記事】
生成AIのRAGとは?その仕組みや作り方、実装方法を解説!

Baseline RAG(従来型のRAG)

従来のRAG(Retrieval-Augmented Generation)は、大規模言語モデルと検索モジュールを組み合わせ、ベクトル検索などで取り出したテキスト断片(スニペット)をLLMのプロンプトに付与して回答や文章生成を行う仕組みです。

両者の比較は以下の通りです。

比較項目 RAG (Retrieval-Augmented Generation) GraphRAG (Graph-based RAG)
基本コンセプト 大規模言語モデル(LLM) + 検索モジュールを組み合わせ、
外部文書を取得して生成
RAGの枠組みを継承しつつ、
文書間・エンティティ間などの関係をグラフ構造として扱う
情報の取得方法 ベクトル検索 / キーワード検索などで
トップk件の文書を取得
グラフ構造(Knowledge Graph、
エンティティリンク、階層構造など)を活用し、
パス探索や近傍ノード取得を行う
情報の入力形式 取得した文書を**並列的(フラット)**にLLMへ入力 グラフ上で必要なサブグラフを抽出し、
関係性や結合情報をLLMへ入力
推論・関係性の扱い 文書同士の関係は明示的に管理されず、
LLMの暗黙的な表現能力に依存
ノード(文書・エンティティ)とエッジ(関係)を
明示的に管理し、論理的関係や
因果関係を推論に活かせる
メリット - 実装がシンプルで導入しやすい
- 多くの応用領域で実用化が進む
- グラフ構造を活かした豊かな推論が可能
- 重複やノイズの少ない情報取得が期待できる
- どこから知識が来たのか可視化しやすい
デメリット / 課題 - 関係性を扱いにくく、複雑な推論には弱い
- トップk件取得で冗長やノイズが混在
- グラフ構築・更新コストがかかる
- 実装が複雑化しやすい
- 大規模なグラフを扱う際のスケーラビリティ課題
代表的なユースケース - 文書検索付きのQAやチャットボット
- FAQ対応 / ニュース記事の要約や引用
- 医療、法務、学術論文など高度なドメイン知識の活用
- エンティティ間の関係が複雑な領域
- 知識グラフベースのQA・分析
成熟度 / 普及度 - 既に多くのプロダクトやサービスで導入
- Hugging Face, LangChain, LlamaIndexなどで標準化
- 研究・PoC段階の実装が増えつつあるが、
正式に「GraphRAG」を名乗る論文や大規模プロジェクトは少ない
位置付け 「外部知識を取り込みつつ、LLMに生成させる」という
シンプルで強力なフレームワーク
RAGの拡張・派生版として、
より構造的な知識と推論を取り入れようとする試み



RAGは単純にトップk件を平面的に扱うのに対して、GraphRAGはグラフ構造を参照しながら必要なノード情報を抽出できます。

GraphRAGは一見すると導入が複雑に見えますが、複雑なドメインや大規模コーパスを正確かつ説明可能に扱う場面では、大きな優位性を発揮するとされています。

以下では、GraphRAG という新しいRAG(Retrieval-Augmented Generation)のアプローチについて、概要から導入手順、Baseline RAG との比較まで、公開されている情報をもとに解説します。Microsoft Researchが提唱するGraphRAGは、大規模言語モデル(LLM)を活用しながら、単なるベクトル検索に頼るだけでは難しかった「複雑な情報の関連付け」や「大規模コーパスの全体理解」を可能にするためのフレームワークです。

GraphRAGのプロセス

GraphRAGのフローは大きくIndexフェーズ(前処理)とQueryフェーズ(実際の問い合わせ)に分かれます。さらに、Prompt Tuning(プロンプト最適化) を合わせることで、より高品質な生成が期待できます。

