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生成AIとは?定義やメリット、従来のAIとの違いや将来展望を徹底解説!

この記事のポイント

  • 生成AIは新しいテキストや画像などのコンテンツを生み出すAI技術
  • ディープラーニングを基礎とし、テキスト、画像、音楽、動画など様々な形態のコンテンツを生成
  • ビジネス界に大きな可能性をもたらす一方、著作権や倫理的な課題も提示
  • 様々な業界での活用事例が増加し、業務効率化やサービスの革新に貢献
  • 生成AIの社会的影響を理解し、責任を持って活用するための対策が求められる

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

生成AI(ジェネレーティブAI)とは、新たなデータを生成することを目的とした人工知能の総称です。
既存の情報から学習し、テキストや画像、音楽、動画など様々な形のまったく新しいコンテンツを創造します。ビジネス界に大きな可能性を秘める一方、課題も提示しています。

本記事では、生成AIの基本概念から技術的背景、登場の経緯、そして産業界全体への影響を広く解説します。法規制の現状や将来の役割、企業や個人が直面する課題なども多角的に論じます。

AI技術が社会に与える影響を深く理解し、責任を持って活用するにはどのような対策が必要でしょうか。AIへの理解を深め、安全で有益な利用法の探求が今後ますます重要になるでしょう

生成AI(ジェネレーティブAI)とは?

生成AI(ジェネレーティブAI)とは、新しいコンテンツやデータを生成するために設計された人工知能の一種です。

AIには様々な種類がありますが、生成AIと呼ばれる一連のAIは、既存のデータや情報から学習して、テキスト、画像、音楽、ビデオなどの 「新しいオリジナルのコンテンツ」を作成する能力を持っています。

この能力の根幹にあるのは、「ディープラーニング」という手法です。
ディープラーニングは、大量のデータからパターンや規則性を抽出し、それらを基に新しいデータを生成することができます。

生成AIがマスコミなど盛んに報じられるようになったのは、2022年ごろです。
人工知能の開発企業であるOpenAIから、2022年11月にリリースされたChatGPTが世界中で話題になったことが大きなきっかけとなっています。

とはいえ、2020年代に入ってからいきなり現れた手法というわけではなく、ディープラーニングという手法自体は2010年代ごろに研究者の界隈で盛り上がりを見せ、発展してきた背景があります。


生成AIの仕組み

生成AI一つとってみても様々な種類があり、それぞれ複数の技術が使用されています。

全てを説明することは難しいので、ここでは生成AIの基盤となっている技術、機械学習とディープラーニング(深層学習)について説明します。

あくまでも、「実用されている生成AIは、ディープラーニングを基礎としながらも、そこに付け加えて様々な技術が用いられている」ということを念頭においておきましょう。

機械学習

機械学習は、コンピューターに人間のように学習する能力を持たせる技術の一つです。
簡単に言うと、人間が経験から学ぶように、機械学習を使ったコンピューターやプログラムはデータからパターンを見つけ出し、新しい情報を予測することができるようになります。

機械学習では、大量のデータを分析して、その中のパターンや規則性を見つけ出し、そのパターンを使って、新しいデータに対して予測や判断を下します。

これにより、人間が一つ一つプログラムを書いて指示を出す代わりに、コンピューター自身が「学習」して、さまざまなタスクを自動で行えるようになります。

【関連記事】
➡️AIと機械学習(ML)の違いは?それぞれの仕組みを踏まえて徹底解説!

ディープラーニング

機械学習の一部分、あるいは特化した形としてあるのが「ディープラーニング(深層学習)」です。
ディープラーニングは、「ニューラルネットワーク」と呼ばれるシステムを使います。

ニューラルネットワークは、一言で言えば、「人間の脳みそが行う情報処理方法のモノマネ/模倣」です。
あくまでも模倣なので、現在使われている技術においては、完全に人間の脳と同じ仕組みで動いているものはありませんが、人間の脳を模倣することで、とても高い性能を手に入れることができたのです。

生成AIの背景には、このようなディープラーニングの技術的な発展があります。


生成AIと従来のAIの違い

従来のAIと生成AIの主な違いは、「解析や判断を行う」ことに重点を置くか、「新しいものを創造する」ことに重点を置くかにあります。

そのことを示しているのが下図です。
AI

従来のAIの用途として代表的なのは、チェスや将棋のAI、検索エンジン、あるいは簡単な質問に答えるチャットボットなどです。
これらは、「もしXが起こったらYを行う」というような具体的な指示に基づいて動作することが多いです。


