この記事のポイント
- この記事はASPLOS 2024でマイクロソフトによって披露された研究成果について説明しています。
- マイクロソフトの研究チームは、AIやディープラーニングを含む幅広い分野で、8つの革新的な論文を採択されました。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
コンピュータシステムの将来像を探るASPLOS(アーキテクチャ、プログラミング言語、オペレーティングシステム)2024年の国際会議において、マイクロソフトの研究チームが現代のアプリケーションに必要とされる、セキュリティと効率性を高めるための革新的な技術を発表しました。
この会議は、コンピュータシステムに関する最新研究を発表するために重要なフォーラムであり、マイクロソフトは、GPUの電力管理からプロセッシングインメモリの活用、メモリセーフティの向上まで、多彩なトピックで研究成果を披露し、8つの論文が採択されました。
本記事では、マイクロソフト研究チームのこれら技術革新が、コンピュータシステムの発展や現代アプリケーションのセキュリティと効率性にどのような影響を与えるのか、詳細に解説します。
マイクロソフト、ASPLOS 2024でコンピュータシステムの未来を提示
2024年4月、マイクロソフトは、「プログラミング言語とオペレーティングシステムのためのアーキテクチャサポート国際会議(ASPLOS)」で、現代のコンピューターシステムとアプリケーションに関する前例のない規模、複雑さ、セキュリティニーズに対応するための新しい研究成果を発表しました。
このイベントは、研究者がアーキテクチャ、プログラミング言語、オペレーティングシステム間のギャップを埋めるための主要なフォーラムと位置づけられており、多くのプロフェッショナルが集結します。
マイクロソフトは、会議の組織において重要な役割を果たし、8つの革新的な論文を採択されました。
これらの論文は、AIとディープラーニングの分野における、GPUの電力と周波数管理、プロセスインメモリの使用、インストゥルメンテーションフレームワーク、メモリセーフティ、I/Oプリフェッチング、仮想マシンのスマートなオーバーサブスクリプションなど、幅広いトピックにわたっています。
カンファレンスで採択された論文の一部
マイクロソフトの研究成果:AIとディープラーニングの技術革新
マイクロソフトの研究者たちは、AIとディープラーニングの技術を進化させるための新たな方法を提案しています。
例えば、一つの論文では、LLM(Large Language Models)クラスターの電力使用状況を特徴付け、GPUフリートの拡張において電力が重要な制限要因であることを指摘し、推論クラスターにおける電力オーバーサブスクリプションのための余裕を明らかにしています。
また、市販のプロセッシングインメモリ(PIM)システム向けの初のディープラーニングフレームワークであるPIM-DLを通じて、従来の計算量の多い行列乗算操作を省略し、PIMハードウェアの計算上の制限を克服します。
このような研究は、AIとディープラーニングの分野におけるマイクロソフトのリーダーシップをさらに強化するものです。
セキュリティと効率を向上させるマイクロソフトの新技術
マイクロソフトはセキュリティと効率の向上にも注力しており、CHERI能力アーキテクチャを基盤としたメモリセーフティの研究を通じて、オブジェクト粒度のヒープ時間的セーフティを低いオーバーヘッドで実現する方法を提示しています。
この技術は、メモリセーフティのバグを減らすことで、ソフトウェアの脆弱性を大幅に減少させることができます。
さらに、バースタブル仮想マシン(BVM)のオーバーサブスクリプションのための畳み込みベースのリソースアロケータが紹介され、クラウド内で一時的なリソース割り当ての増加を可能にする革新的なアプローチ、AUDIBLEを開発しました。
これらの技術は、クラウドサービスの効率とセキュリティを同時に高めることを目指しています。
出典:Microsoft