この記事のポイント
- ChatGPTは自治体での市民サービス向上や業務効率化に活用され、多くの導入事例がある
- 主な活用例として、24時間対応の問い合わせ対応、多言語サポート、文書作成支援などがある
- 導入のメリットには業務効率化や市民エンゲージメント向上があるが、プライバシー保護などの課題もある
- 自治体によっては予算制限やセキュリティ懸念から導入を見送るケースもある
- AIチャットボットの活用は長期的なコスト削減と行政サービスの品質向上につながる可能性がある
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
新しいコミュニケーション手法として、自治体におけるChatGPTの活用・導入が注目を集めています。
幅広い地域でその動きが進む一方で、中にはChatGPTの利用を見送った自治体もあります。
本記事では、自治体でのChatGPT導入事例を紹介していきます。文書作成の支援や市民との対話等、多彩な改革事例を通じて、自治体サービスの質的向上及び効率化をいかに実現しているかについて掘り下げていきます。
職員の業務負担軽減や市民の利便性向上を目指す自治体担当者はもちろん、先進的な活用事例に関心のあるすべての方にとって、参考となる内容をお届けします。
最新モデル、OpenAI o1(o1-preview)について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください⬇️
OpenAI o1(ChatGPT o1)とは?その特徴や使い方、料金体系を徹底解説!
ChatGPTの自治体における活用事例とは
自治体でのChatGPTの導入は、市民サービスの効率化や質の向上を目指す動きの一環として、国内外で急速に広がりを見せています。
例えば、市民からの問い合わせへの対応、観光案内、行政手続きの案内、イベント情報の提供など、幅広い分野で活用されています。
ChatGPTを活用することで、24時間365日の対応が可能となり、市民の利便性が大幅に向上します。また、多言語対応により、外国人市民や観光客へのサービス提供も容易になります。
ChatGPTの導入・活用を決めた自治体の事例
実際にChatGPTを導入した自治体の事例を詳しく見ていきましょう。各導入事例の詳細も別途記載していますので、気になる事例はリンク押下することで該当箇所にページが遷移します。
- 神奈川県横須賀市
市民のコミュニケーションツールとしてChatGPTを導入し、住民からの日常的な問い合わせに応じ、その効率性と利便性を高めています。
- 茨城県庁
ChatGPTを利用したAIチャットボットの導入からAIマッチングサービス、ChatGPTを搭載したVTuber「茨ひより」等幅広く生成AIの実証を手掛けています。
- 埼玉県戸田市
ChatGPTを利用して市役所サイト上での市民サポートを行っており、特に多言語によるサポートを強化しています。
- 静岡県島田市
市の公式ウェブサイトにChatGPTを導入し、市政やイベント、観光情報などの問い合わせへの対応機能を強化しています。
- 福井県越前市
ChatGPTを使った住民向けのアンケートや質問応答システムを導入しており、市民の声を収集しやすくする工夫を施しています。
- 京都府京都市
子育て施策に関する制度や手続きに関するお問い合わせに対して、24時間365日対話形式で自動回答するAIチャットボットを導入しています。
- 三重県伊賀市
伊賀市が蓄積する議事録などのデータや行政手続きのマニュアルを学習させることで、職員の指示に従ってChatGPTが新しい文書の作成を行うなど、業務の効率化を目的とした活用がなされています。
- 兵庫県神戸市
高齢者に向けた健康や福祉に関する情報提供サービスにChatGPTを活用しています。
- 宮城県都城市
全国初民間会社と連携してChatGPTの自治体向けサービスを共同開発しています。またAIチャットbotの導入や小中学生向けAIドリル等積極的にDX化を推進している自治体です。
1.神奈川県横須賀市
神奈川県横須賀市 (参考:横須賀市)
【導入の背景】
横須賀市では、「スマートシティ推進方針」・「横須賀市デジタル・ガバメント推進方針」に基づいて積極的にテクノロジーを活用し、様々な業務の効率的、効果的な実施を図っています。
