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税理士業界に求められるDXとは?推進方法や課題を徹底解説

この記事のポイント

  • 税理士事務所のDXは業務効率化と競争力確保が目的
  • ビジネスモデルや業務プロセスのデジタル変革が重要
  • ペーパーレス化やクラウド会計、RPA導入が具体例
  • 技術的ハードルやセキュリティ、コストなどの課題も
  • 課題解決のための具体的方策を提示

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

今や税理士事務所においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)は避けられない流れとなっています。
時代の変化や顧客ニーズの複雑化に柔軟に対応し、持続可能な成長を促進させることが求められます。

この記事では、税理士業界におけるDXの意義、その必要性、そして実現のための具体的な方法と実際の課題解決策を解説していきます。
デジタル技術を駆使し、業務プロセスを革新することで、税理士事務所は効率化と高品質なサービスの提供による競争力を確保することが可能です。

クラウド会計の活用やRPAによる自動化など、税理士事務所に求められるデジタル化の方向性と戦略について見ていきましょう。


税理士にDXが求められる理由

ここでは、税理士事務所がDXを推進する理由について説明します。

人口減少への対応、若年層人材の確保、国の施策への対応という3つの観点から、税理士事務所におけるデジタル化の必要性を見ていきましょう。

1.人口減少に対処するため

総人口の人口増減数及び人口増減率の推移(1950年~2023年)
総人口の人口増減数及び人口増減率の推移(1950年~2023年) (出典総務省|人口推計)


日本では総人口の減少が進んでいます。
2023年10月発表の統計によると、総人口は1億2435万2千人で、2022年に比べ59万5千人(-0.48%)の減少となり、13年連続で減少しています。

このような状況下でさらに複雑化するニーズに対処するため、各業界では生産性の向上が急務とされています。

これは税理士事務所においても同様で、効率的な業務処理を実現するためにデジタルツールの導入が求められています。

DXの導入により、効率的かつ高品質なサービスを提供することで、顧客満足度を高め、競争力を維持・向上させることができます。
限られた人員でより多くの業務をこなし、高いサービス品質を維持することが重要です。

2.若年層の人材確保をするため

わが国のデジタル人材シェアの年齢分布
わが国のデジタル人材シェアの年齢分布 (出典日本総研|デジタル人材の育成・確保に向けた課題)


若年層はデジタル技術に馴染みが深く、技術を積極的に活用する職場を好む傾向にあります。
また、優秀な人材は、働きやすい環境や最新のツールが整った職場を求める傾向があります。

DXを推進することで、業務の効率化やリモートワークの導入など、働きやすい環境を整えることができ、人材の確保や定着率の向上につながります。

また、デジタルスキルを持つ若手人材を引き付けることができ、事務所の将来的な成長にも寄与します。継続的な教育・訓練プログラムを通じて、従業員のスキルアップも図れます。

3.国の施策に対応するため

電子帳簿保存法の例
電子帳簿保存法の例 (出典国税庁)


政府はデジタル化を推進しており、税制や会計の分野でもデジタル対応が進んでいます。
例えば、電子申告や電子帳簿保存法の施行など、デジタルに関連した法規制が強化されています。

税理士事務所はこれらの新しい規制に対応するために、適切なデジタルツールとプロセスの導入が必要です。


税理士DXの進め方

DXの構造


DXの構造について、最も広範な捉え方は「デジタイゼーション(Digitization)」です。
これは、従来アナログで行っていた業務をデジタルデータに変換することであり、資料の電子化も広義のDXに含まれます

一方、「デジタライゼーション(Digitalization)」は、デジタル技術を活用して業務の流れを変革することを指します。
例えば、手動で行っていた照合作業を自動化することも広義のDXの一部です。

DXは必ずしも高度な技術や最先端の手法だけを指すわけではなく、その組織に適した業務のデジタル化や最適化を目指すこともDXといえます。

1.ペーパーレス化

文書や契約書、帳簿などの紙ベースのドキュメントをデジタル化することで、情報の検索性、保管の容易さ、スペースの節約を図ることができます。

スキャンやOCR(光学文字認識)技術を利用して紙の文書をデジタルデータに変換し、クラウドストレージに保存します。

2.クラウド会計の活用

クラウドベースの会計ソフトウェアを導入することで、リアルタイムでの財務データのアクセスや共有が可能になります。
これにより、在宅勤務やリモートアクセスが容易になり、顧客との即時のデータ共有が実現します。

