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DXを失敗に導く10の要因!その具体例と成功へのポイントを徹底解説

この記事のポイント

  • この記事では、DXに失敗する主な要因と、それに対する対策を詳細に解説しています。
  • マッキンゼーのレポートによると、DXが成功する割合はわずか16%であり、経営者の理解不足やITインフラの欠如など、DX失敗の多様な要因が存在します。
  • DX人材の不足や組織内の問題、必要な資金の不足などが挙げられる他、柔軟性を欠くビジネス方向性やデジタルと従来のプラクティスの対立がDXの障害となることもあります。
  • 成功するためには、戦略ロードマップの作成、アジャイル開発への取り組み、テクノロジーの選択、データの品質確保、ビジネスプロセスの変革などが重要なポイントです。
  • 企業がDXを成功に導く道筋を築くための具体的なアクションプランとして、経済産業省のDXフレームワークが紹介されています。

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

現代の企業が直面するデジタルトランスフォーメーション(DX)は、その可能性だけでなく、多くの課題を含んでいます。特に、DXの成功率は低く、ある報告によると成功は僅か16%に留まっていると言われています。

この記事では、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)における失敗要因と成功のカギを解明します。DXを阻む具体的な障壁を分析し、その教訓から成功に向けたポイントと戦略、そして実行すべきアクションプランを提示することで、企業のデジタル変革の実現を後押しします。
本記事を通じて、日本企業がDXにおける障壁を乗り越え、デジタル変革を果たすためのヒントが数多く得られるはずです。

「そもそもDXについてよく分かっていない」「DXについて包括的に知りたい」という方は、こちらの記事もご覧ください。
➡️DXとは?その定義や必要性、IT化との違いや、実際の事例を徹底解説

DXが失敗する主な原因10選

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業にとって不可避かつ挑戦に満ちたプロセスです。成功への道筋は明確ではありませんが、失敗へと繋がる道は類似した要因によってしばしば決まります。
マッキンゼーのレポートでは、「DXの成功率はわずか16%」と報告されており、DXが失敗する主な理由としては、経営者の理解不足、職員の理解不足、導入方法の問題、タイミングの問題など様々あります。

自社に当てはまる理由を知ることにより、企業はこれらの落とし穴を避けるための知見を得ることができます。ここでは、各理由を掘り下げながら見ていきましょう。

デジタルの変革の難しさの報告:成功はわずか16%
デジタルの変革の難しさの報告:成功はわずか16%:参考資料より引用


まず、マッキンゼーによる「2135名の経営者へのインタビュー」にて、DXが失敗する理由が10個挙げられています。この10個のポイントを日本の企業文化に当てはめながら解説していきます。

DXが失敗する主な理由10選
DXが失敗する主な理由10選:参考資料より引用

経営者、管理層の理解不足

DXの成功には、経営層の理解と支援が不可欠です。しかし、多くの組織では経営者や管理層がDXの真の意味や影響を完全に理解していないことが問題となっています。

DXは単に新しいテクノロジーを導入すること以上の意味を持ち、ビジネスモデルの変革、組織文化の変化、従業員のスキルセットの再定義を伴います。経営層がこれらの要素を軽視したり、DXを単なるITプロジェクトとして扱ったりすると、戦略的な誤りやリソースの不適切な配分に繋がり、最終的にDXの取り組みが失敗に終わるリスクが高まります。

DXを推進するには、経営層が変革の主導者となり、組織全体にビジョンを共有した上で全社員を巻き込むことが求められます。

デジタル化の基盤と理解不足

多くの企業がDXにおいて直面する大きな障害の一つは、デジタル化の基盤とその理解の不足です。デジタル化を成功させるための基盤としては、強固なITインフラ、データ管理戦略、クラウドコンピューティングへのアクセス、セキュリティ対策などが挙げられます。

しかし、これらの要素が整っていない状態でDXプロジェクトに着手すると、プロセスが中断されたり、目標が達成できなかったりする可能性があります。また、デジタル技術の選択と導入において、その技術が現在及び将来のビジネス目標にどのように貢献するかを理解していなければ、投資の無駄やプロジェクトの遅延を招くことになります。

成功するデジタル化は、適切な技術の選択と、それをビジネス戦略とどのように統合するかの理解から始まります。

【関連記事】
➡️DX成功の鍵!デジタル時代の必須技術10選と効果的な活用方法

DX人材の不足

DXの取り組みにおいて人材が果たす役割は非常に重要ですが、DXを推進するための適切なスキルを持った人材が不足していることがしばしば懸念となります。これには、データ分析、クラウドコンピューティング、AI(人工知能)、サイバーセキュリティなど、新しいデジタル技術に関する専門知識が含まれます。

加えて、DXプロジェクトをリードするための戦略的思考や変革管理のスキルも必要とされます。多くの企業では、内部にこれらのスキルを持つ人材が不足しており、外部からの採用が困難な場合もあります。

