この記事のポイント
- この記事は、三菱重工グループがMicrosoft Azureを活用し、全社共通のデータ分析基盤の構築を行った経緯とその効果について解説しています。
- Azureを核にした新しいデータ基盤により、データ準備時間が90%削減され、迅速な意思決定が可能となりました。
- 同時に、データ管理運営費用も50%削減するなど、経費の削減効果が実現されています。
監修者プロフィール
坂本将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
データ活用に課題を抱えていた三菱重工グループが、全社共通のデータ分析基盤への移行に際し、Microsoft Azureを核として採用した経緯とその効果についてご紹介します。巨大組織である同グループは、データのサイロ化解消と経費削減を目的とした体制変更が急務でした。Azure Synapse AnalyticsをはじめとするAzureファミリーの導入により、データ準備にかかる時間を大幅に削減し、迅速な意思決定を支援する基盤を構築。この記事では、三菱重工グループのデジタル変革を支えるデータ基盤構築の軌跡とその成果を、具体的な数字を交えて詳しく解説しています。
製造業界のAIおよびDX導入事例をご紹介します。製造業界では、IoTを用いたシステム、ロボット化の技術、ビッグデータを用いた活用が多く報告されています。AIの導入の活用法は、業界ごとに異なり、採用されるシステムも多様です。
この記事を通して 「導入アイデア・あなたに使えるサービス・導入のポイント」 の参考になれば幸いです。弊社ではAI導入の最初の窓口としてAI総合研究所を運営しています。導入のお悩みはご気軽に弊社にご相談ください。
三菱重工のAzure活用と全社データ基盤構築
【導入事例概要】
三菱重工グループ
三菱重工グループは国内外約300社から成る巨大組織です。2022年7月に全社共通のデータ分析基盤への移行を実施し、その中核としてMicrosoft Azureを採用しました。データベースプラットフォームとしてAzure Synapse Analyticsの利用を開始し、データの活用スピードと管理セキュリティを改善しています。
【導入の背景】
三菱重工グループでは、
時代の変化に応じたIT戦略の推進とデジタルトランスフォーメーション(DX)が必要とされていることに加えて、従来使用していたSAP ERPの現行バージョンのサポート終了が迫っていました。これまで個別に構築されていたデータ基盤では経費増加やデータのサイロ化が進んでおり、全社データを経営判断や意思決定に活用するための体制変更が求められていました。
【元々の課題】
三菱重工ではそれぞれの業務領域で個別にデータ基盤が構築されていたため、分析や意思決定プロセスにおいてそれらを統合する手間や時間がかかってしまうという課題がありました。複数の部門間でのデータの組み合わせには、集めて加工するための複雑な工程が必要であり、データ管理のコストも増加していました。
【解決策】
全社共通データ分析基盤の構築を並行して進めることで、データをグローバルに統合し、リアルタイムで経営情報を提供する体系を構築しました。Azure Synapse Analyticsを中心に、Azure Data Lake StorageやAzure SQL Database、Azure Storage、HDInsightなどを駆使し、データウェアハウスの性能と拡張性を兼ね備えた環境を導入。さらに、ETLツールとしてInformaticaを採用し、効果的なデータカタログ構成を実現しました。
Azure-Synapse-Analyticsの導入
【効果】
データ準備にかかる時間が90%削減され、迅速な意思決定が可能に。また、データ管理運営費用は50%削減されるなど経費削減も実現しました。高速かつセキュアなデータ管理を通じて今後の収益力強化が見込まれます。これにより、データドリブン経営を進める土台が築かれ、今後の三菱重工グループのデジタル変革の基盤となっていくことが期待されます。