また、クラウド会計ソフトは常に最新の税法に基づいて更新されるため、法令遵守も容易になります。

3.コミュニケーションツールの導入

内部コミュニケーションの効率化のために、SlackやMicrosoft Teamsなどのコミュニケーションプラットフォームを導入します。

これにより、チーム間の情報共有や協力がスムーズになり、リモートワークでも効率的なコミュニケーションが可能になります。

4.RPA(ロボティックプロセスオートメーション)による自動化

繰り返し行われる単純作業(例えば、データ入力や帳簿の整理)を自動化するためにRPAを導入します。
これにより、人的ミスを減らし、スタッフの時間をより戦略的な業務に振り向けることが可能になります。

5.顧客関連プロセスのデジタル化

顧客とのやり取りをデジタルプラットフォーム上で行うことを可能にします。オンラインでの会議システム、電子署名、顧客ポータルの導入により、顧客体験を向上させるとともに、効率的なサービス提供が可能になります。

また、顧客データベースを統合し、カスタマイズされたアドバイスやサービスを提供することで、顧客満足度を高めます。


税理士DXの課題と解決策

ここでは、税理士事務所がDXを推進する上で直面する主要な課題と、それらを克服するための具体的な解決策について解説します。

技術的なハードル、データセキュリティ、組織文化の変革、コスト、顧客の適応など、様々な観点から課題を分析し、実践的なアドバイスを提供します。

1. 技術的なハードル

【課題】
税理士事務所では、従業員が高度なITスキルを持っていないことが多く、新しいテクノロジーの導入が難しいことがあります。

【解決策】
定期的な研修やワークショップを設けて従業員のデジタルスキルを向上させる。
また、使いやすいインターフェースを持つソフトウェアの選定や、専門のITサポートチームを設けることも有効です。

2. データセキュリティとプライバシー

【課題】
顧客の財務情報などの機密データを扱うため、セキュリティとプライバシーが重要な課題です。

【解決策】
強固なセキュリティ対策を施すこと、例えばエンドポイントの保護、二要素認証の導入、データ暗号化などを行う。
また、データ保護に関する最新の規制や基準を常に把握し、それに従った対策を講じる。

3. 組織文化の変革

【課題】
従来の作業方法や企業文化に根ざした抵抗感が変革を困難にさせることがあります。

【解決策】
組織全体にDXの重要性を教育し、デジタル変革がもたらす利益について明確にコミュニケーションをとる。
トップダウンでの支援と、変革のリーダーを設けることで、組織内の意識改革を促進します。

4. コスト

【課題】
デジタル化には初期投資が伴い、特に小規模な事務所にとっては財政的に負担が大きい場合があります。

【解決策】
コストと利益を詳細に分析し、最も効果的な投資を優先する。
また、クラウドサービスのようなサブスクリプションベースのITソリューションを利用することで、初期投資を抑えることが可能です。

5. 顧客の適応

【課題】
顧客が新しいデジタルシステムに適応するのに時間がかかる場合があります。

【解決策】
顧客に対して、新しいシステムの利用方法やメリットを丁寧に説明し、適切なトレーニングやサポートを提供する。
また、顧客のフィードバックを受け入れ、改善を継続的に行うことで、顧客満足度を高めることができます。


まとめ

この記事では、DXの基本概念から始め、税理士業界におけるDXの必要性、具体的な実現方法、成功への要因、そして現実の課題とその解決策について解説しました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、税理士事務所において業務の質を向上させる上で避けて通れない道となっています。

最終的にDXは、税理士事務所が提供するサービスの範囲を拡大し、クライアントに普遍的な価値を提供するための強力な手段です。DXを通じて得られるデータの洞察力と、それによって生み出される新たな経営サービスは、事務所が競争力を保ち、成長を続ける上で決定的な役割を果たします。

この記事が税理士事務所におけるDXについての理解を助ける一助となっていれば幸いです。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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