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バックオフィスDXとは?そのメリットや課題、成功事例を徹底解説

この記事のポイント

  • この記事ではバックオフィスDXについて述べられています。
  • バックオフィスDXは、経理や人事、事務管理などの業務プロセスのデジタル化と効率化を指します。
  • 効率化やコスト削減、迅速な意思決定などが主なメリットとして挙げられています。
  • バックオフィスDXは、労働力不足や競争の激化、コンプライアンス要件の厳格化に対応するために必要です。
  • 実際の成功事例を取り上げながら、バックオフィスDX導入のポイントと実践的な導入プロセスも解説しています。

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

企業運営を支えるバックオフィス部門。その非効率な業務を一新する「バックオフィスDX」は、今多くの企業で注目されています。

本記事では、バックオフィスの役割とバックオフィスDXの概要から、メリット、必要性、具体的な導入プロセス、成功事例に至るまでをご紹介し、デジタル技術を駆使して業務改革を進めるための知見を提供します。

労働人口の減少やグローバル競争の激化といった外部環境の変化に対応し、企業の持続可能な成長を目指すバックオフィスDXの戦略を探りましょう。

バックオフィスDXとは

バックオフィスDX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業のバックオフィス部門における業務プロセスのデジタル化と効率化を指します。

これには、経理、人事、情報技術、事務管理など、顧客対応以外の内部運営業務が含まれます。
バックオフィスDXの目的は、これらの業務を最新のデジタル技術を用いて自動化し、最適化することにより、全体的な業務効率を向上させ、コストを削減し、より迅速なサービス提供を可能にすることです。

バックオフィスの定義

バックオフィスとは、企業の内部運営やサポート機能を担う部門のことを指します。具体的には、経理、人事、情報技術、事務管理などの業務が含まれます。

これらの業務は企業の顧客対応や直接的な商品・サービスの提供を行う「フロントオフィス」とは異なり、一般的に顧客から直接見えることは少ないです。
しかし、企業の運営を支える基盤となるため、その効率性や効果性が組織全体のパフォーマンスに大きく影響します。

バックオフィスとは
バックオフィスとは


バックオフィスDXのメリット

バックオフィスDXのメリット
バックオフィスDXのメリット

ここでは、バックオフィスのDXによる効率化と生産性の向上、コスト削減、意思決定の迅速化といったメリットについて解説します。

1.効率化と生産性の向上

バックオフィスの業務プロセスをデジタル化することで、手作業で行っていた入力作業やデータ管理が自動化され、作業の速度と正確性が向上します。

例えば請求書処理業務においては、請求書の自動スキャン、データ抽出、そしてシステムへの自動入力を通じて、請求書処理を迅速かつ正確に行うことができます

また、従業員の時間データや給与情報を自動で処理し、給与計算を行うシステムを導入することで、複雑な計算作業を短時間で正確に完了させることが可能です。

上記の組み合わせにより、全体的な生産性が高まります。

2.コスト削減

自動化と効率化により、時間とコストの両方で節約が可能です。特に、繰り返し行われる業務や複雑なデータ処理が自動化されることで、人件費の削減につながります。

また、デジタルツールの導入により、物理的なスペースや機器の維持にかかるコストも削減する事が可能です。

3.意思決定の迅速化

データ管理とアクセスの改善により、必要な情報を迅速に取得し、より速く正確な意思決定が可能になります。
財務部門では、毎月、四半期、年度ごとの決算報告が重要な業務です。デジタルツールを利用して財務データを自動集計し、報告書を生成することで、財務状況の分析と報告の時間を大幅に短縮できます。

これにより、経営陣は迅速に財務状況を把握し、必要に応じた予算調整や財務戦略の決定が可能になります。

また、法務や契約管理部門において、契約書の作成、承認、更新のプロセスは時間がかかることが多いです。
その際に、電子契約システムを導入することで、契約書のテンプレートから始まり、承認プロセスの自動化、デジタル署名までの作業を迅速化できます。

これにより、契約関連の意思決定が迅速に行われ、ビジネスの機会損失を防ぎます。


バックオフィスDXの必要性とメリット

日本におけるバックオフィスDX(デジタルトランスフォーメーション)導入の必要性が迫られている理由は、国内の経済環境、人口構造の変化、および国際競争の激化に関連しています。

以下でその重要な3点を解説していきます。

労働力不足と高齢化社会への対応

我が国の人口推移
我が国の人口推移 (出典総務省)


