この記事のポイント
- この記事は、NVIDIAのCEOジェンセン・ファンがAIによる電力グリッドの革新について説明しています。
- AIを活用したスマートメーターにより、顧客が余剰電力を売買する新しい電力供給の仕組みの実現が期待されています。
- 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー源を含む柔軟で分散化されたネットワークへ移行するため、AIと加速コンピューティングの技術が不可欠です。
- NVIDIAのBlackwellアーキテクチャのGPUは、CPUサーバーに比べて20倍のエネルギー効率があり、CPUサーバーが全てGPUに移行すると37テラワット時の電力節約につながる可能性があります。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
次世代の電力グリッドにおけるAIの可能性とNVIDIAのCEO、ジェンセン・ファンが提示したエネルギー効率化への未来像についてご紹介します。
AIとGPUコンピューティング技術を駆使することで、現在の電力グリッドをスマートで持続可能なネットワークへと進化させるとファンは語りました。
顧客同士で余剰電力を売買し合えるスマートメーターや、自律制御システムによるリアルタイムのデータ処理・分析は、分散型で柔軟な電力供給網の構築を支える重要な要素です。
NVIDIAの最新技術がもたらす削減効果は非常に大きく、全CPUサーバーがGPUへと移行した場合、37テラワット時の電力節約という驚異的な数値に繋がることからも、そのインパクトの大きさをうかがい知ることができます。
ライトバルブ・モーメント:NVIDIAのCEOによるAI推進の電力グリッドの未来予測
2024年6月18日、NVIDIAの創設者でありCEOのジェンセン・ファンは、エジソン電気研究所での基調講演にて、AIが電力グリッドと公共事業に与える影響について語りました。
彼は、AIを活用することで、従業員の生産性が向上するだけでなく、グリッド上でのエネルギー配送において最大の影響とリターンが見込まれると述べました。
具体的には、AI推進のスマートメーターを用いて、顧客が余剰電力を隣人に売ることが可能になるというビジョンを示しました。
これは、電力グリッドをエネルギーのアプリストアのようなデジタルレイヤーを持つスマートネットワークに変えることを意味しています。
AIが電力グリッドを明るくする未来
現在の電力グリッドは、数少ない大きな発電所から多くのユーザーへと電気を供給する一方通行のシステムですが、これからは柔軟で分散化されたネットワークへと変化していきます。
これには、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー源がソーラーパネルやバッテリー、電気自動車の充電器を備えた家庭や建物と接続されることを含みます。
このような変化を実現するためには、リアルタイムで大量のデータを処理・分析する自律制御システムが必要となるため、AIと加速コンピューティングが非常に重要な役割を果たします。
NVIDIAの技術がもたらすエネルギー効率の向上
NVIDIAのCEOジェンセン・ファンは、過去8年間でAI推論のエネルギー効率を45,000倍に向上させたと述べています。
これは、NVIDIAの新しいBlackwellアーキテクチャのGPUを使用した結果であり、CPUと比べて20倍のエネルギー効率を実現しています。
これにより、全てのCPUサーバーがGPUに移行すれば、年間37テラワット時の電力を節約でき、これは2500万メトリックトンの二酸化炭素削減と500万世帯の電力使用量に相当します。
また、NVIDIA駆動システムは、世界で最もエネルギー効率の良いスーパーコンピュータのリストであるGreen500ランキングで上位に位置しています。
出典:NVIDIA