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SXとは?その概要や注目される背景、企業による事例をわかりやすく解説!

この記事のポイント

  • SXは企業と社会の持続可能性を同期化させる概念
  • ダイナミック・ケイパビリティがSX推進の鍵
  • SXとDXの統合的推進が企業の持続可能性を強化
  • SX推進には段階的アプローチと全社的理解が重要
  • 日本企業のSX実践例と政府の支援策を紹介

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

企業の持続的成長と社会の持続可能性を両立させるにはどうすればよいでしょうか。
経済産業省が提唱するSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、持続可能な経済、社会、環境の実現を目指し、企業と社会の持続可能性を同期化させる新しい概念です。

この記事では、SXの意義やその必要性、企業に求められる取り組みや注意点、そして実際の事例を深堀りしていきます。

未来に向けた企業戦略の形成において、SXはなぜ重要なのか、また、その成功への道筋とはどのようなものかを解き明かしていきましょう。

SXとは

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)は、企業が長期的に持続可能な経済、社会、環境を目指すためのイノベーションや変革を指します。

この概念は、「企業の持続可能性」と「社会の持続可能性」を同期させることで、不確実な未来に対応する力を養うことを目的としています。

経済産業省によるSXの定義
経済産業省によるSXの定義


SXは、持続可能な開発目標(SDGs)や環境保全に対する意識の高まりとともに、企業の在り方を問い直す概念となりました。

これは、単にリソースの効率化やコスト削減に留まらず、環境への負担を減らし、社会全体の幸福度を向上させるための変革を目指すものです。

SXは企業のサステナビリティー戦略を形作る上で欠かせない考え方であり、長期的な視点から業界のリーダーシップを確立するためにも不可欠考えられています。

### 企業のサステイナビリティ
ここでは、SX実現に向けて重要な観点である企業のサステイナビリティについて解説します。

経済産業省では、「企業のサステイナビリティー」=「企業の稼ぐ力の持続性」として、企業の稼ぐ力(強み・競争優位性・ビジネスモデル)を中長期で持続化・強化する、事業ポートフォリオ・マネジメントやイノベーション等に対する種植え等の取組を通じて、企業のサステナビリティを高めていくことが重要であると提言しています。

企業の稼ぐ力が「企業の強み・競争優位性・ビジネスモデル」という目に見えるものではなく長期的に持続および強化できる概念からなっていることが特徴です。

社会のサステイナビリティ

次に同様にSX実現に向けて重要な観点である社会のサステイナビリティについて解説します。

経済産業省では、「社会のサステナビリティ」=「将来的な社会の姿や持続可能性」として、将来の社会の姿や持続可能性を見据え、不確実なリスクに備えることが重要であると提言しています。

企業はこのビジョンを元に、稼ぐ力の持続性や成長性に対するリスクと機会を把握し、経営に反映させることが求められます。

例えば、新型コロナウイルスやロシア・ウクライナ問題など、予測困難な出来事がビジネスに大きな影響を与えることがあります。
こうした状況でも、SDGsやESGの視点を取り入れ、未来の社会を逆算して計画することで、企業は持続的な成長を目指すことができます。


SXが注目される背景

SXが注目される背景には、急速に変化する世界情勢と、それに伴う企業経営の不確実性の増大があります。

2020年8月、経済産業省が発表した、「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ」は、SXの重要性を強調する転機となりました。

この報告書では、新型コロナウイルス感染症の世界的流行や気候変動の影響、グローバルサプライチェーンの脆弱性など、企業経営を取り巻く環境の不確実性が増大していることが指摘されています。

このような状況下では、短期的な利益追求だけでなく、長期的な視点で企業と社会の持続可能性を同時に追求することが不可欠となっています。

さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の普及や、ESG投資の拡大など、企業の社会的責任に対する社会の期待が高まっていることも、SXへの注目を後押ししています。

投資家や消費者、従業員など、様々なステークホルダーが企業のサステナビリティへの取り組みを重視するようになり、それが企業価値に直結するという認識が広まっています。

こうした背景から、SXは単なるトレンドではなく、企業の長期的な生存と成長にとって不可欠な戦略として認識されるようになってきています。


SX推進のための戦略:ダイナミック・ケイパビリティ

SXを効果的に推進するためには、ダイナミック・ケイパビリティ(Dynamic Capabilities)の概念が重要です。

この概念は、1997年にデイヴィッド・J・ティース氏によって提唱されたもので、「変化の激しい環境下で企業が自己変革する能力」を指します。

ダイナミック・ケイパビリティの構成要素

  • 感知力**(Sensing): 市場の変化や新たな機会、潜在的な脅威を察知する能力。
  • 捕捉力**(Seizing): 感知した機会を活かし、既存の資源や能力を再構成して競争力を獲得する能力。
  • 変容力**(Transforming): 組織全体を刷新し、持続的な競争力を維持する能力。