その一方で、生成AIは、テキスト、画像、音楽、ビデオなど、まったく新しいものを作り出すことできます。

例えば、ある画像に基づいて新しい画像を生成する、またはユーザーの入力した文章に基づいて物語を作り出すなどがあります。

【関連記事】
➡️AI(人工知能)の種類は?その分類・仕組みから、メリットや活用例も解説

AIにおける生成AIの関係性
AIにおける生成AIの関係性


生成AIの種類

生成AIの仕組みや、従来のAIとの違いを概観したところで、具体的に生成AIの内実を見ていきましょう。

先ほど述べたように、生成AIの種類は多様であり、生成できるコンテンツの種類は多岐にわたります。

生成AIでできること
生成AIの種類


ここでは4種類を紹介していますが、それぞれの内容を把握した上で、適切に使い分けたり、組み合わせていくことが大切です。

テキスト生成AI

テキスト生成AIは、文章から新たな文章を生成するAIです。
既存の文章や特定の条件を元に新しい文章を作り出したりすることはもちろん、ある文章を要約したり、翻訳することも可能です。

このように、人間の書く小説のような文体で文章を生成させることもできるのです。

テキスト生成AIでよく使われる仕組み

テキスト生成AIで使われる技術において、特に代表的なのが、「Transformer」というモデルです。
このモデルは、大量のテキストデータを学習することで、言葉の使い方、文法、文脈などの言語のパターンを理解しています。

Transformerの特徴は、「自己注意機構(Self-Attention Mechanism)」にあります。
これは、文章の中で各単語がどのように関連しているかをモデルが自動で学習できるようにする技術です。

:::messsage
例えば、「彼は公園に行った。彼は楽しかった。」という文があったとき、2つ目の「彼」が指すのは「公園に行った人」であることを、このモデルは理解できます。
このように、Transformerは文章全体の文脈を捉えながら、各単語の意味を正確に解釈できるのです。

従来のモデルでは、文章を一直線に処理していき、文の先頭と末尾の関連を捉えるのが難しいとされていました。
しかし、Transformerは文全体を一度に見渡すことができ、各単語間の関係性をより正確に理解することが可能になりました。
:::


これにより、文章の意味をより深く、正確に捉えることができるようになったのです。

テキスト生成AIの活用例

このような技術に基づくテキスト生成AIは、以下のような分野で活用できるでしょう。

・自動翻訳: 異なる言語間でのテキストの翻訳。

・要約: 長い文章や記事を短い要約文にする。

・質問応答システム: ユーザーの質問に対して、適切な回答の生成を行う。

・コード生成: プログラミングの課題に対して、コードの提案や生成を行う。

【代表的なテキスト生成AIサービス】

画像生成AI

画像生成AIはプロンプトと呼ばれる文章を入力することによって画像を出力させることができます。

以下は、Midjourneyという画像生成AI利用サービスを使って生成した事例です。

Mid_Image.1
画像生成AI_事例.1

Mid_Image.2
画像生成AI_事例.2

この絵を生み出すためにかかった時間は1分にも満たないです。

最初の画像は、以下のプロンプトを入力しています。

japanese nice guy , Self portrait --aspect 3:2


ここでは「Self portrait」というワードが、構図や質感を大きく規定するキーワードとなっています。

次の油絵具で描いたようなスクラブル交差点の画像は以下のプロンプトを入力しています。

Oil painting, Shibuya Scrabble crossing, --aspect 3:2

画像生成AIでよく使われる仕組み

画像生成AIで使われる代表的な技術には、「生成的敵対ネットワーク(GAN)」、「変分オートエンコーダ(VAE)」、そして「拡散モデル(Diffusion Model)」があります。
これらの技術は、それぞれ異なるアプローチを用いて新しい画像を生成します。

また、最近の画像生成AIでは、拡散モデル(Diffusion Model)が注目されています。この技術は、ユーザーが入力する言葉や画像をもとに、規則性のない画像(ノイズ画像)から画像を生成します。

例えば、画家が白いキャンバス(規則性のない平面)に対して、一つ二つと線を引いていき、だんだんと形を発見していくようなプロセスと似ています。
このような、ノイズから絵を生成するというプロセスは、人間のもつ創発性とかなり近いとされています。

