この記事のポイント
- AI開発に適したプログラミング言語5選を比較解説
- 各言語の特徴、メリット、デメリット、使用例を紹介
- プログラミング言語選択のポイントや有名ライブラリも解説
- 自社でAI開発を行う際のステップと注意点を紹介
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
AI開発に適したプログラミング言語は複数存在し、プロジェクトの目的やチームのスキルによって最適な選択が変わります。
この記事では、Python、C/C++、R言語、Julia、JavaScriptの5つの言語に絞って、それぞれの特徴、メリット、デメリット、使用例を比較解説します。
また、言語選択のポイントや有名なライブラリ、自社でAI開発を行う際のステップなども紹介し、初心者から中級者まで、AI開発に関心のある読者に有益な情報を提供します。
適切な言語選択により、AI開発の可能性を最大限に引き出しましょう。
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目次
AI開発に適したプログラミング言語5選
AI開発を成功させるためには、プロジェクトの目的や性質に合わせて適切なプログラミング言語を選択することが重要です。
ここでは、AI開発に適した5つの言語を取り上げ、それぞれの特徴、メリット、デメリット、使用例を詳しく解説します。
Python
【特徴】
Pythonは、シンプルで読みやすい構文を持つ言語として知られています。
豊富な機械学習およびディープラーニングライブラリと合わせて、このアクセシビリティの高さがPythonをAI開発分野で最も人気のある言語の一つにしています。
【メリット】
Pythonの主なメリットは、優れたライブラリエコシステムにあります。TensorFlow、Keras、PyTorchなどのライブラリがAI開発を加速し、複雑なアルゴリズムも扱いやすくしてくれます。
また、広大なコミュニティからのサポートもあり、様々な問題に対するソリューションを見つけやすいのも魅力です。
【デメリット】
Pythonの主な欠点は、実行速度の遅さです。インタプリタ言語であるため、コンパイル言語と比べると実行速度が落ちる傾向にあります。
ただし、多くの場合、ライブラリがC言語やC++で書かれたバックエンドに依存しているため、この問題はある程度緩和されます。
【使用例】
データサイエンス、機械学習、ディープラーニングなどの分野で広く使われています。
Pythonを使ったAI開発の事例として、OpenAIのGPT-3があります。このモデルはPythonとPyTorchを使って開発されました。
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C/C++
【特徴】
C/C++は、高速な実行速度とハードウェアへの密接なアクセスを提供します。リソースが限られている環境や、高度な計算性能が求められるAIアプリケーションに適しています。
【メリット】
最大のメリットは、高速な実行性能です。AIモデルのトレーニングや推論プロセスを高速化できるため、大規模なデータセットを扱う場合に威力を発揮します。
また、ハードウェアに近いレベルでのプログラミングが可能で、パフォーマンスの最適化が行えるのも魅力です。
【デメリット】
学習曲線が急で、記述が煩雑になりがちなのがデメリットです。また、メモリ管理など、安全性を確保するための追加の注意が必要となります。初心者にとってはハードルが高い言語と言えるでしょう。
【使用例】
高性能が必要なシステム、組込みシステム、リアルタイム処理などの分野で活用されています。
C++を使ったAI開発の事例として、Google DeepMindのAlphaFoldが挙げられます。
AlphaFoldは、タンパク質の立体構造を高い精度で予測するAIシステムです。このシステムはC++を使って開発され、高速な計算性能を実現しています。
R言語
【特徴】
R言語は、統計解析とデータ可視化に特化したプログラミング言語です。データ集約型のAIプロジェクト、特に統計的手法を多用するプロジェクトに適しています。
【メリット】
強力な統計解析機能と豊富なデータ可視化ライブラリがR言語の大きな魅力です。CRANには特定の統計手法に特化した多くのパッケージが用意されており、高度な分析を行うのに便利です。
【デメリット】
R言語は汎用プログラミング言語ではないため、統計解析以外の目的での使用は限定的です。また、大規模データセットの処理性能がPythonなどの他の言語に比べて低い場合があります。
【使用例】
R言語は、統計解析、データ可視化、データマイニングなどの分野で重宝されています。特に、学術研究や統計モデリングの領域で広く使われています。
