この記事のポイント
- NGワードには差別的表現、違法行為、プライバシー侵害などが含まれる
- 学習データの偏りや文脈理解の限界がNGワード生成の主な原因
- NGワードは倫理的問題や法的リスクをもたらす可能性がある
- ガイドラインの遵守とフィルタリング機能の活用が有効な対策
- ユーザー自身も適切な利用を心がけることが重要
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
AI技術が急速に進歩する中で、その応用例として注目されているのが、自然言語処理を駆使したチャットボット「ChatGPT」です。
しかし、ChatGPTには利用上注意すべき「NGワード」が存在し、これが生成する内容に制限をもたらします。
本記事では、どのような言葉がNGワードに該当し、そもそもなぜNGワードが設定されているのか、またこれがChatGPTの利用にどのような影響を与えるかを明らかにします。加えて、NGワードを回避し、より適切にChatGPTを活用するための方法についても考察します。
ChatGPTの可能性を最大限に引き出しながら、倫理的かつ法的なリスクを管理するための知識を得るための一助となれば幸いです。
最新モデル、OpenAI o1(o1-preview)について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください⬇️
OpenAI o1(ChatGPT o1)とは?その特徴や使い方、料金体系を徹底解説!
目次
ChatGPTのNGワードとは
ChatGPTにおけるNGワードとは、ChatGPTが生成してはいけないと設定されている単語やフレーズのことを指します。
これらのNGワードは、主に倫理的に問題のある言葉や表現、法的にリスクのある内容、セキュリティやプライバシーに関連する用語などが含まれます。
差別的な言葉や攻撃的な表現
まず、差別的な言葉や攻撃的な表現がNGワードに該当します。
特定の人種、宗教、性別、性的指向、身体的能力などの属性に基づいて個人や集団を軽視、侮辱、攻撃するような言葉や表現は、OpenAIの利用規約により禁止されています。
法的に問題のある内容
また、法的に問題のある内容もNGワードに含まれます。これには、不法行為の促進や支援、暴力や危険行為の推奨、著作権侵害、不適切な性的コンテンツなどが該当します。
ChatGPTは、これらの違法な行為や有害なコンテンツに関連する情報を提供することはできません。
セキュリティやプライバシーに関連する用語
さらに、セキュリティやプライバシーに関連する用語もNGワードとして設定されています。
個人の同意を得ずにその人を追跡したり、顔認識技術で特定したり、保護された特性に基づいて分類したりするような行為に関連する言葉は、ChatGPTが生成する内容から除外されます。
これらのNGワードは、ChatGPTの利用における倫理的・法的なリスクを最小限に抑えるために設定されています。ユーザーはこれらのガイドラインを理解し、適切な利用を心がける必要があります。
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ChatGPTがNGワードを生成してしまう理由
ChatGPTがNGワードを生成してしまう主な理由は、以下の2つが挙げられます。
学習データの偏り
ChatGPTは大量のインターネット上のテキストデータを用いて学習されていますが、データに含まれる差別的な表現や暴力的な表現なども学習してしまう可能性があります。
このような学習データの偏りが、NGワードの生成につながってしまうのです。
文脈理解の限界
もう一つの理由は、ChatGPTの文脈理解の限界です。ChatGPTは与えられた文脈から適切な文章を生成するように設計されていますが、その理解は完璧ではありません。
例えば、ユーザーが「あるグループについての歴史的な事実を教えて」と尋ねた場合、ChatGPTはそのグループに対する差別的な表現を含む文章を生成してしまうかもしれません。
これは、ChatGPTが歴史的な文脈を正しく理解できていないためです。
また、ユーザーが皮肉や冗談を交えて質問した場合、ChatGPTはその真意を汲み取れずに、不適切な応答を返してしまう可能性もあります。