画像生成AIの活用例

画像生成AIは、クリエイティブな作業をサポートし、新しいアイデアを提供するだけでなく、様々な分野での効率化やイノベーションを促進する可能性を秘めています。

例えば、以下のような活用例があります。

・ファッションデザイン: 新しい服のデザインを自動で生成する。

・インテリアデザイン: 部屋の装飾や配置を提案するための画像を生成する。

・教育資料の作成: 学校の教科書や教材で使用するイラストや図解を自動で生成する。

・映画やアニメーション: 背景画や特殊効果の一部をAIで生成し、制作コストを削減する。

【代表的な動画生成AIサービス】

動画生成AI

動画生成AIは、テキストや静止画、簡単なスケッチからリアルな動画を自動で生成する技術です。

このAIを使うと、実際には存在しない人物の動きや、まだ撮影されていない風景の動画を作り出すことができます。

例えば、「夕日が沈む海辺で犬が走る動画」のような特定のシーンをテキストで指示するだけで、その通りの動画を生成することが可能です。

この事例は、OpenAIが発表した動画生成AIの「Sora」によるものです。所々の細部ではおかしい点がありますが、ほとんど気にならないほど、洗練された実写映像が生成可能となっています。

動画生成AIは、各種生成AIの中でも未だ発展途上のような位置付けでしたが、この発表によってより注目を集めています。

動画生成AIでよく使われる仕組み

動画生成AIに使われる代表的な技術には「VQ-VAE」、「GAN(生成的敵対ネットワーク)」、「拡散モデル(Diffusion Model)」があります。

動画生成AIの活用例

動画生成AIは、エンターテイメントやアートから教育まで、様々な分野で活用されていくでしょう。

・映画やCMの予告編制作: 既存の映像素材から新しい予告編を自動生成する。

・教育用コンテンツ: 歴史的な出来事や科学的なプロセスを説明する動画を自動生成する。

・ゲーム開発: ゲーム内で使われる背景やキャラクターの動きを自動で生成することで、開発の効率化を図る。

・アートとエンターテイメント: 新しい形のアート作品を生み出したり、音楽ビデオのビジュアルを生成したりする。

【代表的な動画生成AIサービス】

音楽・音声生成AI

音楽・音声生成AIは、人間のように音楽を作ったり、話したりする音声を生成する技術です。

このAIを使うと、特定の指示やデータに基づいて、新しい曲や話し言葉を作り出すことができます。

例えば、「幸せな気分になるピアノ曲」や「ニュース記事を読み上げる音声」のような要求に応じて、それに合った音楽や音声を自動で生成することが可能です。


こちらは、OpenAIが公開している「MuseNet」というサービスの実例です。

音楽・音声生成AIでよく使われる仕組み

音楽・音声生成AIにはいくつかの興味深い技術があり、その中でも特に注目されているのが「WaveNet」、「MuseNet」、そして「Jukebox」です。

MuseNetは大量の音楽ファイルを学習し,様々なジャンルやスタイルの音楽を作成しているようです。
ここでも、テキスト生成AIと同じ「Transformer」という種類のニューラルネットワークが使用されています。

ある音符から次の音符へと予測を行い,それを繰り返すことで新しい音楽を作り出しています。

音楽・音声生成AIの活用例

音楽・音声生成AIは、エンターテイメントから教育、ビジネスコミュニケーションまで、幅広い分野での活用が期待されています。

この技術により、音楽や音声コンテンツの制作がより簡単に、そして創造的になるでしょう。

・カスタマイズされた着信音: 個人の好みに合わせて自動生成される電話の着信音

・オーディオブック: 書籍や記事を自然な話し言葉で読み上げる。

・ゲームや映画のサウンドトラック: シーンに合わせて自動で音楽や効果音を生成する。

・言語学習: 特定の言語の発音を正確に模倣した音声を生成し、言語学習をサポートする。

ここでは、「生成できるコンテンツ」の多様さを強調しましたが、それらのコンテンツを組み合わせることで様々な問題解決ができるようになります。

【代表的な音楽・音声生成AIサービス】


生成AIのメリットとデメリット

生成AIは、私たちの生活や仕事を豊かにする大きな可能性を持っていますが、その使用には責任が伴います。

以下に、メリットとデメリットを記載しましたが、生成AIを実際に活用する現場などでは、これ以外のケースも存在するでしょう。

生成AI活用のメリット

生成AIは、クリエイティブな作品の生成、時間とコストの節約、パーソナライズされたコンテンツの提供など、様々な面でメリットをもたらします。
ここでは、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