人材不足を解消するためには、外部の専門家の採用、内部従業員への継続的な教育とトレーニング、そしてデジタルスキルを重視した人材育成戦略の策定が重要となります。

組織の問題

DXの成功は、組織全体の取り組みに依存していますが、組織構造や文化が変革の障害となることがあります。既存の組織文化が変革に対して抵抗を示すこと、組織内のシロ化がコラボレーションを妨げること、また変革に対する従業員の不安や反発がプロジェクトの進行を遅らせることがあります。

DXを成功させるためには、トップダウンのアプローチで組織文化の変革を促し、従業員の参加と協力を奨励した上で新しいアイデアやイノベーションを受け入れる柔軟性を持つことも重要です。

【関連記事】
➡️DXリテラシーとは?デジタル時代の必須スキルを分かりやすく解説

ITインフラの欠如

DXを実現する上で中核となるのが、堅牢で柔軟性のあるITインフラストラクチャです。しかし、多くの企業では古いシステムや非効率なITインフラがDXの障害となっています。レガシーシステムは新しい技術との互換性が低いことが多く、データの統合や分析、クラウドサービスへの移行を困難にします。

成功するDXには、クラウドベースのサービス、データセンターの最適化、ネットワークのアップグレード、セキュリティ対策の強化など、先進的かつ柔軟なITインフラの構築が求められます。

企業は、ITインフラを現代のビジネス要件に合わせて進化させることで、DXの基盤を固めることができます。

資金の不足

DXプロジェクトはときに高額な投資を必要とし、十分な資金が確保できないことがプロジェクトの進行を妨げる原因となることがあります。技術の導入や人材の育成、プロセスの再設計など、DXには多方面への投資が必要です。資金不足は、必要な技術の導入を遅らせたり、プロジェクトのスコープを縮小させたりすることにつながり、結果として競争優位性の喪失や市場での立ち遅れを招くことになります。

効果的なDXを実現するためには、戦略的な予算配分と、投資に対する明確なROI(投資収益率)の見積もりが不可欠です。

ビジネスの方向性

ビジネスの方向性が柔軟性を欠いていると、市場の変化や新しい技術の出現に迅速に対応できません。革新的なアイデアや新しいビジネスモデルに対する抵抗があると、デジタル変革の取り組みが阻害され、組織は競争力を失いかねません。

成功するためには、ビジネスの方向性を柔軟に保ち、継続的な学習と適応を重視する必要があります。

デジタルと従来の対立

デジタル技術と従来のビジネスプラクティスの間に対立がある場合、DXは困難になります。従来の方法やシステムに固執することは、イノベーションの障害となり、デジタルイニシアティブの効果を低下させます。

対立を克服し、デジタル技術を組織文化の一部として取り入れることで、従来のプラクティスを強化し、全体的なビジネスパフォーマンスを向上させることができます。

データの不足

データはDXの中核をなす要素であり、十分な量と質のデータがなければ、洞察を得たり、データ駆動型の意思決定を行ったりすることができません。データ不足は、顧客のニーズの理解、市場動向の分析、製品開発の方向性の決定において障害となります。

効果的なデータ収集、管理、分析戦略を確立することで、DXの成功に不可欠な洞察と情報を提供することができます。

経営者、管理者層によるサポートの欠如

DXの取り組みは、経営層と管理層の強力な支援なしには成功しません。トップダウンでのコミットメントが不足していると、プロジェクトに必要な資源、時間、注意が割り当てられず、組織全体の変革が妨げられます。

経営者と管理者がDXを積極的に支持し、リーダーシップを発揮することで、変革の取り組みが加速し、目標達成が容易になります。


DXを成功させるポイント

DXの成功経路は、慎重な計画と明確なビジョンが必要です。先に述べたような失敗要因が存在する中で、成功するためにはいくつかの基本原則と明確な戦略が重要になってきます。

ここでは、DXを成功に導くためのポイントを解説します。これらのポイントは、企業がDXを成功させるためのガイドラインとして機能し、変革を実現するための具体的な手順を提供します。

DXを成功に導く6つの要素

DX戦略ロードマップの策定

デジタル変革を成功させるためには、大規模な取り組みよりも、初めは小さな成功が重要です。小規模なプロジェクトからスタートし、徐々に規模を拡大することで、リスクを軽減し、プロジェクトの可視性を高め、組織が変化に適応するための時間を確保できます。このアプローチは、一歩ずつ現実的な成果を積み重ねながら、デジタル変革の道を進むための鍵となります。

【関連記事】
➡️DX推進指標とは?組織のDX進捗を自己診断できる評価指標を解説

DX人材の育成・確保

デジタル変革の成功には、適切なスキルとマインドセットを持った人材が不可欠です。技術者、データサイエンティスト、デジタルストラテジストなど、多様な専門知識を持つチームを構築し、従業員の継続的な教育と成長を支援することが重要です。

