この記事のポイント
Agent2Agent(A2A)は、異なるAIエージェント間の連携・協力を可能にする共通プロトコル
Google主導で開発が進み、エージェントの「孤立」問題を解決する目的
異種エージェント連携、エンタープライズ統合、セキュリティ、マルチモーダル対応が特徴
ツール連携のMCPとは役割が異なり、A2AとMCPは併用される補完関係
今後、AIエージェント同士が自律的に協調し、複雑なタスクを実行する基盤となる

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
AIエージェントが業務を自動化してくれるのは便利だけど、結局エージェントごとに指示を出さないといけない…複数のエージェントを連携させるのは難しい…と感じていませんか?
各社が開発するAIエージェントは便利ですが、それぞれが独立して動いているため、「チーム」として協力することができず、その真価を発揮しきれていませんでした。
その問題を解決するために登場したのが、Googleが主導するオープン標準「Agent2Agent(A2A)」プロトコルです。
本記事では、この「Agent2Agent」について、基礎から応用までをわかりやすく解説します。
A2Aが必要とされる背景、その仕組みとメリット、関連技術であるMCPとの違い、そして今後の可能性まで、幅広く網羅的に説明します。
目次
Agent2Agent(A2A)とは?
Agent2Agentイメージ
Googleが新たに報告した Agent2Agent(A2A) は、異なる開発元や技術基盤で構築されたAIエージェント同士が、安全かつ効率的に連携できるようにするための共通プロトコル(標準ルール) です。
複数のAIエージェントが「共通言語」で通信し、タスクを協力して実行できる仕組みを提供します。
つまり、A2Aはエージェント同士の“会話のルール”です。
Google、Salesforce、SAP、ServiceNow、LangChainなど50以上の企業が開発に参加しており、エンタープライズ用途でも実用可能な標準として注目されています。
なぜAgent2Agent(A2A)が必要なのか?
AIエージェントはますます高機能化していますが、企業がそれぞれ異なるフレームワークやクラウドサービス上でエージェントを構築するため、“エージェント同士が協力しづらい”という根本的な課題が存在します。
この問題を放置すれば、複数のAIが同時に存在しても、それぞれが孤立して機能するだけで、複雑な業務の自動化や組織横断的な価値創出は実現しにくくなります。
A2Aはこの壁を取り払い、異なるAI同士が安全に連携し合い、タスクを共同でこなせるようにする「共通言語」として機能します。
A2Aの主な特徴とメリット
以下は、A2Aが提供する主要な機能と利点の一覧です。
特徴 | 説明 |
---|---|
異種エージェントの連携 | フレームワークやベンダーが異なっても通信可能 |
エンタープライズ統合性 | 既存の業務アプリやSaaSと簡単に統合可能 |
セキュリティ内蔵 | 認証・認可機能(OAuth、OpenAPIなど)に対応 |
マルチモーダル対応 | テキスト・音声・画像など多様な形式でやりとり可能 |
長期タスクへの対応 | 数日単位のタスクでもステータスを維持・共有可能 |
これらにより、より協調して動作するAIエージェントのエコシステムが実現します。
設計原則:A2Aの中核にある5つの思想
A2Aは、以下の5つの設計原則に基づいており、A2Aの使いやすさ・安全性・柔軟性を支える土台になっています。
- エージェント同士の自律的な協力を前提とした設計
- HTTPやJSON-RPCなど既存のWeb標準技術を活用
- セキュアな通信(OAuth2、スコープベースのアクセス制御)
- 長時間処理・非同期ワークフローにも柔軟に対応
- マルチモーダル(音声・画像・テキスト)対応で人間の使いやすさを重視
Agent2Agent(A2A)のプロトコルの仕組み
A2Aプロトコルは、AIエージェント同士が連携して、タスクの依頼・応答を自動化するための通信ルールです。
人間が間に入らず、AIが他のAIに「これお願い」と指示して、処理してもらい、結果を受け取ることができます。
プロトコルの構成要素は以下の通りです。
構成要素 | 役割・内容 |
---|---|
エージェントカード | .well-known/agent.json にある「このAIは何ができるか」の自己紹介ファイル。スキルや連絡先が書かれている。 |
A2Aサーバー | タスクを受け取って処理する側のAIエージェント。A2Aプロトコルに準拠したHTTPエンドポイントを提供。 |
A2Aクライアント | タスクを依頼する側。アプリや別のAIがなる。 |
タスク | 実際にお願いする「作業内容」。状態が submitted → working → completed などで変化する。 |
メッセージ | タスクの中でクライアントとエージェントがやり取りするデータ単位。 |
パート | メッセージの中の具体的な中身(テキスト、ファイル、構造化データなど)。 |
アーティファクト | AIが生成した成果物(出力ファイルや最終データ)。 |
ストリーミング(SSE) | 長時間タスクの進行状況をリアルタイムで通知。 |
プッシュ通知(Webhook) | タスクの進捗や完了を外部システムへ即時通知。 |
処理の全体フローと実行のイメージ(具体例)
Agent2Agent(A2A)のプロトコルの仕組み
例えば、ユーザーが「このPDFを要約して」とチャットボットに指示したとします。
A2Aはどのように処理するのでしょうか。
処理ステップ | プロトコル上の動き | 実行イメージ(PDF要約) |
---|---|---|
① 検出 | .well-known/agent.json を参照して、使用可能なエージェントの機能やURLを取得 |
クライアントが「要約できるAI」を探す(エージェントカード取得) |
② 開始 | tasks/send または tasks/sendSubscribe を使ってタスクを送信 |
