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Azure Custom Visionとは?基本機能や料金、使い方を徹底解説

この記事のポイント

  • Azure Custom Visionの特徴と、専門知識不要で利用可能な画像認識技術を解説
  • 画像分類と物体検出の基本機能を具体例とともに詳細に説明
  • Custom Visionリソースの作成からモデルのトレーニングまでの具体的な手順を提示
  • 料金体系と無料アカウントの利用方法を明確に解説し、コスト最適化の方法を提案
  • 自動ビジュアルアラート、品質検査、小売業での在庫管理など、具体的な活用事例を紹介

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

「画像認識技術をビジネスに活用したいけれど、どうやって始めれば良いかわからない」そんな方々におすすめなのが、マイクロソフトが提供するAzureのサービス「Custom Vision」です。
画像分析をカスタマイズ可能なこのサービスは、機械学習の専門知識がなくても利用できるユーザーフレンドリーな設計が魅力です。

本記事では、Custom Visionの概要から基本機能、実際の活用事例、さらに利用方法や料金体系など、幅広い情報を詳しく紹介していきます。
Azure Custom Visionを用いれば、画像認識の様々なニーズに応じたソリューションを、柔軟にかつ迅速に実現することが可能になります。

Azureの基本知識や料金体系、利用方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
➡️Microsoft Azureとは?できることや各種サービスを徹底解説

Azure Custom Visionとは

Azure Custom Vision
Azure Custom Vision

Azure Custom Visionは、Microsoft Azure AI Servicesの一部として、最先端のコンピュータービジョン技術を提供するサービスです。
特定のドメインに特化した画像分析をカスタマイズおよび組み込むことを可能にし、機械学習の専門知識がない開発者でも、「カスタム画像分類器や物体検出器を簡単に作成、デプロイ、改善」できるように設計されています。

Azure Custom Visionの特徴

Custom Visionは、AIによる画像認識のカスタマイズを容易にするプラットフォームで、以下のような特徴を持っています。

  1. シナリオに応じたカスタマイズ
    特定のユースケースに適したオブジェクトを識別するためのモデルカスタマイズが可能です。

  2. 直感的なモデル作成
    複雑なコードは不要で、シンプルなインターフェイスを通じて容易に画像識別モデルを作成できます。

  3. 柔軟なデプロイメント
    モデルをクラウド環境やエッジデバイスで実行可能で、幅広いデプロイメントオプションを提供します。

  4. 組み込みのセキュリティ
    すべてのデータとトレーニング済みモデルには、企業レベルのセキュリティとプライバシー保護が適用されます。

  5. 複雑さを伴わずに精度を達成
    数枚の画像のアップロードとラベル付けでトレーニングが始まり、画像追加ごとに精度が向上するフィードバックループが特徴です。

  6. モデルの迅速な作成とデプロイ
    ユーザーフレンドリーなインターフェイスとAPIを通じて、新しいモデルでの迅速な画像タグ付けやリアルタイム画像認識を実現します。

Azure Custom Visionの画像分析とは

画像分析は、コンピュータビジョンの分野における核心的技術で、デジタル画像の内容を解析し理解するプロセスを指します。

Custom Visionの仕組みは主に、ユーザーが提供した画像に基づき、タグ付けされたデータから学習モデルを構築することにあります。モデルは画像のパターンを理解し、新しい画像に遭遇した際にそれらのパターンを識別します。

Azure Custom Visionの魅力は、その学習プロセスがユーザーの介入を最小限に抑え、かつ高い精度で自動化されているという点にあります。

画像認識の基本機能

Azure Custom Visionは、企業が画像データから価値あるインサイトを引き出すツールです。

画像分類と物体検出の二つの主要な機能を提供しており、それぞれがビジネスプロセスにどのように役立つか、具体例を交えて説明します。

画像分類

画像分類機能は、提供された画像を特定のカテゴリに自動で分類することが可能です。

画像分類イメージ
画像分類イメージ

これは、例えばオンライン小売業者が商品画像を自動で適切なカテゴリに分ける場合に有効です。
たとえば、大量の衣料品画像を「Tシャツ」「ジャケット」「パンツ」といったカテゴリに自動で分類し、顧客がオンラインストアで商品を容易に見つけられるようにします。