|クリエイティブな作品の生成

生成AIは、テキストだけでなく音楽、画像、文章などを作り出すことができます。

これによって、作家は、新しいアイデアを得たり、インスピレーションを受けたりすることができますし、ビジネスに関わる人々にとっても、ビジュアル事例が豊富な資料やアイデアのプロトタイピングに使うことができます。

|時間とコストの節約

例えば、映画やゲームの背景を手作業で一つ一つ描く代わりに、生成AIを使って自動で生成することができます。

これにより、制作にかかる時間やコストを大幅に削減できます。

|パーソナライズされたコンテンツ

生成AIは、個々のユーザーの好みに合わせて、パーソナライズされた音楽や記事を生成することができます。

これにより、より個人的で満足度の高い体験を提供できます。

生成AI活用のデメリット

生成AIの活用には、いくつかの課題や注意点も存在します。
ここでは、主要なデメリットについて説明します。

|著作権や倫理的な問題

AIが既存の作品を基に新しい作品を生成する場合、著作権の侵害になる可能性があります。

また、偽情報を生成したり、人の声や顔を無断で使用したりすることは、倫理的な問題を引き起こすことがあります。

|品質のばらつき

生成AIによって作られたコンテンツは、時には人間のクリエイターが作るものに比べて品質が劣ることがあります。

特に、感情や繊細なニュアンスを表現することは難しい場合があります。

【関連記事】

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https://www.ai-souken.com/article/ai-generation-pros-con


生成AIによる問題点やリスク

生成AIの驚くべき能力は、私たちに大きな可能性をもたらす一方で、いくつかの重大な問題点やリスクも内在しています。

虚偽情報の出力

生成AIが生み出すコンテンツには、ハルシネーションと呼ばれる誤った出力が含まれている可能性が常にあります。

生成AIは、大量に学習したデータを元にして、そのデータを踏まえると、「こういうことが言えるだろう」という傾向を回答します。傾向としての回答と事実は全く別物です。

生成したコンテンツを公共的な場所で用いる時は、必ず虚偽が混ざっていないか確認し、できる限り一次情報を確保することを目指しましょう。

著作権侵害のリスク

生成AIが作り出すテキスト、画像、音楽、動画などのコンテンツは、学習データに基づいています。
この学習データが既存の著作物である場合、生成されたコンテンツが元の著作物の「派生物」と見なされる可能性があります。

例えば、特定のアーティストのスタイルを模倣した音楽や、有名な画家の絵画スタイルで生成されたアート作品などがこれに該当します。

もし生成されたコンテンツが元の著作物の著作権を侵害すると見なされれば、著作権者から訴えられるリスクがあります。

【関連記事】
AIで生成した作品の著作権はどうなる?注意したいポイントを徹底解説

ディープフェイクの悪用

AIが生成したコンテンツは、従来の手法では本物と見分けがつかないほど高品質な場合があります。

例えば、ディープフェイク技術によるビデオや画像は、実際の人物が言ったことや行ったこととは異なる行動をしているように見せかけることができます。

開発側やサービス提供側による規制も進んでいますが、それでも悪質なフェイクニュースはSNSを中心にして日々投稿されています。
例えばここ数年では、ウクライナ戦争や大統領選、震災にまつわるフェイクニュースがSNS上で話題になり、混乱を生んでいます。

このように、AIによって生成されたコンテンツが虚偽情報を含むことが多いと、人々はインターネット上の情報全般に対する信頼を失うかもしれません。
そこでは、本物ですら偽物ではないかという疑心暗鬼が生活を覆ってしまう可能性すらあります。

また、ここでは政治的な事例やSNSなどを例にあげましたが、日常的なレベルで、詐欺広告が増加していく可能性があります。

【関連記事】
ディープフェイクとは?その脅威と有用性、法的な課題を徹底解説

セキュリティリスク

AI技術は、サイバーセキュリティの脅威を高める可能性があります。
高度なAIは、セキュリティシステムの弱点を発見し、それを利用して機密情報にアクセスすることができるかもしれません。

また、自動化された攻撃によって、従来のセキュリティ対策を迅速に突破することも可能になります。そこでは、個人や企業の機密情報が不正に収集・利用されるリスクがあります。