国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれています。

この状況に対応するため、企業は労働生産性の向上が急務となっています。
バックオフィスDXを通じて業務プロセスを自動化し、デジタル化することで、少ない人手で高い生産性を維持することが可能になります。

企業間競争の激化と市場ニーズの変化への対応

グローバル化が進む中で、日本企業は国内外の競争に直面しています。消費者のニーズが多様化し、市場の変化が速いため、企業はこれらの変動に迅速に対応する必要があります。

バックオフィスDXを導入することで、データ管理が改善され、意思決定プロセスが加速します。

コンプライアンス要件の厳格化への対応

法規制の変更やコンプライアンス要件の厳格化が続いています。
特に、個人情報保護法の改正や、企業ガバナンスコードの導入など、遵守すべき法的要件が増加しています。

バックオフィスDXにより、これらの法規制に対する適応が容易になり、リスク管理が強化されます。
また、自動化されたシステムを用いて文書管理やデータ保護を行うことで、エラーや違反のリスクを最小限に抑え、法規制への対応を確実に行うことができます。


バックオフィスDXのポイント

ここでは、バックオフィスDXを成功に導くための従業員のエンゲージメントとトレーニング、データ主導の意思決定の強化、クラウドサービスとの統合について解説します。

1.従業員のエンゲージメントとトレーニング

バックオフィスDXを成功させるためには、従業員が新しいシステムやプロセスを受け入れ、適切に利用することが不可欠です。
社内教育制度を用いて、従業員のスキルアップとDXへの理解を深めることが重要です。また、変化に対する従業員の意見を聞くことで、エンゲージメントを高めることができます。

DX推進費用には、「IT導入補助金」「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「人材開発助成金」「DXリスキリング補助金」等が国の制度として利用可能です。

必要に応じて、補助金や助成金を活用する事で、コストを抑えながらDXを推進する事ができます。

公式サイトはここから👇

2.データ主導の意思決定の強化

データを効果的に活用することで、バックオフィスのプロセスをよりスムーズにし、意思決定を迅速かつ正確に行うことができます。
データ分析ツールの導入や、AIによるデータの洞察力向上を図ることで、業務効率の大幅な改善を目指します。

主要なデータ分析ツールとしては、「Tableau」や「Power BI」、「Yellowfinが」有名です。
データ分析ツールには、分析結果をわかりやすく視覚化する、レポーティングやダッシュボードといった機能があり、企業の意思決定に役立ちます。

Tableauのデータ出力イメージ
Tableauのデータ出力イメージ

3.クラウドサービスとの統合

社内システムを自社で管理する形式から、クラウドサービス(AWS,Azure,Google Cloud等)への移行を検討することで、操作の柔軟性や対応能力が向上します。

特に**Azureは、OpenAIとの広範なパートナーシップの一環として、「ChatGPTをAzure OpenAI Serviceに統合する」**と発表しています。

これらのサービス形式では、遠隔地からのアクセスが容易になり、コストを抑えながらデータの保存と回復を簡単に行えます。

また、データは保護されたデータセンターに保存されるため、物理的な障害やデータ漏洩のリスクが低減されます。この変更により、事務作業の流れが全体的に効率化され、よりスムーズに業務を行うことができるようになります。


バックオフィスDXの進め方

バックオフィスDXの実践的な導入プロセス
バックオフィスDXの実践的な導入プロセス


バックオフィスのDXを成功に導くには、現状分析から始まり、目標設定、適切な技術選定、スムーズな実装、そして継続的な改善に至るまでの体系的なプロセスが不可欠です。

ここでは、各ステップで考慮すべき重要ポイントを交えながら、DX導入の実践的なロードマップを解説します。

ステップ 1: 現状分析とニーズ評価

現在のバックオフィス業務を詳細に分析し、どのプロセスが非効率であるか、どこに痛点が存在するかを特定します。

例えば、ベンチマーキングの実施することで、他の同業他社や業界標準との比較を行い、自社の業務プロセスの位置付けを明確にします
これにより、改善の余地がどれだけあるかが客観的に評価できます。

また、既存のITインフラと新たに導入する可能性のある技術との互換性を評価することも効果的です。
従業員からのフィードバックを集め、全体のニーズを理解し、変更への抵抗や期待を探ります。

