この記事のポイント
- この記事はシナリオ型、辞書型、そしてAI型の3つのチャットボットについて説明しています。
- チャットボットは、顧客サービスや業務の自動化に有益であり、企業にとって重要なツールです。
- それぞれのチャットボットには独自のメカニズムがあり、使用されるシーンやメリット・デメリットが異なります。
- 記事では、チャットボットが今後さらに進化する可能性と、それによる社会への影響を提案しています。
- チャットボットを実際に作成する方法についても、Google Colabを使用した具体的な実装例を紹介しています。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
企業の顧客サービスや業務自動化に必要不可欠な存在となりつつあるチャットボット。その種類は一つではありません。
この記事では、顧客の問い合わせに対応するための自動応答システムであるチャットボットの主要な3つのタイプ「シナリオ型」「辞書型」「AI型」について、それぞれの特徴や役立つ場面、導入するメリットを解説していきます。
また、チャットボットの未来像やおすすめのチャットボットサービス、さらにはチャットボットの作り方についても紹介し、実際にGoogle Colabを使って直接作成する方法を具体的に示します。
ビジネスのサポートとしてチャットボットを検討している方々にとって、有益な情報を提供します。
目次
チャットボットとは?
みなさんはチャットボットというものを耳にしたことはありますか?
チャットボットはビジネスにおいて、顧客サービスを効率化するために用いられている自動応答システム のことです。
世の中には大きく分けて三つのタイプのチャットボットが存在しています。
- シナリオ型チャットボット
- 辞書型チャットボット
- AI型チャットボット
各チャットボットのタイプによって、その動作の仕組み、使用される技術、そして提供できるサービスの内容に大きな違いがあります。
このセクションでは、それぞれのチャットボットがどのようなメカニズムに基づいており、一般的にどのような用途に使用され、それぞれの長所と短所とは何かを紹介します。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型チャットボットは、あらかじめ準備されたスクリプトに従ってユーザーとの対話を行います。
このタイプのチャットボットの大きな利点は、比較的短時間かつ低コストで設計・実装できることです。顧客との単純なやり取り、よくある質問への回答などに使われます。
しかし、これらのチャットボットは基本的に、特定の質問への回答や選択肢を提示するための既製のスクリプトのみに依存しているので、その応答はあらかじめプログラムされたものに限られます。
そのため柔軟性に欠け、複雑な問い合わせや突発的なユーザーの要求には対応できません。その場合、オペレーターによる有人対応などで補完する必要があるでしょう。
辞書型チャットボット
辞書型チャットボットは、「商品の発送日時を知りたい」「返品はできますか?」などといった、ユーザーからの入力を分析してキーワードを割り出したのち、「辞書」から情報を引き出して回答を行います。「辞書」にはユーザーが入力するであろう単語やフレーズに対する応答が事前に用意されており、ボットはその中から最も関連性の高い回答を提示します。
例えば「返品はできますか?」に対しての回答であれば、「お届け品に不備がある場合」「お客様のご都合による返品希望の場合」「返品・交換をお受けできないもの」などの項目が候補に当たります。
このタイプのチャットボットは、フリーワード入力なので、シナリオ型のチャットボットよりも人間に近いチャットができる上に、幅広いジャンルの質問に対応できます。
ですが、それでも回答はあらかじめ定義された範囲に限られており、前述のシナリオ型と同様に、予期せぬ質問やニュアンスの難しい表現には対応が難しいというデメリットを抱えています。
こちらもオペレーターによる有人対応などで補完することが求められるでしょう。
また、質問文解析にAIを活用しているため、シナリオ型チャットボットより開発コストがかかります。
AI型チャットボット
AI型チャットボットは、ユーザーが質問文をフリーワード入力すると、自然言語処理(NLP)や機械学習を使用して過去に複数のユーザーと会話を行った記録が蓄積されたログをAIが解析し、適切な回答を導きます。
そのため、ユーザーの意図を理解し、まるで人間と話しているような自然な会話が実現できます。
その欠点は、その複雑さと実装にかかるコスト、そしてログのサンプル数によってAIの回答の精度が大きく左右される点にあります。
