この記事のポイント
- Azure ChatGPTは、Microsoft AzureのOpenAI Serviceを通じて提供されるChatGPT APIサービス
- OpenAIのChatGPTと比べ、セキュリティ強化、カスタマイズ性向上、他Azure サービスとの統合が可能
- Azure OpenAI Studioを使用して、システムメッセージの設定やモデルのファインチューニングが可能
- Temperatureパラメータの調整により、AIの出力の創造性や一貫性をコントロール可能
- 企業は Azure ChatGPTを活用することで、セキュアかつ柔軟なAIチャットボットを業務に組み込める
監修者プロフィール
坂本 将磨
AI導入で企業DXを推進する人| Microsoft AIパートナー|東工大修士(領域:NLP,金融工学)|NHK放送技術研究所(AI,ブロックチェーン)→シンガポールでweb3企業経営→LinkX Japan株式会社代表
ChatGPTに代表される大規模言語モデルは、自然言語処理の分野に革新をもたらしつつあります。特にChatGPTは、高度な会話能力と汎用性の高さから、様々な領域での活用が期待されています。
しかし、企業がChatGPTを導入する際には、セキュリティやコンプライアンスの観点から課題があります。こうした課題を解決し、ChatGPTを安全かつ効果的に活用できるのが、MicrosoftのAzureが提供する「Azure OpenAI Service」です。
本記事では、Azure OpenAI Service経由で利用できる、「Azure ChatGPT」の特徴や利用方法、実際の利用シーンなどを詳しく解説します。 このサービスを利用することで、企業はChatGPTを安全かつ柔軟にカスタマイズし、自社のニーズに合わせて活用できるのです。
ChatGPTとAzureの組み合わせがもたらす、業務効率化とイノベーション創出の可能性を探っていきましょう。
Azureの基本知識や料金体系、利用方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
➡️Microsoft Azureとは?できることや各種サービスを徹底解説
目次
Azure ChatGPTとは
Azure ChatGPTは、Microsoft Azureが提供するクラウドベースのAIサービスAPIの一つです。このAPIを利用することで、OpenAIが開発した先進的な自然言語処理モデルであるChatGPTを、より柔軟かつ安全に活用することができます。
Azure OpenAI Serviceは、ChatGPTのようなAIモデルを組み込んだアプリケーションやサービスを、チームで効率的に開発・導入する際にも大きな役割を果たします。
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➡️Azure OpenAI Serviceとは?その機能や料金、活用方法を解説
Azure ChatGPTとChatGPTの違い
Azure OpenAI Serviceを通じてChatGPTを利用することで、OpenAIのインフラ経由では得ることのできない次のような恩恵を得ることができます。
ホスティングとインフラの違い
ChatGPTはOpenAIが自社のインフラでホストしており、APIを通じて利用可能です。一方、Azure ChatGPTはMicrosoft Azureのインフラ上でホストされ、Azure OpenAI Serviceを介して利用できます。
機密情報の保護
企業がChatGPTを導入する際に重要になるのが、セキュリティとコンプライアンスの問題です。
Azure OpenAI ServiceはMicrosoft Azureのセキュリティとコンプライアンス基準に準拠しているため、データの暗号化、アクセス制御、監査ログなどのセキュリティ機能が提供されています。
そのため無料公開されているChatGPT等のサービスとは環境が異なり、企業や組織はデータ保護基準を満たしながらAIモデルを利用できます。
カスタマイズ性と他サービスとの統合
Azure ChatGPTの大きな強みは、カスタマイズ性の高さです。Azure OpenAI Serviceを通じて、企業独自のデータを用いたファインチューニングが可能となっており、企業特有のニーズに合わせてモデルを最適化できます。また、Azure上の他のサービスとのシームレスな統合が可能で、企業のワークフローに組み込みやすいのも大きなポイントです。
料金体系とサポート
料金体系については、ChatGPTがOpenAIの設定した料金体系に基づくのに対し、Azure ChatGPTはAzureの料金体系に基づいて利用料金が発生します。Azureでは企業の利用状況に応じて柔軟に料金プランを選択できるため、コストの最適化が図れます。
さらに、Azure ChatGPTではMicrosoftのエンタープライズレベルのサポートを受けられるため、導入や運用における問題解決もスムーズです。
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➡️Azure OpenAI Serviceとは?その機能や料金、活用方法を解説
Azure ChatGPTの使い方
Azure OpenAI Serviceのウェブ上の統合開発環境であるAzure OpenAI Studioを利用して、実際にAzure ChatGPTを利用しつつ解説していきます。
Azure ChatGPTの構築例
Azure OpenAI Studioのチャットプレイグラウンドでは、ChatGPTの機能を試したりチューニングすることが可能です。
実際にチャットプレイグラウンドを利用していきましょう。簡単にプロンプトを入力してみます。
ChatGPTと同じように、ユーザーの要望に適切に返答ができています。
システムメッセージの設定
Azure OpenAI Studioではシステムメッセージを設定することで、モデルに特定の役割や性格を持たせることができます。ここでは簡単なテンプレートを利用して、システムメッセージを試していきます。
システムメッセージには、AIモデルに特定の役割や性格を持たせるための指示を直接記述できます。今回は、「シェイクスピア風の文章生成アシスタント」というテンプレートを適用しました。
このシステムメッセージにより、モデルはあたかもシェイクスピアのような文体で文章を生成するよう命令されます。
ここで次のようなプロンプトを入力します。
Please write a short text turning down an invitation to dinner.