また、自動車販売会社が車両の種類やモデルを迅速に識別し、その情報を利用して在庫管理を改善する場合にも利用されます。

物体検出

物体検出機能は、画像内の特定の位置に何が存在するかを識別し、その位置情報も提供します。

物体検出イメージ
物体検出イメージ

交通管理システムでは、道路の監視カメラ映像から車両、歩行者、自転車、交通標識などをリアルタイムに識別し、交通流の分析や異常の検出に使用されます。
例えば、特定の交差点での車両の密度を測定し、交通信号のタイミングを最適化することで、交通渋滞の軽減に貢献します。

また、製造業では、製造ラインに設置されたカメラが製品の品質を検査し、不良品を即座に検出して排除するプロセスに利用されます。これにより、品質保証の効率が大幅に向上し、リコールや顧客クレームのリスクを低減できます。

Azure Custom Visionを活用することで、企業はデータを新たな視点から解析し、顧客体験の向上、運用の効率化、新たなビジネスチャンスの創出につなげることができます。


Azure Custom Visionの使い方

ここでは、Azure Custom Visionの使い方を分かりやすくご紹介します。

1. 前提条件

  • 画像のセット
    トレーニングには、タグごとに少なくとも30枚の画像が推奨されます。サンプル画像をGitHubから使用するか、独自の画像を選択できます。

  • サポートされるWebブラウザー
    Custom Visionを利用するためには、サポートされるWebブラウザーが必要です。

2. Custom Visionリソースの作成

  • Azureポータルで、Custom Vision を検索します。

Custom Visionの検索
Custom Visionの検索

  • Cuctom Visionを選択し、リソースを作成します。

リソースの作成
リソースの作成

  • TrainingリソースとPredictionリソースを選択しデプロイします。

作成画面
作成画面

  • デプロイが完了します。
    デプロイ完了画面
    デプロイ完了画面

作成されたCustom Visionリソース
作成されたCustom Visionリソース

3. 新しいプロジェクトの作成

  • Custom VisionのWebページにアクセスし、サインインします。
    Custom VisionのWebページ
    Custom VisionのWebページ

  • 「新しいプロジェクト」を選択し、プロジェクトの名前、説明、ドメイン(全般、食料、ランドマーク、小売、コンパクトなど)を設定します。
    新しいプロジェクトの選択
    新しいプロジェクトの選択

  • 分類の種類を選択します(マルチラベルまたはマルチクラス)。
    プロジェクトの設定
    プロジェクトの設定

  • プロジェクト作成が完了し、ワークスペースを利用することが可能になります。
    プロジェクト作成が完了
    プロジェクト作成が完了

4. トレーニング画像の選択

  • タグごとに多様性のある画像を選択し、少なくとも30枚の画像を用意します。
  • 画像は.jpg、.png、.bmp、または.gif形式で、サイズが6MB未満である必要があります。
  • 最短辺が256ピクセル以上である必要があります。

5. 画像のアップロードとタグ付け

  • 「画像の追加」を選択し、アップロードする画像を選択します。
    アップロードした画像例(りんご)
    アップロードした画像例(りんご)

  • 画像に適切なタグを付け、アップロードします。
    画像のアップロード
    画像のアップロード

6. 分類器のトレーニング

  • 「トレーニング」ボタンを選択して、分類器をトレーニングします。今回は、りんごとオレンジの画像をトレーニングしました。
    トレーニング」ボタンを選択
    トレーニング」ボタンを選択

  • トレーニングは数分かかり、終了するとモデルのパフォーマンスが表示されます。
    トレーニング中画面
    トレーニング中画面

7. 分類子の評価

  • トレーニングが完了したら、精度(precision)と再現率(recall)を確認し、分類子の有効性を評価します。

    トレーニングが完了画面トレーニングが完了画面

  • 必要に応じて、確率しきい値を調整して、精度と再現率のバランスを取ります。

今回は簡単な分類であったので100%と出てしまいました。実際には複雑なタスクがほとんどであるため調整が必要です。

8. トレーニングのイテレーションを管理

  • トレーニングを繰り返すことで、パフォーマンスメトリックを更新し、新しいイテレーションを作成します。
  • 古いイテレーションは削除することができます。

このプロセスにより、独自のニーズに合わせたカスタム画像分類モデルを作成し、トレーニングすることができます。


Azure Custom Visioの料金体系

Azure Custom Visionサービスを継続的に使用する際は、料金設定と購入オプションを理解することが重要です。

以下は、Azure Custom Visionのインスタンス別の特徴を表にまとめたものです。
それぞれのインスタンスタイプにおける1秒あたりのトランザクション数(TPS)、提供される機能、および料金について説明しています。