これらの能力を強化することで、企業は不確実性の高い環境下でもSXを効果的に推進することができます。

例えば、環境規制の変化を早期に察知し(感知力)、それを新たな製品開発の機会として捉え(捕捉力)、必要に応じて事業構造を変革する(変容力)といった具合です。

ダイナミック・ケイパビリティの強化には、DX(デジタルトランスフォーメーション)の活用が有効です。
デジタル技術を駆使することで、市場動向の迅速な把握や、データに基づく意思決定、組織の柔軟な変革が可能になります。

デイヴィッド・J・ティース氏によるダイナミック・ケイパビリティの論文
デイヴィッド・J・ティース氏によるダイナミック・ケイパビリティの論文


その後、日本では、経済産業省の「製造基盤白書(ものづくり白書)2020年版」によって「ダイナミック・ケイパビリティとは、環境や状況が激しく変化する中で、企業が、その変化に対応して自己を変革する能力のことである」と定義されています。


SX推進における注意点

ここまで、SXの概要をその定義や背景を含めて紹介してきました。この章では実際にSXを推進する際に注意するべき点について説明します。

「企業のサステイナビリティー」と「社会のサステイナビリティー」の同期化

SXの核心は、企業のサステナビリティ社会のサステナビリティを同期化させることです。
これは単に環境に配慮した事業を行うだけでなく、その事業が企業の持続的な成長にも貢献することを意味します。

例えば、「環境保護のために赤字覚悟で事業を続けること」は、長期的には企業の存続を脅かし、結果として社会貢献もできなくなってしまいます

逆に、「短期的な利益のみを追求し環境問題を引き起こした場合」、長期的には事業継続が困難になります。

このバランスを取るためには、以下のような取り組みが重要です。

  1. 長期的視点での戦略立案
  2. ステークホルダーとの継続的な対話
  3. 環境・社会課題を事業機会として捉える視点
  4. 財務・非財務の両面からの企業価値評価


SXは大規模な変革を伴うため、一度に全てを変えようとするのではなく、段階的なアプローチが効果的です。
また、経営層から現場の従業員まで、全社的な理解と協力が不可欠です。

総じて、自社の状況に応じた適切なSX戦略を策定・実行することが重要です。


実際のSX推進事例

日本では、多くの企業がSXに積極的に取り組んでおり、政府もその活動を促進しています。

ここでは、具体的なSX推進事例を紹介します。

経済産業省による「SX銘柄」の選定

経済産業省は、東京証券取引所と協力して「SX銘柄」を選定しています。

この取り組みは、SXに関する企業の意識を高め、投資家にとっても有用な情報を提供しています。

経済産業省によるSX銘柄の選定
経済産業省によるSX銘柄の選定 参考:経産省


味の素株式会社によるSX推進事業

味の素株式会社では「アミノサイエンス®で人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を志(パーパス)として、2030年までに10億人の健康寿命を延伸し、環境負荷を50%削減するという目標のもとSXを推進しています。

SX促進の一部であるアミノサイエンス®の概要
SX促進の一部であるアミノサイエンス® 参考:味の素株式会社


株式会社日立コンサルティングによるSX推進事業

株式会社日立コンサルティングは、企業のSX推進を支援するコンサルティングサービスを提供しています。

では、経営層からSDGsやESG投資への対応を求められたが、何から着手すればいいか分からないといった悩みを抱える企業に対するコンサルティング業務を行っています。

株式会社日立コンサルティングによるSX推進事業
株式会社日立コンサルティングによるSX推進事業 参考:株式会社日立コンサルティング


まとめ

本記事では、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)について、その定義から背景、推進戦略、注意点、そして実際の取り組み事例まで幅広く解説しました。
SXは、企業の持続可能性と社会の持続可能性を同時に追求する重要な概念です。不確実性の高い現代社会において、SXは企業の長期的な生存と成長にとって不可欠な戦略となっています。

ダイナミック・ケイパビリティの強化やDXとの連携、段階的なアプローチ、全社的な理解と協力の獲得など、SXを成功させるためには様々な要素を考慮する必要があります。
日本でも多くの企業がSXに積極的に取り組んでおり、政府もその活動を後押ししています。これらの動きは、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となっています。

企業がSXを効果的に推進することで、自社の持続的な成長を実現すると同時に、社会全体の持続可能性にも貢献することができます。
本記事が、皆様のSX推進の一助となれば幸いです。

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坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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