職員は、人にしかできない、人だからこそできる仕事に注力することで、市民の幸福を実現する取り組みを、進めるのが狙いです。
【元々の課題】
- データの分析
全国と県のデータを集計し新しい切り口で分析したいが、データ数が多いため取込みを手動でやるには、かなり時間がかかる。
また、自動で集計するにしてもExcelのスキルが高くなければ、自力ではこの作業に取り組むことができない状況。
- 事務作業が不得意な職員への対応
外部の事業者とのやり取りや課内共有文書の作成で、文章の構成や表現方法に悩むことがあった。
また、読みにくいものや内容に不備が生じる可能性もあり、箇条書きのメモを文章にまとめる作業にも時間がかかっていた。
- 業務負担の多い業務への対応
高校生にもわかりやすくアンケートの概要を説明する文章を一から考えるには時間がかかり、誤字脱字などのミスもあるので、職員の業務負担は大きかった。
さらに、文章の構成に不備があり、読みにくいものや、伝えたいことが読み手に伝わりにくいものも存在していた。
【解決策】
すべての職員が、ChatGPTを全庁で活用する目標を策定。文章作成・文章の要約・誤字脱字のチェック・アイデア創出などに活用。
日本初のChatGPT導入の自治体として得た知見を生かし今後全国の行政のイノベーションを目指す。
神奈川県横須賀市 (参考:横須賀市 経営企画部デジタル・ガバメント推進室)
【効果】
- 約半数の職員が実際に活用した
- 最終アンケート回答者のうち、約8割の職員が「仕事の効率が上がる」「利用を継続したい」と回答
- 利用者ヒアリングの結果、業務短縮効果が認められた
- 文書作成事務における業務時間短縮の想定(概算)
1,913人×29.3%×10分×243日 ≒22,700時間/年
2.茨城県庁
【導入の背景】
茨城県では、多様化する行政課題や県民ニーズに対応するため、デジタル技術を活用した新たな行政サービスの創出や業務改革の推進を図る「DX推進プロジェクト」に取り組んでおり、今
年度のテーマの一つとして「生成AIを活用した業務改革」の実現に向けた実証実験を行うこととしている。
そうした中で、都道府県のデジタル度を示すDCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)で第3位(2022年)に位置するなど、第三者機関にもその取り組みが認められている。
【元々の課題】
- 50歳時の茨城県内の未婚率(20年)は、男性が28.85%、女性が14.65%と未婚化と晩婚化が目立つ。
- 都道府県の魅力度ランキングで6年連続最下位であり茨城県に関するテーマの番組や記事と接触する機会を増やす必要性。しかしテレビや雑誌等での露出を増やすのは難しい。
- 問い合わせ業務には問合せが集中する時期の職員の負担が大きく、軽減する必要がある。また他の業務を行う時間を確保するニーズがあった。
【解決策】
-
県運営のAI結婚支援を導入
参考:いばらき出会いサポートセンター であイバ) -
県の魅力を国内外に発信するために、国内で初めて自治体公認Vtuber「茨ひより」を起用。AI音声対話アバター「AI Avatar AOI」のシステムを連携して「茨ひより」に搭載。自治体公認VTuberのAI化は国内で初めての取り組み。
*参考:PR TIMES -
県民サービスの向上と茨城県の発展のために真に必要な業務に職員が注力できる環境を整備する一環として、県民からのお問い合わせに対してAIが自動で応答するシステム(チャットボット)14種の業務に導入。
参考:茨城県公式HP
【効果】
- 交際を開始した会員のカップルの組数が1000組を突破し、2020年度から3倍以上に
- 自治体初というVTubernの取り組みにより多くの報道をされ、英国のBBCでも紹介された
- 問い合わせに対して24時間365日、迅速に回答できるサービスを提供
- 問合せが集中する時期の職員の負担を軽減し、他の業務を行う時間を確保
3.埼玉県戸田市
埼玉県戸田市のChatGPT導入事例
【導入の背景】
ChatGPTを活用し、自治体の業務において自動化・効率化が可能な領域を洗い出し、その改善策を提案するとともに、リスク・危険性を把握し、安全に利用する方法を検証することで、自治体における業務改革の促進に寄与する。
参考:戸田市におけるAIの取り組み