1 Indexフェーズ(ナレッジグラフの構築と要約)

  1. TextUnitsへの分割
    • コーパス全体を小さめのテキスト断片(TextUnits)に分解し、IDやメタデータを付与。

  2. エンティティ・関係の抽出
    • GPT-4 Turbo などのLLMを使い、テキストからエンティティ(ノード)と、エンティティ間の関係(エッジ)を抽出し、ナレッジグラフを生成。

  3. 階層的クラスタリング(コミュニティ分析)
    • Graph ML(機械学習)手法の一つである「Leiden」などを用いて、関連するエンティティをコミュニティとして束ねる。
    • ノードの重要度に応じて可視化すると、どの領域にどの程度のエンティティが集まっているか一目で把握できる。

  4. コミュニティ要約
    • 各コミュニティに属するエンティティ情報を集約し、LLMでボトムアップに要約する。
    • 結果として、コーパス全体を層状に理解するための「概要」や「サマリー構造」が得られる。

2 Queryフェーズ(質問応答・情報取得)

  • Global Search
    • コーパス全体にかかわる大きな問いを投げる際に、コミュニティ要約を活用して回答を導く。
    • 例:「この全資料の中で一番頻繁に登場する概念と、その背景は何か?」

  • Local Search
    • 特定のエンティティや狭い範囲の情報について問い合わせる。近接ノードや関連概念をたどって回答を作成。
    • 例:「○○という人物に関連する出来事をまとめて」

  • DRIFT Search
    • Local Searchに加え、コミュニティ要約を一緒に読み込み、近傍探索 + コミュニティ視点で検索を行う。
    • より深い文脈や広いコンテキストが必要なときに有効。

3 Prompt Tuning(プロンプト最適化)

  • GraphRAGを最大限活用するには、LLMへのプロンプトの作り方が重要。

  • Microsoft Researchチームはドキュメントで Prompt Tuningガイド を提供し、具体的な最適化手法を提案しています。


GraphRAGの実装方法

ナレッジグラフを構築し、検索した情報を使って質問への回答を生成するまでの流れを実現します。
spaCyというオープンソースNLPライブラリを使います。

1. 環境設定とライブラリのインストール

Google Colabで次のライブラリをインストールします。

!pip install spacy networkx pyvis
  • spacy: 固有表現抽出(エンティティ認識)用
  • networkx: ナレッジグラフの構築・検索
  • pyvis: グラフのインタラクティブな可視化

2. テキストからナレッジグラフを構築

まずは、テキストからエンティティを抽出し、関係性を簡易的にルールベースで作ります。

import spacy
import networkx as nx

# spaCyモデルをロード
!python -m spacy download en_core_web_sm
nlp = spacy.load("en_core_web_sm")

# サンプルテキスト
text = """
Microsoft partnered with OpenAI to integrate GPT-4 into Azure. 
Elon Musk was an early investor in OpenAI. 
OpenAI is headquartered in San Francisco.
"""

# ナレッジグラフの構築
G = nx.DiGraph()

def process_text_to_graph(text):
    doc = nlp(text)
    for ent in doc.ents:
        G.add_node(ent.text, type=ent.label_)  # ノードにタイプを追加

    # 簡易的な関係抽出(主語-動詞-目的語の関係)
    for sent in doc.sents:
        root = [token for token in sent if token.dep_ == "ROOT"]
        if root:
            root = root[0]
            subj = [w for w in root.lefts if w.dep_ in ("nsubj", "nsubjpass")]
            obj = [w for w in root.rights if w.dep_ in ("dobj", "attr", "pobj")]
            if subj and obj:
                G.add_edge(subj[0].text, obj[0].text, relation=root.lemma_)

process_text_to_graph(text)
print("ノード数:", G.number_of_nodes())
print("エッジ数:", G.number_of_edges())

結果

ノード(エンティティ)とエッジ(関係)が抽出され、グラフが構築されます。


3. グラフを検索して関連情報を抽出

次に、ユーザーの質問に基づいてグラフを検索します。

def query_graph(query_entity):
    """
    グラフから、指定したエンティティに関連するノードや関係を取得
    """
    if query_entity not in G:
        return f"'{query_entity}' はグラフに存在しません。"
    
    related_info = []
    for neighbor in G.neighbors(query_entity):
        relation = G[query_entity][neighbor].get("relation", "related_to")
        related_info.append((query_entity, relation, neighbor))
    return related_info