インスタンス 1秒あたりのトランザクション数 (TPS) 機能 料金
Free 2 TPS - アップロード、トレーニング、予測のトランザクション
- 最大2個のプロジェクト
- 1か月あたり最大1時間のトレーニング
- 5,000枚のトレーニング画像は無料 (プロジェクトあたり)
- 1か月あたり10,000回の予測
無料
標準 10 TPS - 予測トランザクション
- 最大100個のプロジェクト
- トレーニング: コンピューティング時間あたり ¥1,504.251
- 画像ストレージ: 1,000枚の画像あたり ¥105.298
- ¥300.851/1,000 トランザクション
- それぞれ最大 6 MBの画像ストレージ


この表から、Freeインスタンスは「初期段階や小規模プロジェクト」に適しており、標準インスタンスはより「大規模なプロジェクトや商用利用」に適していることがわかります。

料金体系は、使用したトランザクション数やトレーニング時間、画像のストレージに基づいて計算されます。
利用者は、自身のニーズに最適なプランを選択し、サービスのコストを効果的に管理する必要があります。

Azureの無料アカウントの利用

Azure Custom Visionを活用したいものの、費用の問題やアカウントがないこともあると思います。

この場合は、Azureの無料アカウントの使用をお勧めします。
新規ユーザーは一定量の無料のサービスリソースを得られ、Custom Visionをはじめとする多くのAzureサービスを試すことができます。

︎【関連記事】
➡️Azureの無料アカウントとは?作成方法やできることを徹底解説!


Azure Custom Visionの活用事例

Azure Custom Visionは、AIと高度な分析を駆使してビジネスニーズに対応する、多機能なツールです。

以下に、その活用事例を紹介します。

  1. 自動ビジュアルアラート
    ビデオストリーム監視において、
    煙や異常な水泡、野生動物の侵入など、特定の現象がビデオに捉えられた際に自動で警報を出すシステムです。この機能により、迅速な対応が可能になり、安全性が向上します。

  2. 手作業による検査の効率化
    小売業界での商品の識別と在庫確認を効率化します。商品の数を自動でカウントしたり、必要な商品が棚に全て揃っているか確認できます。

  3. 検査範囲の拡大
    製造業において、製品の品質検査を拡張します。人の目では見逃しがちな細かい不良も検出し、品質の一貫性を保証します。

  4. 対象物の発見性を向上
    画像にメタデータやタグを自動で付与し、検索や分類を容易にします。製品カタログの管理が簡単になり、特定の画像をすぐに見つけ出せるようになります。

Custom Visionの活用事例イメージ
Custom Visionの活用事例イメージ

特定の応用シナリオ

【空間分析】

  • 小売店内の顧客流れ
    店内のカメラを通じて顧客の動きを分析し、店舗レイアウトの改善やプロモーション効果の測定に役立てます。

  • 安全プロトコルの監視
    作業場での安全規則遵守を自動でチェックし、違反があれば即座に警告します。

【アプリケーション開発】

  • カスタムアプリ内での画像認識機能の組み込み
    開発者はCustom Visionを使って、アプリ内での画像から特定のオブジェクトや特徴を識別する機能を簡単に追加できます。

  • ユニークなカスタムモデルの作成と適用
    独自のニーズに合わせたモデルをトレーニングし、アプリケーションに組み込むことで、特定のタスクを効果的に処理できます。


Azure Custom Visionを利用することで、ビジネスの効率化、安全性の向上、顧客体験の改善など、多岐にわたるメリットを享受できます。
このツールを使って、ビジネスに新たな価値をもたらし、競争力を高めることが可能です。

︎【関連記事】
➡️Azureの導入事例のご紹介

リソースとサポート

AI総合研究所はAzureについて幅広く解説しています。
Azureに関する相談、開発・導入のご依頼も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

また、Microsoftが提供する豊富なリソース、コミュニティサポートも大変参考になります。
➡️Custom Visonに関するMicrosoftページ


まとめ

本記事では、Azure Custom Visionの概要、特徴、基本機能、活用事例、料金体系などを幅広く紹介しました。

このサービスを利用することで、企業や開発者は画像認識を活用したソリューションを容易に開発・デプロイでき、ビジネスプロセスの効率化や顧客体験の向上を実現できます。
また、機械学習の専門知識がなくても、Custom Visionの直感的なインターフェースを通じて高度な画像分析が可能です。

ぜひAzure Custom Visionを活用し、ビジネスの可能性を広げてください。

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坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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