この記事のポイント
- Azure SQL Databaseは、Microsoftが提供する完全マネージド型のクラウドリレーショナルデータベースサービス
- SQL Serverと高い互換性を持ちつつ、自動バックアップや脅威検出などの高度な機能を提供
- 従量課金制を採用し、DTUやvCoreベースの柔軟な価格設定により、コスト最適化が可能
- 99.99%の高可用性、自動スケーリング、地理冗長性など、クラウドならではの利点を活かせる
- Azureポータルから簡単に作成・接続でき、他のAzureサービスとシームレスに連携可能
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
クラウド時代のデータベース管理をより手軽に、そして効率的に行いたい企業にとって、Azure SQL Databaseは理想的なソリューションです。
本記事では、マイクロソフトが展開する完全マネージド型のリレーショナルデータベースサービスであるAzure SQL Databaseについてご紹介します。
SQL Serverと互換性がありながらも、インフラストラクチャの管理負荷を削減し、自動バックアップや脅威検出等の高度な機能を提供。費用対効果に優れた従量課金制も魅力の1つです。
この記事を通じて、Azure SQL Databaseの基本から特徴、料金体系、作成や接続方法まで幅広くご理解いただければ幸いです。
Azure SQL Databaseとは
Azure SQL Databaseは、MicrosoftのクラウドプラットフォームAzure上で提供される完全マネージド型のリレーショナルデータベースサービスです。
SQL Serverと高い互換性を持ち、同等の機能を提供しながら、インフラストラクチャの管理や運用の手間を大幅に軽減します。
自動バックアップ、パフォーマンスチューニング、脅威検出などの高度な機能を備え、スケーラビリティ、可用性、セキュリティの向上を実現します。従量課金制のモデルにより、コスト効率も高く、必要なリソースのみを利用することが可能です。
(参考:Microsoft)
SQL Serverとの違い
Azure SQL Databaseは「SQL Server」と同様の機能を提供しますが、クラウド環境に最適化されており、スケーラビリティや可用性の面で優れています。
例えば、自動フェイルオーバーやマルチリージョン展開により、99.99%の高可用性を実現しています。さらに、管理の手間を省くために、自動バックアップや自動チューニング機能が組み込まれています。
これに対して、オンプレミスのSQL Serverはより細かなカスタマイズが可能ですが、その分管理や運用に手間がかかります。
Azure SQL Databaseは、クラウドの利点を最大限に活用し、より効率的なデータベース管理を実現します。
Azure SQL Databaseの特徴
クラウドネイティブ
ハードウェアの管理、OSのアップデート、パッチ適用などの運用作業は不要で、自動バックアップ、自動チューニング、災害復旧機能などが標準で提供されます。
また、需要に応じてリソースを動的に拡張できるため、企業は変動する需要に柔軟に対応しながら、リソースの無駄を最小限に抑えられます。
高可用性と災害対策
99.99%の可用性SLAを提供し、自動フェイルオーバー機能により障害発生時も迅速に代替システムに切り替えることで、サービスの継続性を確保します。
マルチリージョン展開により地理的な冗長性を高め、ミッションクリティカルなアプリケーションやサービスにも安心して利用できます。
セキュリティ
データ暗号化、監査ログ、脅威検出などのセキュリティ機能が標準で提供され、データの安全性を多層的に確保します。
透過的データ暗号化(TDE)により保存データを自動的に暗号化し、アクセス制御リスト(ACL)でアクセス権限を細かく管理できます。
また、Azure Security Centerとの連携により、脅威の早期検出と対策を実現します。
費用対効果
従量課金制により、必要なリソースに対してのみコストが発生し、初期投資を抑えつつ運用コストを最適化できます。
リソースの増減に応じて柔軟に料金を調整でき、ビジネスの成長や変化に対応しやすいです。オンプレミス環境で必要となるハードウェア購入や保守、電力コストなどを削減でき、総合的な費用対効果が高いです。
Azure SQL Databaseの料金体系