生成AIの今後の課題とその対策

生成AIは私たちの生活を大きく変革する可能性を秘めているものの、本格的な普及に向けてはいくつかの課題や懸念点が存在します。

経済的な影響

生成AIの進化は経済に大きな影響を与え、新たなビジネスモデルの創出や生産性の向上を促進しますが、同時に課題も引き起こすことが予想されます。

雇用構造の変化

AIによる自動化が進むと、特定の職種が不要になる可能性があります。
これは短期的には失業率の上昇を招く可能性があり、特に技術的なスキルを持たない労働者にとっては大きな課題です。

技術の進歩に伴う労働市場の変化に対応するためには、継続的な教育と職業訓練が重要です。

特にAIやデータサイエンスなどの分野でのスキル習得を促進し、労働者が新たな職種へ移行できるよう支援することが必要です。

所得格差の拡大

AI技術の高度な活用は、高度な技術スキルを持つ人々とそうでない人々との間で所得格差を拡大させる恐れがあります。
これは社会的な不平等を増大させ、経済の健全な成長を阻害する可能性があります。

所得格差を緩和するためには、累進税制の強化や最低賃金の設定などの政策が有効であり、ここ数年で検討がなされています。

法規制やガイドラインの不足

生成AIに対する法整備やガイドラインの作成は未だ不十分であり、日々議論が交わされています。

例えば、2024年2月29日には、『「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関するパブリックコメントの結果について』という資料が文化庁から発表されました。
これは、「生成AIのコンテンツに対して現行の著作権と照らし合わせながら、どのように適応していくかを判断するための取り組み」 であり、1月23日から2月12日までの約20日間にかけて、公募形式で実施されていました。そこでは、団体や個人から、約25000件ものパブリックコメントが寄せられています。

生成AIがもたらすコンテンツ産業の変革を適切に実行するために、現場感のある様々なアクターから情報収集を行うことは非常に重要です。
文化庁の例に限らず、様々な分野でこのような取り組みが今後行われていくでしょう。

安全対策の強化

先ほどまでの事例で、フェイクニュースなどを取り上げましたが、こういった虚偽のコンテンツを見抜く技術開発も行われています。

例えば、東京都内のスタートアップ企業「NABLAS」では、画像や音声のフェイクを検出するシステムの開発を行なっています。

フェイクの処理を施された画像や音声の特徴を学習させたAIを使い、フェイクの確率を判別していくという技術です。
目には目を歯には歯を、AIにはAIを、というわけですね。

このように、AIによる犯罪や詐欺を解決する分野でも技術開発が日々行われています。


【業界別】生成AIのビジネスへの活用・導入事例

### 【金融業界での活用例】
金融業界では、ChatGPTなどの生成AIを導入することで、文書作成の効率化や++従業員の高度な業務へのシフト**を実現し、セキュリティに配慮しながら安全な運用体制を確保しています。

ここでは、三菱UFJ銀行、横浜銀行、大分銀行の事例を紹介します。

三菱UFJ銀行

大手金融機関である三菱UFJ銀行では、業務改革への取り組みの一環として、AVILEN社の支援のもとChatGPTアイデアソンを導入しました。

このアイデアソンでは、「ChatGPTを活用した将来の業務イメージの具体化」と、「従業員へのChatGPTに関する研修機会の提供」という2つの側面から支援が行われました。

この取り組みにより、三菱UFJ銀行はChatGPTを効果的に活用し、業務改革を加速させることが期待されています。

【参考記事】
➡️三菱UFJ銀行の生成AI活用を加速:AVILENのChatGPTアイデアソン支援

横浜銀行

横浜銀行と東日本銀行は、自動生成AI「行内ChatGPT」を導入し、生産性の飛躍的な向上を実現しました。

この「行内ChatGPT」は、文書作成などの業務を効率化しつつ、従業員がより高度な業務に集中できるようサポートするシステムです。
セキュリティを重視し、内部クラウド環境で管理することで、安全性と信頼性の高い運用体制を確保しています。

この導入により、両行は業務の効率化と従業員の生産性向上を同時に達成しました。

【参考記事】
➡️横浜銀行と東日本銀行による自動生成AI「行内ChatGPT」の導入で生産性を飛躍的に向上

大分銀行

大分銀行とQTnetは、生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」を活用した業務効率化の実証利用を開始しました。
この取り組みでは、生成AIを用いて各種文書の自動生成や業務のサポートを行うことで、業務の効率化と品質向上を図ります。

