この記事のポイント
- 生成AI、RPA、メタバース、エッジAIなど、AIの応用技術の最新トレンドを網羅
- 説明可能なAI(XAI)やAI倫理の重要性について議論
- 各トレンドの具体的な活用事例を豊富に紹介
- マルチモーダルAIやローカルLLMなど、最先端の研究動向にも言及
- AIトレンドを踏まえた自社へのAI導入の在り方を提案
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
現在のビジネスシーンにおいて、AI技術の活用が不可欠となりつつあります。
企業が今後さらに成長していくためには、最新のAIトレンドを把握し、その知識をビジネスに取り入れることが重要です。
本記事では、2024年の最新AIトレンドとして、生成AI、RPA、メタバース、エッジAIなどの応用技術の動向を事例と共に解説。説明可能なAI(XAI)やAI倫理の重要性についても考察します。
自社のDXを加速するためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までお読みください。
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目次
AI技術に関するトレンド
AIの応用技術に関するトレンドとしては、以下のようなものがあります。
- 生成AI(ChatGPTなど)
- ロボティックプロセスオートメーション(RPA)
- メタバース
- エッジAI
- マルチモーダルAI
- ローカルLLM
ここでは、それぞれについて詳しく見ていきます。
生成AI(ChatGPTなど)
生成AIは、大規模言語モデル(LLM)を活用し、人間のような自然な対話を生成するAI技術です。
OpenAIが開発したChatGPTは、その代表的な例であり、質問応答や文章生成など、幅広いタスクで優れた性能を示しています。
活用事例
生成AIは、カスタマーサポートの自動化、教育分野でのパーソナライズされた学習支援、コンテンツ制作の効率化など、さまざまな領域で活用が進んでいます。
例えば、オンラインショップの問い合わせ対応にChatGPTを導入することで、24時間365日の即時応答が可能となり、顧客満足度の向上とコスト削減を同時に実現できます。
創作活動への影響と可能性
また、生成AIは創作活動の分野でも大きな影響を与えつつあります。小説や脚本の執筆、商品アイデアの生成など、これまで人間の創造性に依存してきた領域でも、生成AIが新たな可能性を切り開いています。
AIと人間のコラボレーションにより、より独創的かつ効率的な創作プロセスが実現されるでしょう。
生成AIは、人間の創造性を補完し、新たなアイデアの源泉となることが期待されます。今後、AIと人間が協力して、これまでにない斬新な作品やプロダクトを生み出していくことが予想されます。
【関連記事】
➡️生成AIとは?定義やメリット、従来のAIとの違いや将来展望を徹底解説!
ロボティックプロセスオートメーション(RPA)
RPAは、ルールベースのアルゴリズムを用いて、定型的な業務プロセスを自動化する技術です。
データ入力、ファイル管理、レポート作成など、繰り返し行われる事務作業を自動化することで、業務の効率化と人的ミスの削減を実現します。
導入事例と効果
RPAの導入事例は、金融、製造、ヘルスケアなど、幅広い業界に及んでいます。
例えば、保険会社では、RPAを用いて保険金請求の処理を自動化することで、処理時間の短縮と顧客満足度の向上を達成しています。
RPAの導入により、従業員は単純作業から解放され、より高度な業務に専念できるようになります。これにより、企業の生産性向上と人材の有効活用が図られます。
インテリジェントオートメーション(IA)の可能性
近年では、RPAとAIを組み合わせたインテリジェントオートメーション(IA)の取り組みも進んでいます。AIによる判断能力をRPAに組み込むことで、より複雑な業務プロセスの自動化が可能となります。
例えば、AIが書類の内容を理解し、適切な処理方法を判断した上で、RPAが実際の処理を実行するといったシナリオが考えられます。
IAの導入により、これまでRPAでは対応が難しかった非定型業務の自動化が可能となり、業務自動化の対象範囲が大幅に拡大すると予想されます。
企業は、RPAとAIを戦略的に活用することで、業務効率の向上と人材の高付加価値業務へのシフトを推進できるでしょう。
メタバース
メタバースは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を活用して構築された、没入感のある3Dデジタル空間を指します。ユーザーはアバターを通じてメタバース内で交流し、さまざまな活動を行うことができます。
活用範囲の拡大と事例
メタバースは、ゲームやエンターテインメントの分野で先行的に発展してきましたが、近年では教育、ビジネス、観光など、多岐にわたる領域での活用が期待されています。
例えば、教育分野では、メタバースを活用した没入型の学習体験により、学習者の興味関心を高め、効果的な知識習得を促進できます。