R言語を使ったAI開発の事例として、金融機関における与信スコアリングモデルの開発があります。与信スコアリングモデルは、顧客の信用リスクを評価するためのモデルで、R言語の統計解析機能を活用して開発されることが多いです。
Julia
【特徴】
Juliaは高性能な数値計算が可能なプログラミング言語で、高速な実行速度とシンプルな構文を兼ね備えています。PythonやRのような生産性とCのような性能を目指して設計されました。
【メリット】
高速な実行速度はJuliaの最大のメリットであり、複雑な数値計算や大規模なデータ処理が求められるAI開発に適しています。また、他の言語のライブラリをJuliaから直接利用できるため、既存のリソースを活用しやすいのも魅力です。
【デメリット】
比較的新しい言語であるため、PythonやRほどの広範なライブラリやコミュニティサポートがまだ充実していません。そのため、特定の問題に対する解決策を見つけるのが難しい場合があります。
【使用例】
科学計算、機械学習、数値シミュレーションなどの分野で使われ始めています。
Juliaを使ったAI開発の事例として、MIT Lincoln LaboratoryのAIベースの航空交通管制システムがあります。
このシステムは、機械学習アルゴリズムを使って航空機の最適な経路を計算し、安全で効率的な航空交通管制を実現しています。
JavaScript
【特徴】
JavaScriptはウェブ開発に広く用いられる言語で、TensorFlow.jsなどのライブラリを通じてブラウザ上でのAI開発を可能にします。
【メリット】
ウェブベースのAIアプリケーションを容易に開発できることがJavaScriptの大きな利点です。フロントエンドとバックエンドの両方で使用でき、開発プロセスを統一できるのも魅力的です。
【デメリット】
AI開発専用言語ではないため、Pythonなどに比べて機械学習やディープラーニングのためのリソースやコミュニティのサポートが限られています。また、ブラウザの性能制限により、大規模なモデルのトレーニングには不向きです。
【使用例】
ブラウザベースのAIアプリケーション、ウェブアプリへのAI機能の統合などに活用されています。
JavaScriptを使ったAI開発の事例として、ブラウザベースの機械学習ツールであるTensorFlow.jsがあります。
TensorFlow.jsを使うことで、ウェブブラウザ上で機械学習モデルのトレーニングや推論を行うことができます。
これにより、ウェブアプリケーションにAI機能を容易に組み込むことが可能になります。
AI開発におけるプログラミング言語選択のポイント
AI開発プロジェクトでプログラミング言語を選択する際には、プロジェクトの要求に応じていくつかの重要な点を考慮する必要があります。
以下に、言語選択の際に押さえておくべき5つのポイントを紹介します。
学習コストと理解のしやすさ
AI開発における効率と成長を考えると、学習コストが低く、直感的に理解しやすい言語を選ぶことが非常に重要です。
チームメンバーが新しい技術を迅速に習得し、プロジェクトへの貢献を早期から開始できるようにするため、可読性が高く、書きやすい言語が推奨されます。
教材の豊富さ
豊富な教材とリソースの存在は、学習プロセスを加速し、より多くの技術的課題への対処能力をチームにもたらします。
オンライン講座、チュートリアル、フォーラム、ドキュメントが充実している言語は、開発チームの知識ベースを拡大しやすくなります。
AI開発への対応度合い
AIプロジェクトでは、ライブラリやフレームワークの利用が一般的です。強力な機械学習ライブラリやディープラーニングフレームワークを備えた言語は、開発プロセスの簡素化と高速化に寄与します。
また、オープンソースのコミュニティが活発である言語は、広範な知識とサポートを提供してくれます。
フレームワークのサポート
特定のフレームワークやツールセットとの互換性も重要な選定基準です。プロジェクトに必要な機能を備え、かつ使用したいフレームワークに対応している言語を選ぶことで、開発の効率化と品質の向上が見込めます。
言語の人気とコミュニティのサイズ
人気のある言語は、大規模な開発コミュニティを持ち、豊富なリソース、ライブラリ、フレームワークを利用できます。
このような言語を選択することで、開発プロセス中に遭遇するかもしれない問題に対するサポートを容易に受けることができます。
以上の点を考慮しながら、プロジェクトの目的とチームの能力に最も適した言語を選択することが、AI開発の成功につながります。
AI開発の際に知っておきべきライブラリ3選
AI開発をする際には、有名なライブラリを活用することで開発の効率化と品質向上が期待できます。ここでは、知っておくべき3つの有名ライブラリを紹介します。