【元々の課題】
- 市役所窓⼝での⼿続きは、市⺠と対応する職員の双⽅が⽤件を共通理解するまでに時間がかかり、対応に多くの労⼒を必要とする。
- 「⼿続する窓⼝がわからない」「⽤件が伝わらない」「⼿続にかかる時間がわからない」といった窓⼝における課題
【解決策】
パソコン・スマートフォン等からのテキスト入力による対話を通じ、子育て、引越し・住所変更の手続き、ごみの出し方、住民票や戸籍、各種書類の請求などのお問い合わせに対して、AIが会話形式で質問に応答し、回答結果は最終的に市公式ホームページに誘導することで、必要な行政サービスの内容や手続きを案内するAI総合案内サービスを導入。
⼿続きに訪れた市⺠と続きを⾏う窓⼝職員をつなぎ、市役所に訪れた市⺠と⼿続きに対応する職員双⽅の対応する時間を短縮することで、快適な窓⼝対応を実現する。
参考:
AIを活用したクラウド型スマート窓口の共同システム開発事業に採択。AIチャットボットを活用しスマートフォン等から行政手続きを簡単に行える申請書作成支援システムを構築する。併せて、そのデータを庁内の情報システムと連携するデータベースに登録し、職員に代わってAIが申請情報の審査を行うことで、審査等の業務を効率化するAI申請審査支援システムの開発を行う。
埼玉県戸田市 生成AIを活用した市民向け応答サービスの実証イメージ (参考:総務省 令和2年度予算「自治体AI共同開発推進事業」に係る実証グループの公表)
固定資産税事務において、2時期の航空写真等のインプットデータから、家屋の経年変化をAIが自動で識別することで、課税客体把握事務の業務効率化を目指す。戸田市ではこの固定資産税における航空写真AI解析を業務に活用。
【効果】
- 待ち時間の削減
- 予約時間の確保
- ⼈的リソースの最適化
また更なる課題として以下の点も挙げられました。
- 予約の制約
- ⾮予約利⽤者への不公平感
参考:令和5年度戸田市 ChatGPTに関する調査研究事業自治体におけるChatGPT等の生成AI活用ガイド(事例・資料編)
4.静岡県島田市
静岡県島田市 ChatGPT 導入例1
【導入の背景】
ChatGPTのメリット・デメリットを踏まえ、業務の効率化や導入運用に係る問題等、庁内利用に向けての様々な可能性を追求するため、DX推進課において検証を開始。
参考:令和5年4月27日 市長戦略部 DX推進課 島田市DX推進計画の促進について
【元々の課題】
- 業務効率化を目指したもの
- 担当課が作成した市長挨拶文の要約や修正
- Excel の関数作成の支援
- 業務の段取りのアドバイス
- 専門性を高めた活用
- 多言語翻訳の支援
- 専門用語の定義や説明、専門分野の情報の要約や解説、質問等への活用
【解決策】
参考:[静岡県 島田市DX推進計画(案)令和4年2月令和6年●月改訂))
国が求めるセキュリティ基準を満たし、職員専用総合行政ネットワーク上で動作するシステムを全庁への本格導入に向けて2023年8月下旬に実証実験を行った。
【効果】
- 約4割の職員がある程度利用している。
- 8割以上の職員が、仕事の効率が向上すると感じている。
- 6割以上の職員が、今後も生成AIを業務で活用したいと思っている
- 2023年12月より全庁でシステム本格導入
実証実験により得られた課題は主に利用の仕方、質問力でした。以下がその結果です。
- 利用に不向きな情報の検索、調査に約4割が使われている。
- 利用用途の約3割は、文章の案の作成、要約、校正が占めている。
- 対面及びオンライン研修等により職員の質問力向上を図っていく必要がある。
参考:
5.福井県越前市
【導入の背景】
越前市は、県内の自治体では初めて、ChatGPTを業務で利用できないか検討することを決め検証作業を始めました。
前例に捉われず、デジタル技術の活用や不要ルールの排除、臨機応変な政策形成などにより、効率的で速やかに行政課題に取り組める組織へと変化させ、市民サービスの向上及び職員の意欲の向上を図る「市政新デザイン」を方針に掲げています。
参考:会議録要旨等 令和5年度第1回 越前市行財政構造改革推進委員会日時:令和5年6月30日(金)
【元々の課題】
- 人口減少・高齢化社会の到来や住民ニーズの多様化・複雑化などに伴い、より高度な行政運営が求められるようになってきている