これは、ChatGPTが人間のように微妙なニュアンスや非言語的なコンテキストを理解することが難しいためです。
このように、学習データの偏りと文脈理解の限界が、ChatGPTによるNGワードの生成につながっています。
ChatGPTのNGワードがもたらす問題
ChatGPTのNGワードは、倫理的・法的な問題を引き起こす可能性があります。
倫理的な問題
倫理的な観点からは、差別的な表現や暴力的な表現を含むコンテンツは、ユーザーに不快感を与えるだけでなく、社会的な分断や偏見を助長する恐れがあります。
このようなコンテンツが広く拡散されることで、マイノリティに対する差別や偏見が増幅され、社会全体に悪影響を及ぼすことが懸念されます。
法的な問題
また、ChatGPTが違法行為や犯罪行為を助長するようなコンテンツを生成した場合、たとえそれが実際に実行されなくても、利用者は法的責任を問われる可能性があります。
例えば、ChatGPTが違法薬物の製造方法や、ハッキングの手順を詳細に説明するようなコンテンツを生成した場合、それが犯罪行為を助長していると見なされ、法的な問題に発展する恐れがあります。
実際に、2023年3月には、Snapchatのチャットボット「My AI」が違法薬物の製造方法を説明するなどの不適切な応答をしたことが報告されました。
この事例は、AIチャットボットがNGワードを生成することによる法的リスクを如実に示しています。
企業はこれらの問題を未然に防ぐために、ガイドラインの徹底やフィルタリングの導入など、適切な対策を講じる必要があります。
NGワードに起因する倫理的・法的問題は、ChatGPTに限らず、他の言語モデルやAIチャットボットにも共通する課題です。
AIの健全な発展のためには、継続的な取り組みが求められます。
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ChatGPTのNGワード問題への対策
ChatGPTのNGワード問題に対処するためには、以下のような対策が有効です。
ガイドラインの徹底
まず、ChatGPTの利用に際しては、NGワードに関する明確なガイドラインを設定し、ユーザーに周知徹底することが重要です。
OpenAIでは、差別的や暴力的な表現の禁止、プライバシーの尊重、法的な問題に対する警告などを含む利用規約を定めています。
ユーザーはこれらのガイドラインを遵守することが求められ、違反があった場合には適切な措置が取られることを理解しておく必要があります。
フィルタリングの導入
また、フィルタリング機能を導入することで、NGワードを含む不適切な内容の生成を防ぐことができます。ユーザーがChatGPTに対して特定のトピックやキーワードを指定し、関連する不適切な表現を回答の候補から除外するように設定できます。
これにより、問題のあるコンテンツが生成されるリスクを最小限に抑えることが可能です。
ただし、フィルタリングにも限界があります。NGワードのリストを網羅的に作成することは難しく、また、文脈によっては本来は問題のない言葉が不適切となる場合もあります。
そのため、フィルタリングと並行して、ChatGPTの文脈理解力を向上させる取り組みが必要不可欠です。
ユーザーもまた、ChatGPTとのインタラクションにおいて、倫理的で適切な利用を心がける必要があります。差別的な表現や違法な行為を助長するような質問を避け、建設的で生産的な対話を心がけることが重要です。
ChatGPTを適切に活用するためには、ガイドラインの遵守とユーザー自身の意識が不可欠なのです。
まとめ
この記事では、ChatGPTのNGワードについて詳しく解説しました。差別的な表現、暴力的な表現、法的に問題のある内容などがNGワードに含まれ、その主な原因は学習データの偏りとChatGPTの文脈理解の限界にあります。
NGワードが生成されることで、倫理的・法的な問題が引き起こされる可能性があります。これらの問題に対処するためには、ガイドラインの徹底とフィルタリングの導入、そしてChatGPTの文脈理解力の向上が必要です。
ユーザーもまた、倫理的で適切なChatGPTの利用を心がける必要があります。ChatGPTのNGワード問題は、AIチャットボット全般に共通する課題であり、その解決には継続的な努力が求められます。