チャットボットの導入メリットと適用事例
現在、チャットボットの導入には実際に多くの企業が顧客サービスの向上や業務効率化を目指して乗り出しています。
ここでは、チャットボットが社会にもたらすポジティブな影響と、それらが実際にどのようなシナリオで活用されているのかについて詳しく紹介していきます。
顧客サービスの効率化
顧客サービスにチャットボットを導入することは、企業と顧客双方にとっての効率化に大きく役立っています。
チャットボットは24時間365日対応可能なため、顧客はいつでも回答を受け取ることができ、企業にとっても人件費と業務内容の無駄の削減につながっています。
成功事例として、日本航空株式会社は「チャットプラス」というチャットボットを活用したことで、お問い合わせ対応にかけるコストをカットするとともに、従来の電話やメールとは異なる形の情報提供を可能にしました。
販売とマーケティングの最適化
EC・通販サイトの右下や左下に現れることの多いチャットボット。利用経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
このようなサイトでは、今まで購入した商品や閲覧した商品の傾向から顧客にあったモノをチャットボット上で提案できる仕組みを構築していることが多いです。
直接商品を触らずとも自分にあった商品を見つけることができるようになり、EC・通販サイトにおける購入意欲を促進することに成功しています。
内部管理の自動化
企業内部においても、チャットボットは非常に有用です。社内FAQや情報管理などの業務をチャットボットが担当することで、従業員間の手間が省け、より重要な業務に集中することができます。
さらに、AIはこのような単純作業においては人間を上回る作業処理能力を発揮することができます。
チャットボットの将来展望
将来的には、AIの進歩によりチャットボットはより高度な会話能力を獲得すると予想されています。
ユーザーの意図や感情をより深く理解し、それに応じて対話を進めることができる能力を獲得できれば、医療や教育、公共サービスなどの分野でのチャットボットの活用がより一層進むことでしょう。
おすすめのチャットボットサービス
では、チャットボットを社内に導入するにはどのようにすれば良いのでしょうか。
まずは構築が不要ですぐに使えるチャットボットサービスをご紹介します。
以下のように「構築が必要なもの」と「構築不要(すぐ使えるもの)」にわけて整理しました。
すぐ利用できるチャットボットサービス
これらは主に既存のプラットフォームやツールを利用して、簡単な設定や連携で使用できるチャットボットです。
また、おすすめのチャットボットランキングをまとめた記事も参考にしてみてください。
チャットボットのおすすめランキング-機能性から使いやすさまで徹底比較!
ChatGPT
- 提供元: OpenAI
- 特徴: 既に学習済みのAIを活用し、APIや専用アプリを利用してすぐに使える。カスタマイズの必要がない場面でも活用可能。
- 主な用途: 顧客対応、FAQ応答、文章生成
【関連記事】
ChatGPT(チャットGPT)とは?無料での始め方や料金、使い方のコツを解説!
LINE Messaging API
- 提供元: LINE
- 特徴: 既存のLINE公式アカウントを活用し、簡単なボット機能をすぐに設定可能。
- 主な用途: B2C顧客対応、プロモーション
【関連記事】
LINEチャットボットとは?その特徴や種類、料金体系について解説!
構築が必要なサービス(カスタマイズ可能なもの)
これらは自社の業務やニーズに合わせてボットを設計・開発し、特定の機能を追加することが可能です。
Dify
- 提供元: オープンソースコミュニティ
- 特徴: ChatGPTを基盤にノーコードで簡単に構築可能。業務やサービスに合わせたカスタマイズに対応。
- 主な用途: 業務プロセスの自動化、社内用チャットボット
【関連記事】
Difyとは?できることや使い方・料金体系を解説!商用利用時の注意点も紹介
Microsoft Copilot Studio
- 提供元: Microsoft
- 特徴: Microsoft 365ツール(TeamsやWordなど)に統合し、社内ワークフローに適応したカスタム機能を構築可能。
- 主な用途: 社内業務の効率化、ドキュメント作成支援
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Microsoft Copilot Studioとは?できることや使い方、料金体系を解説!