以下の画像は、経済産業省が公開している「DXリテラシーを標準化する方法」です。
このように、どういう姿勢でこのDXに取り組むのか、なぜ、何を、どのように進めるかをはっきりさせた上で人材の成長を促していきます。

DXリテラシーの標準化の説明,経済産業省資料より
DXリテラシーの標準化の説明,経済産業省資料より


また、2023年より急激に成長を遂げている生成AIでは、その利用において求められる「マインド・スタンス(2023年8月改訂補記、経済産業省資料)」が定義されています。

  • 生成AIを「問いを立てる」「仮説を立てる・検証する」等のビジネスパーソンとしてのスキルと掛け合わせることで、生産性向上やビジネス変革へ適切に利用しようとしている
  • 生成AI利用において、期待しない結果が出力されることや、著作権等の権利侵害・情報漏洩、倫理的な問題等に注意することが必要であることを理解している
  • 生成AIの登場・普及による生活やビジネスへの影響や近い将来の身近な変化にアンテナを張りながら、変化をいとわず学び続けている

<br<上記のように、DXを進める上でそのテクノロジーを知る人材を育てる事は非常に重要です。

【関連記事】
➡️DX人材育成のポイント:企業の成功事例を交えてわかりやすく解説

アジャイルとデリバリー

アジャイルな開発方法論と迅速なデリバリーは、デジタル変革の核となります。変化する市場のニーズに迅速に対応し、短期間で価値を提供するためには、柔軟性が高く、反復的なアプローチが必要です。

アジャイルなプラクティスを採用することで、企業はより迅速にイノベーションを市場に投入し、顧客のフィードバックを製品やサービスの改善に活かすことができます。

テクノロジー

適切なテクノロジーの選択と導入は、デジタル変革の成功に不可欠です。クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能(AI)、機械学習などの先進技術を活用することで、企業は効率化、自動化、データ駆動型の意思決定を実現できます。

テクノロジー投資の際には、ビジネス目標との整合性と、将来のスケーラビリティを考慮することが重要です。

データの量と質

デジタル変革はデータに基づいています。大量かつ高品質のデータを収集、分析し、有益な洞察を抽出することで、企業は顧客理解を深め、より効果的な意思決定が可能になります。

また、データガバナンスとデータマネジメントの強化により、データの品質とセキュリティを確保することも重要です。

ビジネスプロセスの変化、組織変化とモニタリング

デジタル変革は、ビジネスプロセスの再設計と組織構造の変化を伴います。プロセスの自動化、デジタルツールの導入、新しい作業方法の採用などにより、効率性と生産性を向上させることができます。

変革の進捗をモニタリングし、必要に応じて戦略を調整することで、企業は目標達成に向けて柔軟に対応できます。

**DXフレームワークの活用

DXフレームワークとは、経済産業省が推奨しているDX成功事例を標準化する際に利用されるツールです。これは、DXの取り組みが必要な領域に焦点を当て、デジタル化の初期段階から全面的なデジタル変革まで、各ステップでの行動計画をまとめたものです。

段階としては、まだ始まっていない「未着手」段階、デジタルデータへの変換を達成した「デジタイゼーション」、個々の業務プロセスのデジタル化を実現した「デジタライゼーション」、そして企業や組織全体のデジタル化を完了した「DX」の4つがあります。
また、対象となる領域は「ビジネスモデル」「製品・サービス」「業務プロセス」「プラットフォーム」「体制整備(企業文化、環境、組織構造)」の5つで、DXの全体像を構成しています。

DXフレームワークは、領域ごとに自社のDXへの取り組みの状況を可視化し、不十分な点や強化すべき領域の整理のために有効です。さらにその整理結果を踏まえ、自社の各領域の取り組み状況を俯瞰し、DXをゴールに設定した上で、そのゴールから逆算することによって具体的なアクションプランを検討する際にも活用できます。

DXフレームワーク、経済産業省より
DXフレームワーク、経済産業省より


まとめ

DX成功への道は複雑で、多くの企業がその障害に直面しています。しかし、経営者の理解の深化、デジタル化基盤の整備、システム導入の適切な理解、DX人材の確保、そしてPDCAサイクルの継続的な実践を心掛けることで、企業はこれらの障害を乗り越えることができます。

本記事を通して示された要点と戦略を取り入れることで、企業は自社のDXプロジェクトを成功へと導くための具体的なアクションポイントを得ることができます。最終的に、継続性と柔軟性を持ったアプローチが企業の成長に導く大きなサポートとなることを私たちは強く願っています。


参考文献:
マッキンゼー緊急提言デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ(McKinsey&Company)
DX レポート(経済産業省)
デジタルスキル標準(情報処理推進機構・経済産業省)

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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