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脳活動からの高忠実度画像再構築を実現するMindEye2開発の新機軸

この記事のポイント

  • この記事は、MedARCとStability AIが開発した「MindEye2」という新技術について説明しています。
  • MindEye2は、fMRIデータから個人が見た画像を高忠実度で再構築することが可能です。
  • わずか1時間のトレーニングデータで効果的な画像生成を行うことができ、脳-コンピュータインターフェースへの応用も期待されています。
  • 開発過程はオープンリサーチアプローチを採用し、全過程がGitHubを通じて公開されています。

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

脳の活動を読み取り画像を生成する技術は、神経科学と人工知能との融合により着実な進歩を遂げています。

このたび、MedARCとStability AIをはじめとする複数の研究機関が新たな飛躍を成し遂げ、「MindEye2」を開発しました。
この技術は、fMRIデータを基に個人が見た画像の高忠実度な再構築を行うことが特徴です。画期的なのは、新参加者に対する少ないデータ量・短時間でのモデルの微調整が可能である点にあり、一時間のトレーニングデータのみで効果的な結果を出すことが可能です。

臨床診断や脳-コンピュータインターフェースへの応用が期待される本技術の概要とその潜在力、開発プロセスについて詳しくご紹介します。

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脳活動からの高品質画像生成:MindEye2の開発

MedARCとStability AIを含む複数の研究機関が共同で、脳活動に基づく画像を生成する先進的な技術「MindEye2」を開発しました。この技術は、脳のfMRIデータを用いて、その人が見た画像を再構築するものです。

MindEye2

特に注目すべき点は、新しい参加者のデータでわずか1時間のトレーニングを行うだけで、モデルを微調整できるという点です。これは、以前のモデルと比較して大幅に効率化された手法であり、少ないデータから高忠実度の画像を再現することが可能になるという大きな進歩を意味します。

この技術は、将来的には臨床応用や脳-コンピュータインターフェースにおいて、新しい診断ツールやコミュニケーションツールとして活用される可能性があります。

MindEye2の機能とその応用可能性

MindEye2の機能は、fMRIで捉えた脳活動を特定の空間(CLIP空間)にマッピングすることで、MRI装置内で見た画像を再構築します。これにより、実際に見た画像に非常に近い画像を生成することができます。また、共有被験者モデリングを活用することで、さまざまな個人の脳データを使用して学習し、新しい参加者のデータへと迅速に適応することが可能です。

この技術は、神経科学と機械学習を統合した研究の成果であり、一般化可能な脳モデルの作成という課題を克服しています。これにより、神経条件を持つ患者に対して、新しいコミュニケーション手段を提供することが期待されます。

MindEye2のトレーニングと評価プロセス

MindEye2は、8人の人間参加者から得られた「Natural Scenes Dataset」を用いてトレーニングされています。このデータセットには、自然な画像が含まれており、それぞれの画像に対する被験者の脳活動がfMRIで記録されました。

記録されたデータは、特定の画像を再構築するために使用されます。このプロセスには、共有被験者潜在空間へのデータのマッピングや、CLIP空間からピクセル空間への変換など、新しいアプローチが取り入れられています。

これにより、参加者が実際に見た画像をより正確に再現することが可能になります。

MindEye2のトレーニングプロセス
転移学習により新規被験者への高速適応を実現

トレーニングデータと画質の関係

MindEye2の開発においては、トレーニングデータが画質に与える影響も重要な研究課題でした。このモデルは、以前の方法と比較して、ずっと少ないトレーニングデータで高品質な画像生成を実現しています。

具体的には、他の被験者のデータで事前にトレーニングされた後、新しい参加者のためにわずか1時間のトレーニングデータで微調整が行われます。この結果、トレーニングに使用されるデータ量が増えるにつれて、モデルの再構築性能が向上することが明らかになっています。


これは、特に脳-コンピュータインターフェースなどの分野において、臨床応用への道を開くものです。

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複数モデルの比較検証で最適手法を探索

透明性と共同研究の重要性

MindEye2の開発は、透明性を重視し、オープンリサーチアプローチを採用して行われました。プロジェクトの全過程は、GitHubリポジトリを通じて公開され、研究ディスカッションやビデオ会議も一般に公開されています。
➡️プロジェクトの公式HP:MedARC Neuroimaging & AI Lab

このようなオープンリサーチは、多様な専門知識を有する国際的なボランティア主導のチームによって支えられており、機械学習や医療研究への参入をさらに民主化しています。

このアプローチは、研究開発の進展を促進し、より多くの人々が参加しやすい環境を作り出しています。

出典:stability AI

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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