kintone
- 提供元: サイボウズ
- 特徴: 業務アプリ構築プラットフォームの一環としてチャットボットを構築可能。既存の社内データとの統合が容易。
- 主な用途: 業務効率化、社内問い合わせ対応
このように、即時利用できるサービスはスピード重視の導入に適しており、構築が必要なサービスは業務に特化した柔軟な機能が求められる場合に適しています。自社のニーズに応じて選択してください。
AI総合研究所は企業のチャットボット導入・構築を支援しています。
お気軽にご相談ください。
実際にチャットボットを作ってみよう
ではこの3つのチャットボットを実際に作ってみましょう。
今回は環境依存が少ないGoogleコラボで作成してみます。
1. シンプルなルールベースのチャットボット
実際の実装画面
概要
事前定義した応答ルールに基づいて、ユーザーの質問に応答する基本的なチャットボットです。
実装手順
- Google Colabを開き、新しいノートブックを作成。
- 以下のコードを実行:
# シンプルなルールベースチャットボット
def chatbot_response(user_input):
responses = {
"こんにちは": "こんにちは!何かお手伝いできますか?",
"ありがとう": "どういたしまして!",
"さようなら": "またお会いしましょう!"
}
return responses.get(user_input, "すみません、よくわかりません。")
# ユーザー入力
while True:
user_input = input("あなた: ")
if user_input in ["終了", "exit"]:
print("チャットボット: さようなら!")
break
print("チャットボット:", chatbot_response(user_input))
2. FAQ型チャットボット(辞書型)
FAQ(よくある質問)のデータを基に、ユーザーの質問に適切な回答を返すボットです。
実装手順
- Google Colabに必要なデータセットをアップロード。
- 以下のコードを実行:
# FAQ型チャットボット
faq = {
"営業時間は?": "当店の営業時間は9:00~18:00です。",
"所在地はどこですか?": "所在地は東京都新宿区です。",
"返品はできますか?": "返品は購入後30日以内であれば可能です。"
}
def faq_chatbot(user_input):
for question, answer in faq.items():
if question in user_input:
return answer
return "すみません、その質問にはお答えできません。"
# ユーザー入力
while True:
user_input = input("あなた: ")
if user_input in ["終了", "exit"]:
print("チャットボット: ありがとうございました!")
break
print("チャットボット:", faq_chatbot(user_input))
3. AI型チャットボット(ChatGPT APIを使用)
OpenAIのChatGPT APIを活用し、高度な会話能力を持つボットを構築します。
事前準備:
- OpenAIのAPIキーを取得(公式サイト。
- 以下のコードを実行。
実装手順:
# 必要なライブラリをインストール
!pip install openai
# ChatGPT APIを利用したAI型チャットボット
import openai
# APIキー設定
openai.api_key = "your_openai_api_key"
def chatgpt_bot(prompt):
response = openai.Completion.create(
engine="text-davinci-003",
prompt=prompt,
max_tokens=100,
temperature=0.7,
)
return response.choices[0].text.strip()
# ユーザー入力
while True:
user_input = input("あなた: ")
if user_input in ["終了", "exit"]:
print("チャットボット: さようなら!")
break
print("チャットボット:", chatgpt_bot(user_input))
これらの手順を実行すれば、それぞれのタイプのチャットボットを簡単に試すことができます。Google Colab上で動作するため、環境設定を気にせず実験を進められます。
ぜひ試してみてください!
【関連記事】
ChatGPT APIを用いたLINEチャットボットの作成方法をわかりやすく解説!
まとめ
本記事を通じて、シナリオ型、辞書型、AI型といったチャットボットの基本的な種類とその機能、導入のメリットと対応する適用事例、現在の課題点と未来の展望について解説しました。チャットボットは顧客対応の効率化から業務の自動化、新たなマーケティング手法としての利用まで、ビジネスの成長を加速するための多くの可能性を秘めています。
会社にチャットボットを導入する際は、自社のニーズ、目的、予算、技術的な能力等にあったものを慎重に検討しましょう。