# 質問例
query_entity = "OpenAI"
results = query_graph(query_entity)
print(f"'{query_entity}' に関連する情報:")
for res in results:
    print(f"{res[0]} --[{res[1]}]--> {res[2]}")

結果例

'OpenAI' に関連する情報:
OpenAI --[partner]--> Microsoft
OpenAI --[be]--> San Francisco

4. 簡易的なLLM風の応答生成

検索した結果を基に、生成的な回答を構築します。ここではLLMのように自然な文章を生成する簡易的な例を示します。

def generate_response(entity, relations):
    """
    関係情報を基に自然な回答を生成
    """
    if not relations:
        return f"Sorry, I couldn't find any information about '{entity}'."
    
    response = f"Here's what I found about '{entity}':\n"
    for rel in relations:
        response += f"- {rel[0]} is {rel[1]} {rel[2]}.\n"
    return response

# 回答生成
response = generate_response(query_entity, results)
print(response)

出力例

Here's what I found about 'OpenAI':
- OpenAI is partner Microsoft.
- OpenAI is be San Francisco.

(自然言語化が単純ですが、プロンプトチューニングやルール追加で改善可能です。)


5. グラフの可視化

ダウンロードされるグラフ画像
ダウンロードされるグラフ画像

pyvis を使って、グラフをインタラクティブに表示します。

from pyvis.network import Network
from IPython.core.display import display, HTML

def visualize_graph(G, file_name="graph_rag_example.html"):
    """
    ナレッジグラフをpyvisで可視化し、HTMLで保存および埋め込み表示
    """
    net = Network(notebook=True, height="600px", width="100%", directed=True, cdn_resources="in_line")
    net.from_nx(G)
    
    for node in net.nodes:
        node["title"] = f"Type: {G.nodes[node['id']].get('type', 'Unknown')}"
    
    for edge in net.edges:
        edge["title"] = edge.get("relation", "related_to")
    
    # HTMLファイルとして保存
    net.show(file_name)
    
    # Colab内で埋め込み表示
    with open(file_name, "r") as file:
        html_content = file.read()
    display(HTML(html_content))