チャットボットがPDFと一緒に要約依頼を送信 |
③ 進行 | - SSE で進行状況を受信 - 他のエージェント(AgentB)にサブタスクを依頼 |
要約中のステータスをリアルタイムで受信 画像PDFならOCR用の別AIにサブ依頼 |
④ 成果物 | アーティファクト(生成されたデータ・ファイル)として返却 | 要約済みテキストが成果物として返ってくる |
⑤ 通知 | tasks/pushNotification/set でWebhook URLに通知を送信 |
Webhook経由で「要約完了」の通知が送られる |
⑥ 終了 | タスク状態が completed , failed , canceled のいずれかで終了 |
処理が終了し、最終ステータスと成果が得られる |
このようにAgent同士がやり取りをしながら処理を進めていくことができます。
GitHubも公開されていますのでぜひ参考にしてみてください。
A2AとMCPの違いとは?|併用が前提の補完関係
Agent2Agent(A2A)とよく比較されるのが、Anthropicなどが推進するMCP(Model Context Protocol) です。両者の違いを整理すると、以下の通りです。
両者は競合ではなく、役割分担で補完し合っています。
比較項目 | A2A(Agent2Agent) | MCP(Model Context Protocol) |
---|---|---|
主な目的 | エージェント間の通信・協力 | ツールやAPIとの接続・活用 |
適用対象 | 人や他エージェントとの会話や調整 | データベース・検索・外部ツール呼び出し |
情報形式 | コンテキスト、会話、進捗など | 構造化I/O(関数呼び出し)中心 |
推進元 | Google中心のオープンコミュニティ | Anthropic、Google ADKなど |
実際のAIアプリケーションでは、「MCP+A2A」の併用が前提となるでしょう。
MCPの詳しい記事は以下をご覧ください。
【関連記事】
➡️Model Context Protocol (MCP) とは?仕組みやRAGとの違いを解説
➡️【Anthoropic】Claude MCPとは?使い方・料金体系を徹底解説!
Agent Spaceとは?A2Aとの連携は?
Agent Spaceイメージ
Google Agentspaceは、企業向けのAIエージェントプラットフォームで、社内のさまざまなデータソースを統合し、効率的な情報検索やタスクの自動化を実現します。
-
基本機能: Google Agentspaceは、組織内でデータを迅速にアクセス・利用できるように設計された検索とAIエージェントのハブです。AIエージェントは、さまざまなアプリケーションにアクセスして情報を提供したり、タスクを実行したりします。
-
主な特徴:
- マルチモーダル検索: Googleの高品質なマルチモーダル検索機能を提供し、テキスト、画像、ビデオなど、複数の情報形式を横断的に検索・処理します。
- 人気アプリとの統合: Confluence、Google Drive、Jira、Microsoft SharePoint、ServiceNowなど、エンタープライズでよく使用されるアプリケーションとシームレスに統合されます。
- 事前構築されたエージェントとカスタムエージェント: ユーザーは、事前に構築された専門的なAIエージェントを活用するか、自分でエージェントを作成して使用できます。これらのエージェントは、データの要約、複雑なクエリの回答、ワークフローの自動化などを支援します。
- セキュリティとプライバシー: エンタープライズ向けのセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを維持しながら、情報を効率的に処理できます。
また、Google Agentspaceは、Gemini、Imagen、VeoなどのAIモデルを活用して、画像、テキスト、ビデオなどの情報形式に対応し、複雑な質問に答えたり、次のステップを提案したりします。
これらの機能により、従業員は必要な情報へ迅速にアクセスし、業務効率化や意思決定の質向上を図ることができます。A2Aで様々なエージェントと連携していきそうですね!
ユースケース
Agent2Agentユースケースイメージ
A2Aが広がることで以下のような活用例が期待できます。
- 採用担当が「勤務地が東京、Pythonが使える人材を探して」とA2Aエージェントに依頼
- エージェントは複数の他エージェント(求人情報、スキル分析、日程調整など)と連携
- 候補者選定から面接調整、内定通知、バックグラウンドチェックまでを一気通貫で実行
このようにA2Aが広がることによって、各エージェントは「自分が何をできるか」をAgent Card(機能カタログ) で公開し、クライアントエージェントがタスクを定義して、最適なリモートエージェントを発見・接続するようになります。
両者はA2Aプロトコルを通じて、進捗・成果物・メッセージを双方向でやりとりするようになり、ユーザーが意識することなく、裏側で複数のAIが連携して動く世界がA2Aで実現していくでしょう。
まとめ
Agent2Agentは、AIエージェントがバラバラに動いていた時代に終止符を打ち、「つながるAI」 を現実にするための仕組みです。
MCPと組み合わせることで、エージェントはツールも使いこなし、他エージェントと協調しながら複雑な業務を自律的にこなすことが可能になります。
GoogleはこのA2AをオープンソースとしてGitHubで公開しており、誰でも参加・貢献できるプロジェクトとして成長中です。
Agent2Agentは、エージェント時代の“共通言語”。
今後のAIアーキテクチャを考えるすべての開発者・企業にとって、理解と活用が不可欠なキーワードになるでしょう。
AI総合研究所は企業のAIエージェント導入を支援しています。
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