大分銀行は、この実証利用を通じて生成AIの実践的な活用方法を探り、将来的な本格導入に向けた知見を蓄積していく予定です。

【参考記事】
➡️ 大分銀行とQTnet、生成AIプラットフォーム「QT-GenAI」による業務効率化の実証利用を開始


【不動産,建設建築業界での活用例】

不動産・建設建築業界では、生成AIを活用して業務効率の向上や建設プロジェクトのリスク管理の改善に取り組む事例が見られます。

自社特化型AIチャットツールの導入により、従業員の業務をサポートし、生産性を高めるとともに、AIベースのデータプラットフォームを活用して建設プロジェクトのリスクを予測し、時間と費用の削減を実現しています。

ここでは、三井不動産株式会社とStrabag SEの先進的な取り組みを紹介します。

三井不動産株式会社

三井不動産株式会社は、全従業員約2,500人を対象に、自社特化型AIチャットツール「&Chat」を導入し、業務効率の大幅な向上を図っています。

このツールは、最新のAI技術「GPT-4」を活用し、社員の多岐にわたる業務をサポートできるよう設計されています。
さらに、社内データとの連携も見据えた機能拡張が予定されており、従業員の生産性向上により一層寄与することが期待されています。

三井不動産のこの取り組みは、不動産業界におけるAI活用の先進事例として注目を集めており、業界のDX推進に向けた模範となっています。

【参考記事】
➡️三井不動産が全従業員に導入した自社開発AIチャットツール「&Chat」で業務効率革命

Strabag SE

オーストリアの大手建設会社Strabag SEは、Microsoftと提携し、データプラットフォームを活用した革新的な建設リスク管理ソリューションを開発しました。
このAIベースのソリューションは、機械学習アルゴリズムを用いて建設プロジェクトのリスクを分析し、80%の精度でリスクを予測することができます。

これにより、プロジェクトの遅延や予算超過を未然に防ぎ、時間と費用の削減に大きく貢献しています。
Strabag SEとMicrosoftの協業は、建設業界におけるAIとデータプラットフォームの活用可能性を示す好例といえます。

【参考記事】
➡️Strabag SEとMicrosoftがAI駆動データプラットフォームで建設リスク管理を革命化


【自治体での活用例】

自治体においても、生成AIを活用して業務効率の向上や住民サービスの質の向上に取り組む事例が増えています。

ChatGPTなどの生成AIを導入することで、職員の業務をサポートし、生産性を高めるとともに、安全性に配慮した情報利用環境を構築しています。
また、生成AI技術の可能性を探るための試験導入も行われており、自治体のデジタル戦略の一環として注目されています。

ここでは、栃木県庁と愛媛県松山市の先進的な取り組みを紹介します。

栃木県庁

栃木県では、職員の業務効率向上と県民サービスの質の向上を目的として、生成AIのChatGPTを業務用端末に導入し、本格運用を開始しました。

Microsoft社の「Azure OpenAI Service」を用いて安全な情報利用環境を構築し、県職員が利用する全端末でAIを活用できるようにしています。

この取り組みにより、職員の業務負荷の軽減と、より高度な県民サービスの提供が期待されます。

【参考記事】
➡️職員向けAIチャットbot GPTが本格稼働!セキュリティ確立で県民サービス向上に貢献

愛媛県松山市

愛媛県松山市は、自治体業務における生成AI技術の可能性を探るため、ChatGPTと連携した「LoGoAIアシスタントbot版」を試験導入しました。
この取り組みは、市の新たなデジタル戦略の一環として、期間限定で実施されました。

生成AIを活用することで、職員の業務効率化や住民対応の改善などが期待されます。

【参考記事】
➡️松山市、ChatGPTを用いたAI導入試験の取り組みを開始


【製造業における活用例】

製造業においても、生成AIを活用して製品やサービスの革新に取り組む事例が見られます。

ここでは、フォルクスワーゲンとTuringの先進的な取り組みを紹介します。

フォルクスワーゲンの事例

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンは、CES 2024において、人工知能ベースのチャットボットChatGPTをIDA音声アシスタントに統合した世界初の車両を発表しました。