# グラフを可視化
visualize_graph(G)

# HTMLファイルのダウンロード
from google.colab import files
files.download("graph_rag_example.html")

このコードを実行すると、graph_rag_example.html へのリンクが出力され、クリックするとグラフをブラウザで対話的に閲覧できます。



これでGraphRAGのイメージがつくのではないでしょうか。
もっと精度を高めたい場合などはお好みのLLMなどでも試してみてください。


ナレッジグラフの主要サービス

ナレッジグラフの構築には様々な方法があります。有名な手法とその特徴をご紹介します。

サービス名 概要 主な用途 特徴
Google Knowledge Graph API Googleの検索データを基にエンティティ情報を取得可能 エンティティ検索、SEO最適化 高精度なエンティティ情報、RESTful API形式
Neo4j 世界的に有名なグラフデータベース ソーシャルネットワーク分析、推薦システム Cypherクエリ言語、クラウド版あり、オープンソースと商用版を提供
AWS Neptune フルマネージドのグラフデータベース ナレッジグラフ構築、セマンティックウェブ対応 Gremlin/SPARQLサポート、高可用性とスケーラビリティ
Microsoft Azure Cosmos DB マルチモデルデータベースでグラフデータもサポート ナレッジグラフ管理、クエリ実行 Gremlin APIによるグラフ操作、グローバル分散型
Ontotext GraphDB セマンティックウェブ技術を活用したトリプルストア(RDFデータベース) SPARQLクエリ、知識ベース管理 推論エンジン搭載、RDFデータ処理の効率化
Grakn.ai (Vaticle) 複雑なデータ関係をモデリングするためのプラットフォーム 階層的知識管理、推論と関係性の発見 Graqlクエリ言語、推論機能
Stardog エンタープライズ向けのナレッジグラフ構築プラットフォーム データ統合、検索と分析 RDF/SPARQLベース、推論とデータ統合の強力なサポート
DBpedia WikipediaのデータをRDF形式で提供するオープンデータプロジェクト オープンナレッジグラフ利用、セマンティックウェブアプリ開発 自由に利用可能なオープンデータ、SPARQLエンドポイントを提供
GraphQL + Apollo Server GraphQLベースのサーバーでリアルタイムデータ取得を実現 ウェブアプリ、API開発 必要なデータだけを取得可能、フロントエンドとバックエンドの連携に最適
OpenAI + GraphRAG OpenAIの大規模言語モデルとGraphRAGの統合フレームワーク 高度な情報処理と応答生成 RAG(Retrieval-Augmented Generation)機能、ナレッジグラフとLLMを統合


特定の要件(例えば、推論機能が必要か、オープンデータを扱うか)に応じて、最適なサービスを選んでください。


MicrosoftのGraphRAGサービス

MicrosoftのGraphRAGサービス
MicrosoftのGraphRAGサービス

GraphRAGは、Microsoftが開発したRetrieval-Augmented Generation(RAG)技術の強化版で、ナレッジグラフを活用して複雑な情報処理と高精度な回答生成を実現します。

2024年12月16日、Microsoftは正式版であるGraphRAG 1.0をリリースしました。

AzureでのGraphRAG構築イメージ
AzureでのGraphRAG構築イメージ

GraphRAG 1.0は、RAG手法を進化させた強力なフレームワークで、以下を提供します。

  • 高度なナレッジグラフ検索・生成機能
  • 開発者・ユーザー双方に配慮した使いやすさ
  • コスト効率とパフォーマンスの向上



AI総合研究所はMicrosoft環境での開発を専門としています。AI開発〜導入までを一気通貫で支援することが強みであり、Azure構築・システムインフラの開発までサポートいたします。
ぜひお気軽にご相談ください。

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GraphRAGの活用事例のご紹介

GraphRAGのユースケースについて、ご紹介します。

1. 企業内情報検索システム

目的: 社内の膨大な文書、レポート、メールデータなどから、効率的に情報を検索・生成する。

課題:

  • 社内ドキュメントが多岐にわたる(例: 法務、営業、技術レポートなど)。
  • 情報が分散しており、従来の検索システムでは重要な関連性を見逃しがち。

GraphRAGによる解決方法:

  1. ナレッジグラフ構築:
    • 社内ドキュメントからエンティティ(人、プロジェクト、技術用語など)とその関係性を抽出。
    • 「契約書中の重要条項」や「プロジェクトに関与した人物・部門」をグラフ化。

  2. 検索と生成:
    • クエリ(例: 「契約条件に関連する過去のプロジェクト」)に対し、関連ノードをグラフから検索。
    • 必要な情報を基にLLMを用いて要約や推論を生成。

結果:

  • 契約書や議事録などの複雑な情報を効率よく整理し、意思決定が迅速化。
  • 「誰が何をしたか」といった重要な関係性を見つけやすい。

2. 科学研究支援

目的: 膨大な科学論文やデータセットをもとに、新たな発見や洞察を得る。

課題:

  • 各分野で生成される研究データが膨大かつ多様(例: 論文、特許、実験データ)。
  • 関連研究を網羅的に分析するのに時間がかかる。

GraphRAGによる解決方法:

  1. 文献のナレッジグラフ化:
    • 科学論文から、研究テーマ、著者、手法、結果を抽出し、グラフとして構造化。
    • 関連するトピックや引用関係をグラフで明示。

