この記事のポイント
- この記事は、MITによって開発された「GelPalm」というロボット用触覚センサーについて説明しています。
- GelPalmはゲルを用いて人間の手の感触を再現し、物体との相互作用を高精度で捉えることが可能です。
- また、GelPalmは義肢や医療用途など様々な分野での応用が期待されている、多機能で自然な動作を実現する末端エフェクタです。
- 開発課題として、カメラベースのセンサーを統合することの難しさや利便性を担保しつつ感覚技術を改善することが挙げられています。
- この技術研究は国際ロボティクス・オートメーション会議で発表され、トヨタ研究所やアマゾンサイエンスハブなどの支援を受けています。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
最先端のロボット技術を追求するなか、MITの研究チームが、人の手の感触を模倣した革新的な触覚センサー「GelPalm」を開発しました。
ゲルベースの柔軟な素材を用い、特殊カラー照明で物体との相互作用を捉えるこの技術は、協力作業から義肢、医療用途に至るまで幅広い応用が期待されています。
この記事では、人間のような感覚を持つロボットの手を生み出す可能性を秘めたGelPalmの仕組みや応用分野について詳しく解説します。
感覚技術を統合する過程の課題にも触れつつ、研究成果をサポートする複数の機関の情報も紹介しており、ロボットの手の未来を形作る重要な一歩と言えるでしょう。
GelPalm:人間の手の感触を模倣するロボット技術
MITのコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)の研究チームが開発した「GelPalm」とは、人間の手の感触を再現する、高度な触覚センサーを備えたロボットの手のひらの新技術です。
このセンサーはゲルベースで、柔軟性に富み、人間の手の柔らかく変形しやすい性質から着想を得ています。
特殊なカラー照明技術を使い、赤、緑、青のLEDで物体を照らし、カメラを用いてその反射を捉えます。
この方法により、ロボットが精密なインタラクションを行うための詳細な3D表面モデルを生成することができます。
GelPalmに加えて、同様のセンサー技術を使用した柔軟な素材のロボット指、通称「ROMEO」も開発されており、これにより物体との接触面積が増え、より包括的な掴みを可能にしています。
GelPalmの応用と将来展望
GelPalm技術は、人間とロボットの協力作業、義肢、医療用途で人間のような感覚を持つロボットの手など、様々な応用が考えられています。
以前のロボットの手の設計は指の器用さを高めることに焦点を当てていましたが、GelPalmはより人間らしく、多様なタスクを自然にこなす末端エフェクタ(ロボットの手先)を作成することに重点を置いています。
サンドラ・Q・リウ氏(MIT卒業生、CSAIL所属)がこのシステムのリードデザイナーとして、GelPalmを開発しました。
彼女は将来、より高度なロボットの手を開発することを望んでおり、この技術の低コストかつ簡単な製造方法が、より多くの人々に革新と探求を促すと考えています。
GelPalm開発における課題と未解決の問題点
GelPalmを開発する過程で、感覚技術を手のひらに十分に統合することが課題となりました。
カメラベースの触覚センサーを使用することで、大きさや柔軟性に関する問題が生じています。現在の技術では、設計や機能性のトレードオフなしに広範なカバレッジを実現することが容易ではありません。
これを解決するためには、鏡のためのより柔軟な素材の開発や、機能性を維持しつつ実用性を損なわないセンサー統合の向上が必要です。
この研究は、国際ロボティクス・オートメーション会議(ICRA)で発表され、トヨタ研究所、アマゾンサイエンスハブ、SINTEF BIFROSTプロジェクトなどからの支援を受けています。
出典:MIT