*日本語訳:ディナーへの招待を断る短いテキストを書いてください。*
これに対する返答をデフォルトと、シェイクスピア風の場合で比べます。
- デフォルトの場合の出力例
親愛なる(名前)へ、
お元気でお過ごしでしょうか。この場をお借りして、夕食へのご招待に感謝の意を表したいと思います。このようなお誘いをいただき、本当にありがとうございます。
しかしながら、(日付)の夕食にご一緒できないことを残念に思います。残念ながら、先約があり、日程の変更ができません。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
ご理解に心から感謝し、近いうちにまたお会いできる機会を見つけたいと思います。私のことを気にかけてくださってありがとうございます。
- シェイクスピア風の場合
公正で高貴な友人よ、
糧と歓楽の宴への ご招待に感謝します 残念なことに、事情により、私はこの喜ばしい機会に参加することができない。汝と食卓を共にしたいのはやまやまだが、先約があるため、汝の許しを請わねばならない。
またの機会に、私たちの魂は、笑いと歓喜に満ちた豊かな食事を囲んで交わることができるかもしれない。それまでは、汝の親切な招待に心から感謝する。
結果からわかる通り、生成される文章のスタイルが大きく変化していることがわかります。
このように、システムメッセージを適切に定義することで、AIモデルに目的に応じた特定の役割を持たせることが可能になります。
モデルのファインチューニング
モデルのファインチューニングを行うことでも、モデルをより特定のタスクに特化させることができます。こちらも先ほどと同様に、にAzure OpenAI StudioのChatGPTを使って効果を試してみたいと思います。
Azure OpenAI Studioでは、モデルの出力をコントロールするための調整可能なパラメータとして、「Temperature」が用意されています。
Temperatureの値を高く設定すると、AIモデルはより多様で予測不可能な応答を生成するようになり、創造性の高い出力を得ることができます。反対に、Temperatureの値を低く設定した場合、モデルは確率の高い応答を選択する傾向が強まるため、より一貫性のある予測可能な出力が得られます。
そこで、先述のプロンプトを用いて、Temperatureのデフォルト値である0.2から1.0に変更し、再度文章生成を行いました。
親愛なる(名前)へ、
お元気でお過ごしでしょうか。夕食へのご招待、本当にありがとうございます。私のことをお気遣いいただき、本当に光栄です。
しかし、残念なことに、(日付)の夕食に参加することができません。不測の事態が発生したため、私事で至急対応しなければならないことがあります。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
ご一緒させていただき、美味しいお食事をご一緒できればと心から願っております。皆様のご理解に深く感謝し、近いうちにディナーの予定を変更できることを願っております。
そして、喜びと笑いに満ちた素晴らしい夜をお過ごしください。
生成された文章を比較すると、Temperatureを1.0に設定した場合、断る際の表現がより自然で人間らしいニュアンスを含んでいることがわかります。これは、Temperatureの調整によってモデルのファインチューニングを行った効果であると言えます。
Azure ChatGPT APIキーの取得方法と料金
Azure OpenAI Service の APIによって外部のソフトウェアなどからChatGPTのモデルにアクセスすることができます。
APIの呼び出しはpythonのコードで簡単に行うことができ、これによってChatGPTを利用したアプリケーションの開発などが可能になります。
Azure OpenAI ServiceのAPIの利用に関してはこちらの記事をご覧ください。
➡️Azure OpenAIキーの取得方法と利用手順をわかりやすく解説
まとめ
本記事では、ChatGPTの概要から始まり、Azure OpenAI Serviceとそれによって提供される生成AIモデルとその利点について説明しました。
また実際にAzure OpenAI Studioを使ってチャットボットの機能やそのカスタマイズの柔軟性を確認しました。
Azure OpenAI Serviceによって提供されるChatGPTによって、企業はより柔軟にAIチャットを業務に組み込んでいくことができるでしょう。
Azure OpenAI Serviceや他のAI技術のより詳しい情報が知りたい方はAI総合研究所の関連記事もご覧ください!