この記事のポイント
- プライベートネットワーク内のリソースをインターネットに安全に接続。VNet内のリソースが単一のパブリックIPを共有
- Azure Portal上で簡単に設定可能。サブネットへの関連付けで自動的にルーティングを構成
- ゼロトラストセキュリティモデルに基づく高度なセキュリティを提供
- 99.99%の稼働率と最大100Gbpsのデータ転送。最大16個のパブリックIPで大規模環境に対応
- 仮想デスクトップ、ハイブリッド接続、複数サービスのトラフィック集約など多様な活用シーンに対応
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
インターネット接続の安全性を高めつつ、効率的なトラフィックの管理を実現するAzure NAT Gatewayについて探求してみませんか?
本記事では、プライベートIPアドレスを持つリソースが外部と通信する際に役立つAzure NAT Gatewayの役割や設定方法、高いセキュリティとパフォーマンスを誇るその特徴、料金体系、そして実際の活用シーンまでを幅広く解説いたします。
Azure NAT Gatewayの基本から応用までを押さえることで、クラウド環境におけるアウトバウンド接続のセキュリティとコストパフォーマンスを最適化するための知識を得ることができるでしょう。
Azure NAT Gatewayとは
Azure NAT Gatewayは、プライベートネットワーク内のリソースをインターネットに安全に接続するためのサービスです。プライベートIPアドレスを持つリソースが、NAT Gatewayに割り当てられたパブリックIPアドレスを使用して外部と通信できるようにします。
Azure NAT Gatewayイメージ
参考:Azure
今回は、セキュアで効率的なインターネットアクセスのために必要なNAT Gatewayについてご紹介していきます。
Azure NAT Gatewayの特徴とメリット
では、ここからAzure NAT Gatewayの特徴とメリットについてご説明します。
設定が簡単
設定と管理が非常に簡単です。Azure Portal上で数回クリックするだけで自動的にセットアップが完了し、サブネットに関連付けるだけで自動的にルーティングが設定されます。
さらに、NAT GatewayはMicrosoftが完全に管理するため、ユーザー側でのメンテナンスが不要です。
ゼロトラストセキュリティモデルに基づいた高いセキュリティ
Azure NAT Gatewayは、ゼロトラストセキュリティモデルに基づいた高いセキュリティを提供します。
具体的な内容は次の3つです。
ゼロトラストセキュリティモデルとは、「何も信頼しない」ことを基本としたセキュリティの考え方です。外部からの接続だけでなく、内部の接続も含めて、全てのアクセスやデータのやり取りを常に検証します。
- インバウンド接続の防止: NAT Gatewayは、アウトバウンド接続(外部への接続)のみを許可し、外部からの接続は防止します。
- ネットワークセグメンテーション: VNet内のリソースを適切に分離し、セキュリティを強化。
- 最小権限の原則: 必要最小限のアクセス権限のみを付与することで、セキュリティリスクを最小化します。
高い可用性と回復性、スケーラビリティ、パフォーマンス
Azure NAT Gatewayは、大規模な企業環境でも安定したサービスを提供します。その主な理由は以下の通りです。
- 可用性(Availability): 99.99%の稼働率を保証。
- スケーラビリティ(Scalability): 最大16個のパブリックIPアドレスを使用し、増加するトラフィックに対応可能。
- パフォーマンス(Performance): 100Gbpsの高速データ転送が可能。
- 自動スケーリング(Auto-scaling): トラフィックの増加に応じて、自動でシステムの処理能力を調整。
Azure NAT Gatewayの仕組みと使い方
では、次にAzure NAT Gatewayの基本的な仕組みと使い方について解説します。
Azure NAT Gatewayの仕組み
NAT Gatewayを設定する際、次の3つを指定する必要があります。
- 仮想ネットワーク(VNet): NAT Gatewayを使うネットワークを指定します。
- サブネット: NAT Gatewayが適用されるサブネットを選びます。
- パブリックIPアドレス: インターネットに接続するためのIPアドレス。
NAT Gatewayの基本的な動作フロー
NAT Gatewayの基本的な動作フローは次の通りです。
1. 仮想ネットワーク(VNet)内のリソースがインターネットに接続しようとする。
2. そのトラフィックがNAT Gatewayを経由する。
3. NAT GatewayがリソースのプライベートIPをパブリックIPに変換する。
4. 変換されたトラフィックがインターネットに送信される。
5. インターネットからの応答トラフィックは再びNAT Gatewayを経由し、元のプライベートIPに変換されてリソースに戻ります。
こうした仕組みにより、安全で効率的なアウトバウンド接続が可能になるのです。
作成手順
さて、ここでNAT Gatewayの具体的な作成手順についてご紹介します。
ここでは、
パブリックIP作成
↓
Azure NAT Gateway作成
という流れで説明をしていきます。
ステップ1:パブリックIP作成手順
- Azureポータルにアクセスし、Azureアカウントでサインインします。
* Azureポータル画面*
※前提準備として、Azureアカウントの作成を行ってください。
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➡️Azure Portalとは?操作方法やメリットをわかりやすく解説!