また、ビジネスの観点では、メタバース上での製品展示会やカンファレンスの開催、バーチャルオフィスでのリモートワークなど、新たなコミュニケーションと協働の機会を創出できます。
メタバースの活用事例としては、バーチャルイベントプラットフォーム「VRChat」や、ライブエンターテインメントプラットフォーム「Wave」などが挙げられます。
これらのプラットフォームでは、ユーザーがアバターを通じて参加し、コンサートやミーティング、ワークショップなどのイベントを体験することができます。
経済圏としてのメタバースの可能性
メタバースは、リアルとバーチャルが融合した新たな経済圏としても注目を集めています。仮想空間内でのアイテム売買や広告掲載など、メタバース特有のビジネスモデルが生まれつつあります。
企業は、メタバースにおける顧客体験の設計と価値提供の方法を模索し、新たな収益機会を獲得していく必要があるでしょう。
メタバースは、従来の経済活動の枠組みを超え、新たな市場を創出する可能性を秘めています。バーチャル不動産の売買、仮想アイテムのNFT化、メタバース内での広告配信など、多様なビジネスチャンスが生まれると予想されます。
エッジAI
エッジAIは、データ処理をクラウドではなく、データ発生源に近いエッジデバイス(IoTデバイスやスマートフォンなど)で行う技術です。
エッジデバイスにAI処理能力を持たせることで、レスポンス時間の短縮とデータ通信量の削減を実現します。
活用事例と効果
エッジAIは、自動運転車、スマートファクトリー、ヘルスケアモニタリングなど、リアルタイム性とデータプライバシーが重要な用途で活用が進んでいます。
例えば、自動運転車では、車載カメラやセンサーから収集したデータをエッジAIで処理することで、低遅延かつ安全な走行制御を実現できます。
また、スマートファクトリーでは、エッジAIを用いて機器の異常検知や予知保全を行うことで、生産性の向上とダウンタイムの最小化が可能となります。
エッジAIの導入により、データ処理の分散化が進み、ネットワーク負荷の軽減とレスポンス時間の短縮が実現します。
また、データをその場で処理することで、プライバシー保護とセキュリティの強化にもつながります。
エッジAIは、IoTシステムの効率化と最適化に大きく貢献すると期待されています。
5Gとの相乗効果と今後の展望
エッジAIは、5Gネットワークの普及と相まって、今後さらなる発展が見込まれています。高速・大容量・低遅延の5G通信により、エッジデバイスとクラウドの連携が強化され、より高度なAI処理が可能になります。
また、エッジAIは、AIの民主化にも貢献すると期待されています。クラウドAIサービスに比べ、エッジAIは比較的安価なハードウェアで実現できるため、中小企業でもAI技術を導入しやすくなるでしょう。
今後、エッジAIは、スマートシティ、スマートホーム、ウェアラブルデバイスなど、あらゆる分野で活用が広がると予想されます。
エッジAIとクラウドAIの最適な組み合わせにより、より効率的でインテリジェントなシステムが構築されるでしょう。
【関連記事】
➡️エッジAIとは?その概要や活用事例、クラウドAIとの違いを徹底解説!
マルチモーダルAI
マルチモーダルAIは、テキスト、画像、音声、動画など、複数の種類のデータを統合的に処理するAI技術です。
異なるモダリティのデータを組み合わせることで、単一のモダリティでは捉えきれない複雑な情報を理解し、より高度な判断を下すことができます。
活用事例と効果
マルチモーダルAIの活用事例としては、医療診断支援、自然言語処理、動画要約などが挙げられます。
例えば、医療診断支援では、患者の症状の説明(テキスト)、レントゲン画像(画像)、心音(音声)などの多様なデータを総合的に分析することで、より精度の高い診断が可能となります。
また、自然言語処理の分野では、テキストと画像を組み合わせることで、より文脈に即した言語理解やキャプション生成が実現できます。
マルチモーダルAIを活用することで、単一のモダリティでは見落とされがちな情報を捉えることができ、より正確で信頼性の高い判断が可能となります。
また、異なるモダリティのデータを組み合わせることで、新たな洞察や知見が得られる可能性があります。マルチモーダルAIは、複雑な問題解決に大きく貢献すると期待されています。
人間の認知能力に近づくAIの可能性
マルチモーダルAIは、人間の認知能力に近づくための重要な要素と考えられています。人間は、視覚、聴覚、言語理解など、複数の感覚を統合して環境を理解し、意思決定を行います。
マルチモーダルAIは、このような人間の情報処理の仕組みを模倣することで、より自然で直感的なAIシステムの構築を目指しています。
今後、マルチモーダルAIは、ロボティクス、自動運転、スマートシティなど、複雑な環境で動作するAIシステムの開発に不可欠な技術になると予想されます。
異なるセンサーからの多様なデータを統合的に処理することで、AIシステムの状況理解能力と適応力が飛躍的に向上するでしょう。
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➡️マルチモーダルAIとは?企業での導入例や活用事例を交えて徹底解説!
