この記事のポイント
- この記事はNVIDIAのGrace Hopper Superchipが金融リスク管理をどのように改善しているかを解説しています。
- Murex社のプラットフォームMX.3において、リスク評価と管理の効率性が向上しました。
- Superchipの導入により、高速な計算性能と低い電力消費を実現し、グリーンITに貢献しています。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
金融機関にとってリスク管理とその効率性は極めて重要です。
そんな中、NVIDIAの最新技術であるGrace Hopper Superchipが、金融リスク管理のパフォーマンスを劇的に向上させ、省エネルギー化にも寄与している革新的な動きが進んでいます。
この記事では、金融技術会社Murexが提供する取引およびリスク管理プラットフォームMX.3にこの新チップを導入し、デリバティブ契約のリスク評価や、複雑な市場リスクの高速化、電力消費の削減に成功した事例を紹介します。
Murexの取り組みとNVIDIA Grace Hopper Superchipの可能性を詳しく見ていきましょう。
NVIDIA Superchipが金融分析を加速
2024年5月31日、金融技術会社Murexは、NVIDIAの新しいCPUである「Grace Hopper Superchip」を使って金融分析の性能を向上させています。
この新しいチップを使うことで、デリバティブ契約のリスク評価や管理が速く、正確に行えるようになります。
Murexは取引およびリスク管理ソフトウェアのリーディングカンパニーで、世界中の銀行や金融機関が同社のプラットフォームMX.3を利用しています。
NVIDIAの技術を採用したことで、Murexはパフォーマンスの向上だけでなく、消費電力の削減にも成功しています。
Murexのプラットフォームは、クレジットリスクや市場リスクの計算、XVAなどの複雑な分析にも使われており、Grace Hopperの導入によってこれらの処理が大幅にスピードアップされることが期待されます。
NVIDIA Grace HopperによるMX.3のリスク管理の強化
金融機関は、迅速かつ正確なリスク管理を行うために高性能コンピューティングを必要としています。
MurexのMX.3プラットフォームは、クレジットリスク、市場リスク、XVA(評価調整)などの広範なリスク管理機能を提供しており、これにNVIDIAのGrace Hopper Superchipを組み込むことで、これらの計算をより効率的に行えるようになりました。
実際、MX.3でのXVAワークロードをGrace Hopperで実行するテストでは、従来のCPUシステムに比べてエネルギー消費を4分の1に削減しつつ、パフォーマンスを7倍に向上させる結果が出ました。
これは金融業界におけるグリーンITへの大きな一歩と言えるでしょう。
Grace Hopperのパフォーマンス
Grace HopperによるFXバリアオプションの価格設定の効率化
Murexは、FXバリアオプションの価格設定にもNVIDIA Grace Hopperを活用しています。
FXバリアオプションは、特定の条件に基づいて価値が変動する複雑な金融商品です。MurexはGrace Hopperを使って、自社の最新の確率的ローカルボラティリティモデルを実行しました。
これにより、従来のIntel Xeon Gold 6148プロセッサよりも2.3倍速い計算が可能になり、同時に電力効率も5倍に改善されるという結果を得ています。
NVIDIA Grace CPUの導入により、よりコスト効率が良く、エネルギー消費も少ない計算が実現しており、金融機関にとっては大きなメリットとなります。
以上の点から、NVIDIAの新しいSuperchipであるGrace Hopperは、金融分析の分野において高性能とエネルギー効率の両方を提供し、資本市場における定量的アナリティクスの新たなスタンダードを作り上げていくことが期待されます。
出典:NVIDIA