ステップ 2: 目標設定と戦略策定

具体的な目標と期待される成果(KPI)を設定し、優先順位に基づいて段階的な戦略を策定します。
例えば、コスト削減、効率向上、エラー率の減少などが考えられます。

また、戦略策定プロセスにおいて、重要なステークホルダーを早期から巻き込むことで、プロジェクトへの支持と理解を確保します。

ステップ 3: 技術選定とパートナー選び

市場調査を行い、利用可能な技術オプションを評価します。適切なベンダーとの協議、デモンストレーションを通じて、最適なソリューションを選定します。
選定する技術がセキュリティとプライバシーの要件を満たしていることを確認し、企業のコンプライアンスと規制遵守を保証することが重要です。

また、ベンダーが長期的なサポートと成長に対応できるか評価し、将来的な技術のアップグレードや拡張の可能性も同時に考慮します。

ステップ 4: 実装と従業員のトレーニング

新システムの段階的な導入を計画し、各段階でのリスク管理とトラブルシューティング戦略を準備します。
そして、従業員向けのトレーニングプログラムを開発し、新しいシステムやプロセスへの適応を支援します。

この際、従業員が新システムに抵抗することなく受け入れられるように変更管理計画を詳細に策定し、コミュニケーションとサポートを強化します。

ステップ 5: 評価と継続的改善

導入後の成果を評価し、目標達成度やROI(投資対効果)を定量的および定性的に測定します。
その後フィードバックを収集し、不具合や改善点を特定後、継続的なプロセス改善を行います。

また、技術的な監視とメンテナンスを通し必要に応じてメンテナンスやアップグレードを行います。


バックオフィスDXの成功事例

バックオフィスDXの成功事例
バックオフィスDXの成功事例

1.ファーストアカウンティング×デロイトトーマツ

2024年3月、ファーストアカウンティング株式会社は、デロイトトーマツコンサルティング合同会社と経理DXのさらなる推進に向け、パートナー契約を締結しました。

ファーストアカウンティング株式会社は経理業務効率化AIソリューション「Robota」「Remota」を提供しており、この提携により、両社の強みと技術力を活かすことが可能になります。

これにより、更に細やかなコンサルティングが可能となり、AIを活用した一連の経理業務の自動化の支援を推進することが期待されます。

(参考)日本経済新聞


2.日本郵政グループ×ライトワークス

日本郵政グループは過去最大規模のDX研修をライトワークスの学習管理システムで実現しました。

日本郵政グループはDXの基盤づくりの重要項目の一つとして人材育成・体制強化を挙げ2022年は、本社社員の約9割を超える約6500人が受講した研修を行いました。

今後の展望としては、中期経営計画に定める2025年までに、グループすべての社員がDX研修の入門編を受講し終え、レベルアップしていること、また、中級編、上級編を受講したコア人材が、各部署においてDXを推進していく体制を整えることが述べられています。

(参考)ライトワークス


3.オーシャントランス株式会社×NECネクサソリューションズ

オーシャントランス株式会社はNECネクサソリューションズの「EXPLANNER/Ai給与」をベースとした船員給与テンプレートを用いて、配乗・船費データと給与データを連携させるというソリューションを選定しました。

120人分の配乗実績データと船費データを、「EXPLANNER/Ai給与」へ自動的に取り込めるように改善。その結果、船舶ごとに色分けされた入力フォームのため記入ミスが減り、専門性が求められていた給与計算業務も事前計算や確認ミスがなくなりました
同時に従業員の心理的な負担が軽減にも効果があったとのことです。

次のステップとしては、船舶内部の業務をシステム化する計画があり、配乗実績と船費実績を船舶側で入力することで、船員と陸員の負担を軽減し、さらなる省力化が期待されています。

(参考)NECネクサソリューションズ


まとめ

バックオフィスDX(デジタルトランスフォーメーション)は、日本企業が直面する労働力不足、競争激化、コンプライアンス要件の厳格化といった複数の課題に対応するための鍵となります。

本記事では、バックオフィスとは何か、バックオフィスDXの概念、そのメリット、実践的な導入プロセス、そして成功事例を通じて、デジタル化が如何に企業運営の効率化、コスト削減、迅速な意思決定を支援するかを詳細に解説しました。
経理から人事、契約管理まで、デジタルツールの導入は手作業によるエラーを削減し、業務プロセスを効率的にすることが示されました。

この変革を通じて、企業は限られたリソースを最大限に活用し、市場の動向に素早く適応する能力を身に付けることができます。

今後も、バックオフィスのデジタル化は進化し続けるでしょう。その進化に適応し、新たな技術を積極的に取り入れることで、持続可能な成長を実現する企業が増えていくことが期待されます。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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