Azure SQL Databaseは基本的に従量課金制となっており、使用したリソースの量に応じて課金されます。
主な課金対象
- プロビジョニングされたコンピューティング能力
- DTU(Database Transaction Unit)
リソースのパフォーマンスを統合的に評価する指標で、小規模から中規模のデータベースに適しています。
- vCore(仮想コア)
CPU、メモリ、ストレージを個別に選択・調整できるため、大規模なデータベースや特定の性能要件に適しています。
- DTU(Database Transaction Unit)
- 使用したデータ量
- データベースの使用量に基づいて課金され、スケーラビリティを考慮したコスト管理が可能です。
- データベースの使用量に基づいて課金され、スケーラビリティを考慮したコスト管理が可能です。
- バックアップストレージ容量
- 自動バックアップのストレージ容量に基づいて課金されます。
バックアップの保持期間や頻度に応じて、必要なストレージ容量が決まります。
- 自動バックアップのストレージ容量に基づいて課金されます。
- データ転送量
- データベース間や他のAzureサービスとのデータ転送量に基づいて課金されます。
大量のデータを転送する場合は、コストに注意が必要です。
- データベース間や他のAzureサービスとのデータ転送量に基づいて課金されます。
価格レベル
Azure SQL Databaseは、一般的な使用パターンに合わせて以下の5つの価格レベルを提供しています。
価格レベル | 説明 |
---|---|
Basic | 小規模なデータベースや開発・テスト環境に適しています。低コストで基本的な機能を提供します。 |
Standard | 一般的な業務アプリケーション向けで、中程度のパフォーマンスと可用性を提供します。 |
Premium | 高トランザクションや高可用性が求められるミッションクリティカルなアプリケーションに適しています。 |
Premium RS | 高いパフォーマンスと可用性を提供し、ストレージのレジリエンスも向上させたオプションです。 |
Hyperscale | 大規模なデータベース向けに設計されており、スケーラビリティとパフォーマンスが最優先されます。 |
リザーブドキャパシティ(予約購入による割引)
Azure SQL Databaseでは、1年または3年の予約購入(リザーブドキャパシティ)で割引が受けられます。
これにより、長期的な利用を見込める場合、コスト削減が可能です。リザーブドキャパシティは、予測可能な長期プロジェクトや安定した利用が見込まれるシナリオで特に有効です。
Azureハイブリッド特典による割引
オンプレミスのSQL Serverライセンスを所持している場合、Azureハイブリッド特典を利用することで割引が受けられます。
これにより、既存のライセンスを有効活用し、コスト削減を図ることができます。
【関連記事】
➡️Azureのハイブリッド特典とは?適用・確認方法や対象製品を解説
Azure SQL Databaseの作成・接続方法
Azure SQL Databaseの作成はAzureポータルを通じて簡単に行うことができます。
Azureポータルでの作成手順
- Azureポータルにログイン
Azureポータル(https://portal.azure.com)にアクセスし、アカウント情報を入力してログインします。
- リソースの作成
ポータルの左上にある「+リソースの作成」ボタンをクリックします。次に「SQL Database」を選択します。
- 基本設定の入力
- データベース名: 任意のデータベース名を入力します。
- サブスクリプション: 使用するサブスクリプションを選択します。
- リソースグループ: 新規作成するか既存のリソースグループを選択します。
- サーバー: 新しいサーバーを作成するか、既存のサーバーを選択します。
- パフォーマンスレベル: 使用するパフォーマンスレベル(DTUまたはvCore)を選択します。
- 詳細設定の入力
- バックアップの保持期間: 自動バックアップの保持期間を設定します。
- その他の設定: 必要に応じて、フェールオーバーグループやセキュリティ設定を行います。
- デプロイの実行
すべての設定を確認したら、「作成」ボタンをクリックしてデプロイを開始します。このプロセスは数分で完了し、データベースが作成されます。
接続方法(SQL Server Management Studioからの接続)