この統合により、IDA音声アシスタントを搭載した全てのフォルクスワーゲン車の顧客は、運転中に絶えず拡大するAIデータベースにシームレスにアクセスし、リサーチコンテンツを読み上げてもらうことが可能になります。

この革新的な取り組みは、運転中の情報アクセスを容易にし、顧客の車内体験を大きく向上させるものとして期待されています。

【参考記事】
➡️フォルクスワーゲン、AIを活用したChatGPTをIDA音声アシスタントに統合し、車内体験を強化

Turingの事例

ring株式会社は、「We Overtake Tesla」をミッションに掲げるスタートアップで、「完全自動運転EV」の量産を目指しています。

同社は、大規模言語モデル(LLM)を活用した自動運転技術の進化に挑戦しており、AWS LLM開発支援プログラムを通じて技術的メンタリングやリソース支援を受けています。

LLMを自動運転に応用することで、より高度で安全な自動運転の実現が期待されます。

Turingの取り組みは、AIとEVを融合させた未来の自動車産業の可能性を示唆するものとして注目を集めています。

【参考記事】
➡️チューリング:大規模言語モデルを活用した完全自動運転技術への挑戦


【医療・介護領域での活用例】

医療・介護領域でも、生成AIを活用して業務効率化や診断精度の向上に取り組む事例が増えています。

ここでは、東北大学病院と京セラの先進的な取り組みを紹介します。

東北大学病院

NEC、東北大学病院、橋本市民病院は、医師の業務効率化と働き方改革を目的として、Large Language Model(LLM)を活用した医療文書作成の実証実験を行いました。

この実験では、LLMを導入することで医療文書の作成時間を平均47%短縮することに成功し、業務効率化の可能性を示しました。

医療現場におけるAI活用の一例として、医師の負担軽減と患者への質の高い医療サービスの提供に寄与することが期待されます。

【参考記事】
➡️LLM導入による医療文書の作成効率化と働き方改革を実現へ – NECと東北大学病院・橋本市民病院の取り組み

京セラ

京セラ株式会社は、東京大学と協力して「AI骨粗しょう症診断補助システム」の開発に取り組んでいます。
このシステムは、X線写真から骨密度を推定することで、骨粗しょう症の早期診断を支援することを目的としています。

高齢化社会が進む中、骨粗しょう症患者の増加が懸念されており、早期発見と適切な治療が重要となっています。

京セラと東京大学の取り組みは、AIを用いた診断支援によって、患者のQOL向上と医療費削減に貢献することが期待されます。

【参考記事】
➡️京セラと東京大学が開発するAIによる骨粗しょう症早期診断システム


【マーケティング領域での活用例】

マーケティング領域においても、生成AIを活用して業務効率化や新たな価値創出に取り組む企業が増えています。

ここでは、日本テレビとサイバーエージェントの先進的な取り組みを紹介します。

日本テレビ

日本テレビは、AIを活用したモザイク編集ソフト「BlurOn」を独自に開発し、映像情報メディア学会から技術振興賞を受賞しました。

このソフトは、番組制作におけるモザイク処理の作業を自動化し、大幅な時間短縮を実現しています。

BlurOnは、放送業界内外で導入が進んでおり、制作現場の効率化に大きく貢献しています。

【参考記事】
➡️日本テレビのAIモザイクソフト「BlurOn」が技術振興賞を受賞

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントは、2023年10月に生成AI活用推進組織「AIオペレーション室」を新設しました。
この組織は、全社員の生成AIに関するリテラシー向上に取り組み、現在のオペレーション業務を2026年までに6割削減することを目標としています。

また、生成AIを活用して新たなサービスの価値創出を目指しています。

【参考記事】
➡️生成AIの総合活用で業務革新へ―サイバーエージェント『AIオペレーション室』新設


まとめ

本記事では、生成AIの基本的な概念から、その仕組みや種類、メリット・デメリット、そして社会的な影響まで幅広く解説しました。
生成AIは、テキスト、画像、音声、動画など様々な形式のコンテンツを生み出すことができ、ビジネスや社会に大きな可能性をもたらしています。

一方で、著作権侵害やフェイクニュースの拡散など、倫理的・法的な課題も抱えています。生成AIの健全な発展のためには、技術的な進歩と並行して、適切な規制やガイドラインの整備、そして私たち一人一人の意識向上が不可欠です。

生成AIの特性を理解し、人間の創造性と調和させながら活用していくことが、これからのAI社会を築く鍵となるでしょう。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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