ローカルLLM
ローカルLLMは、大規模言語モデル(LLM)を小型化し、エッジデバイスやオンプレミス環境で動作可能にした技術です。LLMは、大量のテキストデータを学習することで、言語理解や文章生成などの高度な自然言語処理タスクを実行できます。
アクセシビリティとプライバシーの向上
従来、LLMの開発と運用には、膨大な計算リソースと大量のデータが必要とされ、主にクラウド環境で実現されてきました。しかし、ローカルLLMの登場により、エッジデバイスやオンプレミス環境でもLLMの性能を活用できるようになりました。
例えば、スマートフォンやIoTデバイス上で動作するローカルLLMにより、プライバシーに配慮した音声認識やテキスト生成が可能となります。
また、ローカルLLMは、LLMのアクセシビリティを大幅に向上させる技術として注目を集めています。
クラウドベースのLLMサービスでは、インターネット接続が必要であり、データの送受信に伴うセキュリティリスクも存在します。
一方、ローカルLLMは、データをデバイス内で処理するため、プライバシー保護とセキュリティの強化につながります。ローカルLLMにより、個人情報や機密情報を安全に扱いながら、LLMの性能を活用できるようになります。
LLMの民主化と普及
ローカルLLMは、LLMの民主化にも寄与すると期待されています。クラウドベースのLLMサービスは、主に大企業や研究機関が提供しており、利用にはコストがかかります。
これに対し、ローカルLLMは、比較的安価なハードウェアで実現できるため、中小企業や個人開発者でもLLMの性能を活用できるようになるでしょう。
ローカルLLMの普及により、より多くの人々がLLMの恩恵を受けられるようになります。個人や小規模なチームでも、高度な言語処理機能を備えたアプリケーションを開発できるようになるでしょう。
AIの理論的・倫理的側面に関するトレンド
AIの理論的・倫理的側面に関するトレンドとしては、XAI、そしてAI倫理が挙げられます
説明可能なAI(XAI)
説明可能なAI(XAI)は、AIの意思決定プロセスを人間が理解できるようにする技術です。これはAIシステムの透明性を高め、その決定や予測に対する信頼性を確保するために重要です。
XAIは、モデルの出力だけでなく、その出力に至る理由や根拠を提供し、ユーザーがAIの振る舞いを解釈しやすくします。
特に、医療診断、金融サービス、法執行などの重要な意思決定がAIによって行われる場合、XAIの役割は不可欠となります。
AI倫理
AI倫理は、AIの開発と使用における倫理的な指針を提供し、公正性、透明性、プライバシー保護、責任の所在などを重視します。AIが社会に及ぼす影響を正しく管理し、技術が公平かつ責任ある方法で利用されることを目指しています。
バイアスの問題、意思決定の透明性、プライバシー保護は特に重要な課題であり、これらに対処するための国際的な協力と業界標準の策定が求められています。
AI 原則実践のためのガバナンス・ガイドライン(参考:経済産業省)
経済産業省は、「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン Ver. 1.0」を公表しました。
このガイドラインは、人間中心のAI社会原則を尊重し、AI技術の実装に向けた実践的な指針を提供することを目的としています。
企業、アカデミア、法律、監査の専門家らが参加し、国内外のAI原則やルール形成の動向を踏まえた上で、AIガバナンスの在り方に関する議論を行い、AIシステム開発者だけでなく運用者にも実務的な指針を提供しています。
まとめ
本記事では、2024年の最新AIトレンドとして、生成AI、RPA、メタバース、エッジAI、マルチモーダルAI、ローカルLLMといった応用技術の動向を概観しました。また、ノーコード・ローコードプラットフォームによるAI開発の民主化、説明可能なAI(XAI)やAI倫理の重要性についても議論しました。
AIは、業務の自動化や効率化、新たなサービスの創出など、様々な分野で社会に大きな変革をもたらしつつあります。一方で、AIの倫理的な活用やプライバシーの保護、説明可能性の確保など、解決すべき課題も存在します。
企業がAI技術を戦略的に活用し、持続的な成長を実現するためには、最新のAIトレンドを理解し、自社のビジネスに適切に取り入れていくことが求められます。同時に、AIの負の影響を最小化し、その恩恵を広く社会に行き渡らせるための取り組みも欠かせません。
2024年のAI動向を踏まえ、自社のAI活用の在り方を見直し、イノベーションを加速させるきっかけとなれば幸いです