- 従来型の市役所の組織風土や行政プロセス、「削減」を中心とした行財政改革ではこういった変化への対応が難しくなり、それが職員の疲弊や市民サービスの低下をもたらしつつある
参考:令和6年 チャレンジ・越前市行財政システム改革プラン2024
【解決策】
福井県越前市のChatGPT導入例2 出典:福井県越前市 令和6年度 当初予算(案)の概要)
- 庁内職員利用
- 市が定める各種計画や例規、会議録、国・県の情報に基づいて質問に回答するシステムの運用を近く始め、施策立案などの際の資料作成に役立てる。作成時間の短縮に加え、全庁的な情報把握によって部署を横断した視点を企画に取り入れられる効果を見込む。
- 市が定める各種計画や例規、会議録、国・県の情報に基づいて質問に回答するシステムの運用を近く始め、施策立案などの際の資料作成に役立てる。作成時間の短縮に加え、全庁的な情報把握によって部署を横断した視点を企画に取り入れられる効果を見込む。
- 住民向けサービス
- 転出入や出産に伴う行政手続き・住宅関連の補助制度・ごみ分別・観光など暮らし全般に関する質問への回答に活用。試験運用は庁内限定で実施し、各職員が所管業務で想定される質問を入力して実用性を確認。
参考:越前市が「ChatGPT」で住民の質問に回答 転出・転入手続きやゴミ分別、住宅補助…導入向け試験
【効果】
- 庁内業務での活用では、職員1人当たり年間60時間の削減効果があると試算
- 務の質に関しては、職員の77%が「向上する」と回答
- 業務の効率化や高度化につながるとし、早ければ2024年内の本格導入を目指す
一方で、以下の指摘もあります。
行政手続きや暮らし全般に関する質問への回答を想定した住民向けサービスは、庁内で検証した結果、正確な回答の割合が58%にとどまった。市デジタル政策課は、市民が安心して利用できる水準ではないため「今後の技術革新を注視していく」としている。
出典:福井新聞デジタルより
参考:業務にChatGPT試験導入した結果…職員が挙げたメリットは 越前市が検証結果まとめ 2023年10月12日
6.京都府京都市
京都府京都市 ChatGPT導入例
【導入の背景】
デジタルツールの活用や、京都市の子育て環境のPR、充実した子育て支援施策を体系的に発信することを目的
【元々の課題】
他課にまたがる様々な子育て支援情報をアプリ・サイトに集約するサイトでの「問い合わせ」業務も行う必要があった。
【解決策】
子育て施策に関する制度や手続きに関するお問い合わせに対して、24時間365日対話形式で自動回答するAIチャットボットを導入
京都市 子育てに関するAIチャットボット
【効果】
AIチャットボットサービスは2024年1月に開始したばかりだが、子育て情報をまとめて得られるツールとしてさらに魅力的なアップデートを展開。子育て真っ最中の人々に、的確に情報を伝え、活用してもらうことを目的としている。
7.三重県伊賀市
【導入の背景】
少子高齢化や人口減少社会が進展し、労働生産力の減少・経済規模の縮小・社会保障費の増大等といった社会課題の深刻化。
一方で行政サービスを提供する職員数は減少する人口規模に合わせて減少させていく必要がある。
同時に、行政は多様化する市民ニーズに対応しつつ持続可能な行政サービスの提供が求められており行政事務についてデジタルを含めたあらゆる手段で効率化させる必要がある。
参考:伊賀市と株式会社FIXERとのChatGPTを活用したAI行政サービス実証事業に関する連携協定について
【元々の課題】
- 行政区域内人口は、合併後の平成17年度(100,623人)より減少傾向を示しており、少子高齢化による人口減少が進行している。
- 複数の分野にまたがる相談や、狭間のニーズに対応し、ひとりひとりの状況に応じたオーダーメイドの支援や、寄り添いながら伴走していく支援をするためにも業務効率の改善と人的リソースの最適化が求められる。
三重県伊賀市 新たな庁内連携:重曹的な支援体制
参考:
【解決策】
株式会社FIXERのAzureクラウド基盤の導入など、クラウド上でのシステム構築や運用、障害発生時の対応などを一括で担うサービス「クラウド・コンフィグ」と連携し住民サービスの向上と職員の負担軽減を目的として「ChatGPT」を活用したAI行政サービスについての実証実験を実施。