- 上部にある検索ボックスに、①「パブリックIPアドレス」と入力し、②検索結果の [パブリックIPアドレス] を選びます。
検索画面
3.「作成」をクリック。
作成ボタン
- 基本タブにおいて以下(①~⑪)を編集し、⑫「確認・作成」をクリックしパブリックIPアドレスを作成します。
基本タブ入力画面
基本タブ入力画面2
確認作成画面
ステップ2:Azure NAT Gateway作成手順
- 「リソースの作成」よりNATで検索し 「NAT ゲートウェイ」の作成をクリック
NAT検索画面
- 基本タブにおいて以下(①~④)を編集したら、⑤「次: 送信IP」をクリック。
NAT入力画面
- ①送信IPタブにおいて作成したパブリックIPアドレスを入力し、②「次: サブネット」をクリック。
送信IPタブ
-
サブネットタブにおいて①②を編集します。
仮想ネットワーク : Azure NAT Gatewayを作成するVNETを選択
サブネット名 : Azure NAT Gatewayの機能を使用するサブネットを選択
サブネットタブ
- ③「確認および作成」をクリックしAzure NAT Gatewayを作成します。
Azure NAT Gatewayの料金体系
では、ここからAzure NAT Gatewayの料金体系についてご説明します。
Azure NAT Gatewayの料金体系は、リソース使用時間とデータ処理の2つの要素で構成されています。
-
リソース時間:
NAT Gatewayが有効な間、1時間あたり ¥6.50318 の料金が発生します。 -
データ処理:
NAT Gatewayを介して送信および応答データが処理されるごとに、1GBあたり ¥6.50318 の料金が課せられます。
また、データ処理料金に加えて、帯域幅の料金も別途発生します。
最新の正確な料金情報は、Azure公式ウェブサイトで確認してください。
Azure NAT Gatewayの活用シーン
最後に、Azure NAT Gatewayが適している具体的な活用シーンを、ご紹介します。Azure NAT Gatewayは以下のように様々な場面で利用されています。
仮想デスクトップ環境からのインターネット接続
Azure NAT Gatewayは、Azure Virtual Desktop(AVD)や仮想デスクトップ環境(VDI)で活用できます。構成例は次のとおりです。
構成例:
AVD環境
└── VNet
├── デスクトップセッションホストサブネット
│ └── 仮想マシン(複数)
└── NAT Gateway
└── パブリックIPアドレス
AzureからオンプレミスネットワークへのアウトバウンドNAT
Azureの仮想ネットワークからオンプレミスのネットワークへ接続するとき、NAT Gatewayを使って通信を管理する方法もあります。
構成例:
Azure
└── VNet
├── アプリケーションサブネット
│ └── 仮想マシン(複数)
└── NAT Gateway
└── パブリックIPアドレス
└── ExpressRoute/VPN Gateway
└── オンプレミスネットワーク
複数のAzureサービスからのアウトバウンドトラフィックの集約
Azure NAT Gatewayを使うと、複数のAzureサービス(例えばAzure Functions、Azure App Service、Azure Kubernetes Service)からのインターネットアクセスを一元的に管理できます。こうすることで、すべてのサービスが共通のパブリックIPアドレスを使用し、セキュリティポリシーを統一できます。
また、トラフィックの監視や制御が簡素化されます。
構成例:
Azure
└── VNet
├── App Serviceサブネット
├── AKSサブネット
├── Functionsサブネット
└── NAT Gateway
└── パブリックIPアドレス(複数)
└── インターネット
まとめ
本記事では、Azure NAT Gateway(Network Address Translation Gateway)について、その概要、特徴とメリット、仕組みと使い方、料金体系、および具体的な活用シーンを解説しました。
Azure NAT Gatewayは、プライベートな仮想ネットワーク内のリソースからインターネットへの安全なアウトバウンド接続を提供するマネージドサービスです。簡単な設定、高いセキュリティ、優れたパフォーマンスと可用性が特徴であり、様々なシナリオで効果的に活用できます。
Azure NAT Gatewayを適切に利用することで、コスト効率の良いインターネットアクセスソリューションの実現に役立ててください。
この記事が、皆様のお役に立てたら幸いです。