  2. LazyGraphRAGの活用(コスト削減):
    • 必要な論文やデータセットがクエリで指定された場合のみ詳細情報を取得。
    • 不必要な大規模データ処理を回避。

  3. 生成型応答:
    • 「このテーマにおける最新の進展は?」といった質問に対し、関連研究をまとめた要約を生成。

結果:

  • 論文検索やレビューにかかる時間を大幅に削減。
  • 新たな研究テーマや未解決課題を効果的に発見。

3. 製品開発およびカスタマーサポート

目的: 製品の設計からサポートまで、顧客対応や改善を迅速化。

課題:

  • 製品マニュアル、FAQ、過去のサポート履歴が散在。
  • 顧客の質問に迅速かつ正確に回答するのが難しい。

GraphRAGによる解決方法:

  1. カスタマーデータのグラフ化:
    • FAQ、過去のサポート履歴、エラーログを統合し、問題とその解決方法の関係をグラフ化。
    • 例: 問題「接続エラー」→ 解決策「リセット手順を試す」「ファームウェアを更新する」。

  2. 応答生成:
    • 問題の詳細(例: モデル番号、エラーコード)をクエリとして入力。
    • グラフから類似の問題と解決策を検索し、LLMで自然な応答を生成。

  3. フィードバックの統合:
    • 顧客から得られたフィードバックをリアルタイムでデータに統合し、ナレッジグラフを更新。

結果:

  • 顧客対応の効率化と満足度の向上。
  • 製品改善のためのデータ基盤を強化。

4. 医療データの管理と分析

目的: 医療記録や臨床研究データから重要な知見を抽出。

課題:

  • 医療データは多岐にわたり、構造化されていない場合が多い。
  • 医療専門家が必要な情報を迅速に得るのが難しい。

GraphRAGによる解決方法:

  1. 電子カルテ(EHR)のナレッジグラフ化:
    • 患者データ(診断、治療、投薬履歴)をグラフ化し、診断と治療効果の関係を可視化。
    • 例: 「患者A → 糖尿病 → インスリン治療 → 改善」。

  2. 症例ベースの検索:
    • 「類似した症例で成功した治療法は?」といった質問に、関連ノードを基にLLMが回答生成。

  3. データ更新と継続的分析:
    • 新たな症例が追加されるたびに、インクリメンタルインジェスト機能でグラフを更新。
    • コストを最小限に抑えながら最新情報を保持。

結果:

  • 患者ケアの質を向上。
  • 臨床試験や研究活動の効率化。

5. 教育分野での応用

目的: 大量の教育コンテンツから、パーソナライズされた学習体験を提供。

課題:

  • 学習者ごとの理解度や進捗に応じたコンテンツ提供が難しい。
  • 教材やリソースが分散している。

GraphRAGによる解決方法:

  1. 教材のグラフ化:
    • 学習トピック(例: 数学の方程式、歴史の重要事件)と関連教材(講義資料、動画、問題集)をグラフ化。
    • トピック間の関連性(「微分 → 積分」)を明示。

  2. 学習者に応じた検索:
    • 学習者の進捗データを基に、次に学ぶべきトピックや参考教材を提案。

  3. 質問応答型学習支援:
    • 「ピタゴラスの定理の応用例を教えて」などの質問に、関連教材とともに応答を生成。

結果:

  • 学習体験のパーソナライズ化を実現。
  • 効率的な学習リソース管理と提供。

このように知識を必要とする場面で多く活用が期待されます。


まとめ

  • GraphRAG は、RAGを「グラフ構造 + コミュニティ要約」で高度化し、複雑な情報を扱うQA大規模コーパスの全体理解をより高精度かつ説明可能にする技術です。
  • 導入を検討する際は、Prompt Tuningクラスタリング手法の最適化などをあわせて行うことで、より高いパフォーマンスを引き出せるでしょう。

AI総合研究所ではGraphRAGやRAGを用いたAI開発、データベース構築の支援を行っています。
RAG構築に興味のる企業の方はお気軽にご相談ください。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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