伊賀市と株式会社FIXERとのChatGPTを活用した AI行政サービス実証実験内容 (参考:伊賀市と株式会社FIXERとのChatGPTを活用した AI行政サービス実証事業に関する連携協定について)
【効果】
令和6年3月31日まで実証中。実装された場合の予想効果として以下が期待されている。
住民サービスの向上として
- 24時間365日即時対応可能となる問い合わせ対応
- 音声による問い合わせに対応することでのデジタルデバイド対策
- 多言語に対応することによる多文化共生社会の推進
職員の負担軽減として
- 電話、窓口、市HPからの問い合わせに関する職員対応時間の短縮
- 議事録作成及び要約に関する業務時間の短縮
- 庁内問合せに関する職員対応時間の短縮(マニュアル等の集約による、庁内事務手続きに関する問い合わせ対応の自動・即時化)
- 行政文書等の作成支援による業務時間の短縮
8.兵庫県神戸市
【導入の背景】
兵庫県神戸市 ChatGPT導入の意義
- 神戸市の構築した利用環境が安全かつ適切に利用できるかの検証
- 本格利用に向けた検証用ガイドラインのブラッシュアップ
- 業務利用する際の活用方法のアイデア収集や有効活用のためのナレッジの蓄積
- 業務利用する際の課題や問題点等の収集
- 本格利用する際の利用コストと業務改善効果の検証
【元々の課題】
兵庫県神戸市 ChatGPT活用事例課題
- 毎日のプレスリリース資料から投稿する内容を選び、X(Twitter)の上限文字数である140字以内にわかりやすく要約して投稿文を作成するのに時間がかかる
- アンケート作成において設問設定までにかかる時間(目的要件整理、設問設定)を短縮する必要がある
- 安全性を確保した上で利用していることを市民に知ってもらい職員も安心して使用できる環境を構築する必要がある
- ChatGPTの利用に関して法整備を待たずして迅速な条例制定を自ら策定する必要がある
【解決策】
兵庫県神戸市 ChatGPT活用事例
- 神戸市が独自開発した環境下で試行利用を実施。
- 「神戸市情報通信技術を活用した行政の推進等に関する条例」が規定する、『安全性が確認されたものとして市長が別に定める』ものとして、Microsoft社の「Azure OpenAI Service」を指定。
- 神戸市職員のチャットツールであるMicrosoft TeamsとAzure OpenAI Serviceを接続するツールを職員が内製することで独自利用環境を実現。
【効果】
実証実験の結果を踏まえ2024年2月1日(木曜日)より生成AIの神戸市全職員に向けた本格利用を開始しています。
- 中間アンケート時点においても9割の試行利用者が「仕事効率が向上する」と回答。
- 最終アンケートではほぼ全ての人が「仕事効率が向上する」と回答した。意見交換会やGPT-4の導入も前向きな評価を後押しした。
- 試行利用期間中において、全職員がトラブルなく利用することができた。
- 試行利用にあたって利用ガイドラインの策定や説明会の開催を通じて、適切な利用がなされていた。
- 「ペルソナ設定によるカスタマージャーニーマップ作成」などの新たな活用方法も収集することができた。
また、このような知見が得られました。
- 庁内での利活用を促進するため、職員向けに「プロンプト事例集」を提供する。
- ChatGPTに対する理解や関心がない、また自身の業務に適用できると思っていない職員に対して利活用を促すため
参考:
9.宮城県都城市
【導入の背景(続き)】
- 市民サービスにおけるデジタル化を都城デジタル化推進宣言の中で、最も重点的に取り組むべき分野であると策定。
- デジタルの活用により、一人ひとりがニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せを実現できる社会を構築する必要がある。
【元々の課題】
- 情報の活用主体、目的及び内容の透明性を確保し、個人情報及びプライバシーの保護を図ることで、安全で安心な社会環境を整備する必要がある
- デジタル技術の活用においては、運用上及び財政上の持続可能性を確保しなければいけない
- データ連携基盤の構築及び運用に当たっては、分野や地域を越えたデータの交換や利活用を可能とし、開かれたデータの流通環境を確保する必要がある
【解決策】
都城市DX推進計画 計画の方向性 (参考:都城市DXチャレンジプロジェクト実施要領)
