この記事のポイント
- この記事は、新しい大規模言語モデルの能力を測るためのベンチマーク「BigCodeBench」について紹介しています。
- BigCodeBenchは、実際の開発シナリオを模倣した1,140のタスクとテストケースを通じて、言語モデルのプログラミング能力を試しています。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
現代のソフトウェアエンジニアリングの現場において、大規模言語モデル(LLMs)の性能を測定し、向上させるための新しい基準が求められています。
本記事では、そんなニーズに応えるべく開発された「BigCodeBench」というベンチマークについてご紹介します。
BigCodeBenchは、実際の開発シナリオを模倣し、1,140の関数レベルのタスクとそれに対する豊富なテストケースを通じてLLMsのプログラミング能力を評価します。
従来のベンチマークの限界を超えるこの試みでは、GPT-4oなどの最先端モデルも試され、まだ人間のパフォーマンスには届かない現実も明らかになりました。
また、オープンソースの評価フレームワークや、コミュニティとの積極的なコラボレーションにより、LLMsのさらなる改善と応用を目指す環境が提供されています。
BigCodeBenchとは:ソフトウェア開発の現実を反映した新しいベンチマーク
BigCodeBenchは、実際のソフトウェア開発シナリオを模倣した高度なプログラミングタスクを用いて、大規模言語モデル(LLMs)の能力を測定するために開発されたベンチマークです。
このベンチマークは、139種類のライブラリから成る1,140の関数レベルのタスクを含んでおり、それぞれについて平均5.6個のテストケースが用意されています。
これにより、99%のブランチカバレッジという高い精度でモデルの性能を試験することができます。
BigCodeBenchは、従来のベンチマークが持つ限界を克服することを目指しており、LLMsに対して、ステップバイステップの指示なしに、ユーザー指向の指示を理解し、タスクを解決するためのチャレンジを提供します。
このベンチマークを利用することで、リアルな開発環境での言語モデルの実用性をより正確に評価することが可能になります。
GPT-4oの性能:BigCodeBenchを通じた評価
BigCodeBenchにおいて、現在最も性能の良いモデルであるGPT-4oの能力が試されました。
このモデルは、キャリブレーションされたPass@1メトリックを使用して、コンプリートセットで61.1%のスコアを、インストラクトセットで51.1%のスコアを記録しています。
これは、人間の平均パフォーマンスである97%には及ばない結果です。
BigCodeBenchは、こうした結果を通じて、LLMsが特に改善を必要とする分野を明らかにしています。たとえば、コード生成時に必要なインポートを適切に含める能力などが挙げられます。
これらの結果は、LLMsが実際のソフトウェア開発タスクをこなす上でまだ課題があることを示しており、今後の改善の方向性を示唆しています。
BigCodeBenchの提供する環境とコミュニティへの貢献
BigCodeBenchは、ユーザーフレンドリーな評価フレームワークをダウンロード可能な形で提供しており、これにはコードを安全に生成、清掃、実行するためのツールが含まれています。
開発チームは、さらなる改善を進めており、複数のプログラミング言語へのサポートを追加すること、テストの厳格性を向上させること、そしてより対話的なLLM評価環境を可能にすることを目指しています。
このようにして、BigCodeBenchが提供する環境は、LLMsの能力をより正確に、かつ広範囲に評価するための基盤となっています。
また、BigCodeBenchチームはGitHubを通じて評価フレームワーク、タスク、リーダーボードなどのオープンソースリソースを提供し、コミュニティからの協力やフィードバックを積極的に受け入れています。
GitHub Pagesにリーダーボードを維持し、GitHubやメールを通じて質問や提案を受け付けており、彼らの作業が役立つ場合は引用することを奨励しています。
研究者や開発者が自身のモデルを評価し、向上させるためのプラットフォームとして機能しています。
出典:HuggingFace