「TensorFlow」
TensorFlowは、Googleによって開発されたオープンソースのディープラーニングライブラリです。
その名の通り、データの流れ(テンソルの流れ)をグラフによって表現し、複雑なニューラルネットワークの訓練と展開を行うことができます。
TensorFlowは、柔軟性が高く、モデルの定義から訓練、デプロイまでを一貫してサポートします。また、TensorFlow 2.xからはKeras APIが標準で統合され、より直感的で簡単にモデルを構築できるようになりました。
このライブラリは、自然言語処理、コンピュータビジョン、音声認識など、幅広い領域で利用されています。
「PyTorch」
PyTorchは、Meta(旧Facebook)のAI研究部門によって開発された、オープンソースのディープラーニングフレームワークです。
Pythonに深く統合されており、NumPyのような直感的な操作感で深層学習モデルを構築し、高速に訓練することができます。
PyTorchの最大の特徴は、動的計算グラフ(Dynamic Computation Graph)を採用している点にあります。これにより、実行時にネットワークの構造を変更することが可能となり、研究目的やプロトタイピングに特に適しています。
また、PyTorchは強力なGPU活用機能を持っており、GPUを用いた高速な計算が容易に実装できます。これにより、大規模なモデルの訓練や推論を効率的に行うことができます。
さらに、分散訓練のサポートも特徴の一つです。複数のGPUやマシンを用いて、大規模なモデルを効率的に訓練できます。
「Keras」
Kerasは、Pythonで記述された高水準のニューラルネットワークAPIで、TensorFlow、Theano、CNTKなど複数のバックエンドエンジン上で動作します。
開発者であるFrançois Cholletによって作成され、使いやすさを最優先に設計されています。
Kerasは、初心者にも扱いやすく、複雑なモデルを数行のコードで構築できるため、プロトタイピングや教育目的に広く用いられています。
自社でAI開発を行う方法
自社でAI開発を行う際は、以下のようなステップで進めるのが一般的です。
目的の明確化とデータの準備
まず、開発するAIの目的を明確にし、必要なデータの収集と開発方法を計画します。
AIの性能は、トレーニングに使用するデータの品質に大きく依存するため、データの収集と前処理は非常に重要なステップです。
開発体制の整備
次に、AIモデルの設計と開発に必要な技術スタッフを確保し、開発環境(ソフトウェア、ハードウェア)を整備します。
必要に応じて、外部の専門家やコンサルタントとの連携も検討します。
モデルの設計と実装
データの準備と開発体制の整備が完了したら、AIモデルの設計と実装を行います。
選択したプログラミング言語とライブラリを活用し、目的に合ったモデルアーキテクチャを構築します。
テストと評価
実装されたAIモデルは、テストデータを用いて評価を行います。
性能の確認と、過学習や未学習などの問題の有無をチェックします。必要に応じて、ハイパーパラメータの調整や、モデルの修正を行います。
デプロイと運用
テストと評価を経て、AIモデルを実際のサービスや製品に組み込みます。運用開始後も、モデルの性能を継続的にモニタリングし、必要に応じて更新や改善を行います。
以上のステップを着実に進めることで、自社でのAI開発を成功に導くことができます。ただし、AIの開発には高度な専門知識が必要であるため、社内の体制だけでは対応が難しい場合もあります。
そのような場合は、外部の専門家やAI開発サービスの活用も検討しましょう。
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まとめ
この記事では、AI開発に適したプログラミング言語について、Python、C/C++、R言語、Julia、JavaScriptの5つの言語を比較しながら解説しました。それぞれの言語には特徴があり、プロジェクトの目的やチームのスキルに合わせて適切な言語を選択することが重要です。
また、プログラミング言語選択の際に考慮すべきポイントや、TensorFlow、PyTorch、Kerasなどの有名ライブラリについても紹介しました。自社でAI開発を行う際のステップと注意点についても解説し、AI開発に関心のある読者に役立つ情報を提供しました。
AI開発の成功には、適切な言語、ライブラリ、開発体制の選択が欠かせません。この記事で紹介した内容を参考に、自社のAI開発プロジェクトを効果的に進めていただければ幸いです。AI開発の可能性は無限大です。適切な選択と努力で、その可能性を最大限に引き出していきましょう。