- 自治体が安全な環境で、ChatGPTを活用できるプラットフォームをシフトプラス株式会社と共同開発するとともに、個人情報や機微な行政情報を扱わないことを前提に、行政分野における活用の可能性について、調査研究を行う。
- 全国初のケースとして民間の会社と共同開発を実施。
- AIチャットボットの導入
市民等から問合せの多い市政情報について、時間や場所を問わずに会話形式で簡単にアクセスできるようにし、市民サービスの向上を図る。
- 小中学校学習支援AIドリル導入事業
AIドリルを導入し、学力向上を図る。
- 自治体のAI・RPAの利用促進
PC上で行う業務のうち、同様の行程が多い業務の自動化を図る。更に、手書きや印刷された文字をAIが分析し読み取る技術を活用したりするなど、事務作業の省力化を図る。
参考:都城市 DX 推進計画 ~誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を目指して~(実施計画)令和5年度改定版
【効果】
宮城県都城市が共同開発:ChatGPTを自治体で活用できるプラットフォームChatGPT for LGWAN
- ChatGPTを自治体で活用できるプラットフォーム「ChatGPT for LGWAN」をリリース
- 実証実験を開催中の独自の情報を元に回答を生成可能な、オプション機能「独自AI」も令和6年度正式リリース予定
- 他自治体における無償トライアルもスタート
上記で紹介した事例以外にも、ビジネスはもちろん、医療、金融、クリエイティブ産業など、様々な分野でChatGPTの活用が広がっています。
詳しくは以下の記事で50の活用事例を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
➡️ChatGPTの活用事例50選!企業や自治体、教育現場での例を徹底解説!
ChatGPTの導入・活用を見送った自治体の事例
全ての自治体がChatGPTの導入を決めたわけではありません。導入を見送った理由としては、予算の制限・技術的なハードル・プライバシーやセキュリティに関する懸念などの理由が考えられます。
例えば、小規模な自治体では、ChatGPTを導入・運用するための予算や人的リソースが不足している場合があります。また、データ保護の観点から、市民の個人データを管理する手段としてChatGPTを信頼するには至っていない場合もあります。
導入に慎重な自治体は、ChatGPTを始めとしたAI技術への理解を深め、市民へのサービス提供の質を落とさずにプライバシーを保護する方法を見つけるまで、従来のアプローチを続けることを選択しています。また、将来的に導入を検討するために状況を見守っている自治体もあります。
鳥取県県庁
鳥取県庁では、鳥取県庁の知事が「ChatGPTを活用するより地道に動いた方が民主的である」という独自の持論を展開。これにより、県庁業務における職員用のパソコンでの制限をはじめ職員のChatGPT利用を禁止する旨が発表されています。
- 鳥取県平井伸治知事 定例会見チャットGPTについて 日本海新聞
参考:朝日新聞デジタル 鳥取県、業務ではChatGPT禁止 知事「ちゃんとジーミーチー」
自治体でChatGPTを活用するメリット
自治体業務におけるChatGPTの活用は、市民サービスの向上と業務効率化を同時に実現する有力な手段です。
ここでは、自治体がChatGPTを導入・活用することで得られる主要なメリットを解説します。
市民エンゲージメントの向上
- ChatGPTを活用することで市民とのコミュニケーションが活性化し、求められる情報をタイムリーに提供できる。
- 市民の満足度向上が期待される。
業務効率化 - ChatGPTが市民からのよくある質問に即座に回答できるため、行政職員の負担軽減に繋がり、専門的な業務への集中が可能になる。
市民のアクセス容易性の向上 - ChatGPTの24/7サービスにより、市民はいつでもどこからでも疑問点を解決できる。
- 時間外や週末などの非業務時間におけるサポートが向上する。
多言語サポートの強化 - ChatGPTを活用することで多様な言語での対話が可能になり、非日本語話者への対応範囲が拡大する。
- 地域の国際化への貢献が期待される。
ChatGPTは、自治体のDXを加速させる有力なツールとして注目されています。