Azure SQL Databaseへの接続は、一般的なSQL Serverと同様に簡単です。
- 接続情報の確認
Azureポータルの「SQL Databases」セクションで、作成したデータベースを選択します。
「接続文字列」タブで、サーバー名、データベース名、認証方式(SQL認証またはAzure Active Directory認証)を確認します。
- SQL Server Management Studio(SSMS)の起動
ローカル環境にインストールされたSSMSを起動します。
- 接続情報の入力
- サーバー名: Azureポータルで確認したサーバー名を入力します。
- 認証: 使用する認証方式を選択し、必要なユーザー名とパスワードを入力します。
- 接続の確認
入力情報を確認し、「接続」ボタンをクリックします。接続が成功すると、作成したAzure SQL Databaseにアクセスできるようになります。
- ファイアウォール設定の確認
接続ができない場合は、Azureポータルに戻り、SQL Serverの「ファイアウォールと仮想ネットワーク」設定を確認します。
必要なIPアドレス範囲を追加し、アクセスを許可する設定を行います。
これらの手順を通じて、Azure SQL Databaseを作成し、簡単に接続することができます。適切な設定とセキュリティ対策を講じることで、安全かつ効率的にデータベースを運用することが可能です。
Azure SQL Databaseの運用
バックアップと復元
自動バックアップ機能により、データの安全性を確保します。バックアップは自動的に定期的に実行され、設定した保持期間に従って保存されます。
ポイントインタイムリストア機能により、過去の任意の時点にデータベースを復元でき、データ破損や誤操作が発生した場合でも、迅速にデータを回復し業務の継続性を維持できます。
モニタリングとチューニング
パフォーマンス最適化と監視のため、自動チューニング機能によりクエリパフォーマンスのボトルネックを自動検出し改善策を適用できます。
AzureポータルやAzure Monitorを使用して、リアルタイムでパフォーマンスやリソース使用状況を監視し、システムの健全性を維持します。
セキュリティ対策
脅威検出機能により、異常なアクティビティや潜在的な脅威をリアルタイムで検知し、アラートを発します。監査ログやアクティビティログを確認することで、データベースのアクセス履歴や変更履歴を追跡し、不正なアクセスや操作を検出します。
これらの多層的なセキュリティ対策により、データ保護とコンプライアンス遵守を確保します。
他のAzureサービスとの連携
Azure SQL Databaseは、他のAzureサービスとシームレスに連携できます。
例えば、Azure App ServiceやAzure Functionsと組み合わせることで、Webアプリケーションやサーバーレスアプリケーションのバックエンドデータベースとして活用できます。
Azure Data Factoryを使ったETL処理や、Azure Machine Learningを使った予測分析など、様々なシナリオでAzure SQL Databaseを活用できます。
マイグレーション
オンプレミス環境からAzure SQL Databaseへのマイグレーションを行う際は、Azure Database Migration Serviceを利用できます。
このサービスは、移行プロセスを簡素化し、ダウンタイムを最小限に抑えながら、スムーズなデータ移行を実現します。
移行前のアセスメントや移行後のテストも含め、包括的なマイグレーションソリューションを提供します。
まとめ
Azure SQL Databaseは、クラウド環境で高度なデータベース機能を提供する信頼性の高いフルマネージド型サービスです。
自動バックアップ、高可用性、セキュリティ機能により、運用負荷を軽減しつつ安定したパフォーマンスを実現します。また、オンプレミスのSQL Serverと同等の機能を持ち、クラウドならではの柔軟性とコスト効率も兼ね備えています。
他のAzureサービスとのシームレスな連携により、様々なシナリオでの活用が可能です。導入検討の際は、各種機能やベストプラクティスを理解し、自社のニーズに最適な形で活用することが重要です。
Azure SQL Databaseは、企業のデジタルトランスフォーメーションを支える強力なプラットフォームとなるでしょう。