ただし、メリットを最大限に引き出すためには、適切な導入計画と運用体制の構築が重要です。自治体の業務特性を理解した上で、ChatGPTの機能を最適化し、継続的な改善を図ることが求められます。
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自治体でChatGPTを導入・活用するデメリット
自治体がChatGPTを導入する際には、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。技術的な課題やプライバシー保護、初期投資コストなどが主な懸念事項です。
ここでは、自治体がChatGPTを活用する上で直面する可能性のあるデメリットについて詳しく解説します。
技術的な課題
- ChatGPTやその他のAIチャットボットの導入には高度な技術が必要であり、継続的なメンテナンスやアップデートが必要。
- 技術の内製化が難しく、外部ベンダーへの依存度が高まる可能性がある。
プライバシー保護とセキュリティ - 市民の感度の高い情報を処理するため、厳格なプライバシー保護とセキュリティ措置が必要。
- 導入と運用の両面でプライバシーとデータの安全性を考慮する必要がある。
機械的な応答 - チャットボットは即答性に優れるが、複雑な感情やニュアンスを理解することが困難。
- 高度な人間的判断や共感を必要とする状況では、市民の満足度が低下する可能性がある。
初期投資コスト - 導入初期にはシステムの設計や開発にかなりの投資が必要。
- 特に小規模な自治体では予算の制約がデメリットになる可能性がある。
自治体がChatGPTを導入する際には、これらのデメリットを十分に認識し、適切な対策を講じることが求められます。メリットとデメリットを比較検討し、自治体の実情に合わせた最適な活用方法を模索することが重要です。
【自治体向け】市民サービス向上に役立つAIチャットボットの活用法
自治体が目指すべき一つの目標は、市民のQOLの向上です。通常のビジネスであれば、サービス接点におけるコンバージョン率(CVR)の向上といっても良いかもしれません。
AIチャットボット、特にChatGPTは、市民が求める情報やサービスへの案内を効率良く行うことで、業務効率の向上だけでなく市民が自治体を利用する際の利便性向上にも寄与する可能性があります。
CVRの説明
CVR(コンバージョン)率の説明
例えば、あるオンラインフォームへのアクセス数が1000回で、そのうち100回が実際にフォームの送信に至った場合、コンバージョン率は10%となります。
コンバージョン率は、高い方が良いという考え方もありますが、実際に使っている市民、利用者の声を聞いて満足感の向上に努めることをお勧めします。
ChatGPTを活用することで、問い合わせ対応の自動化や簡素化を実現し、市民のニーズを満たす事ができます。
また、対話式のチャットボットは、市民が自ら電話をかけたり、実際に足を出向くことに比べるとより手軽であるというメリットがあります。
AIチャットボットの導入は長期的な視点で見ればコスト削減に寄与し、行政サービスの品質向上という効果をもたらします。
【関連記事】
➡️チャットボットの評価指標や効果測定の手順をわかりやすく解説!
まとめ
自治体でのChatGPT導入は、市民サービスの向上と業務効率化を促進する上で重要なステップです。この記事では、ChatGPTの基本概念、導入されている自治体の具体的な事例、自治体における導入メリットとデメリットなどを詳しく解説しました。また、AIチャットボットがCVR向上や改善にどのように寄与するか、そしてFirstContactが提供するチャットボットサービスや課題解決型AIチャットボットについて紹介しました。
導入事例から学ぶことは多く、自治体ごとのニーズに応じたカスタマイズやサポート体制が整っていることが分かります。FirstContactのような信頼できるパートナーと連携することで、自治体は市民との良好な関係を構築し、高品質なサービスを提供することが可能です。
ChatGPTの活用は今後も注目され、自治体におけるデジタルトランスフォーメーションを推進する一助となることでしょう。継続的な技術の進化と共に、市民のみならず行政職員の働き方にも革新をもたらす期待が集まっています。